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審査に手間取ったのは短編の方だった。最終審査に残った4本はどの作品も一定のレヴェルに達しているという点では誰にも異存がなかった。しかも、それぞれが個性的で比較するのが難しいという意味で、審査は錯綜を極めた。 シンガポールの『カット』(2004、ロイストン・タン監督)をエドゥアルドが強く推してきた。シンガポール国内での映画検閲を皮肉ったパロディ・ミュージカル。28歳の監督タンは2003年作の『15』で40もの賞を獲得し、この『カット』もフランスのクレモント短編映画祭で受賞している。人なつこく闊達な青年で、上映会場では作品に出てくるウサギのぬいぐるみを身につけ、応援団もすごかった。 しかし、私にとってこれはビデオクリップのようなものだった。監督の才能は認めるけれどこれはレクラマ(広告)だと主張した。中国のヤンも私の意見に賛成してくれた。審査委員長もこの作品なら2時間で作れるだろうと言った。 しかし、エドゥアルドは執拗だった。大切なのは「映画のセンス」であると言い、審査の基準についてしゃべり続けた。審査対象となった他の作品、メキシコの『中国からの船』(2004、パトリシア・ジョーダン監督)、ニュージーランドの『クローサー』(2004、ダヴィド・リテイ監督)、日本の『貝ノ耳』(2004、杉田愉監督)については、センチメンタルであるとか、よくあるテーマ設定であるとか、文学であって映画ではないと反論した。 討議は3時間を越えた。最終結論を出さねばならなかった。投票で決めることになった。3対2で『カット』に短編のグランプリが決まった。元数学者の攻めに敗北した私は不満だったが、審査の過程は大変興味深いものだったので、その点では得がたい経験をしたと思っている。 審査の結果は次の通りである。 グランプリ・・・『サンチャゴの日々』 短編最優秀賞・・・『カット』 最優秀監督賞・・・『遠ざけられた接近』(2004、ロシア、スヴェトラーナ・プロスクーリナ監督) 最優秀男優賞・・・『マウンテン・パトロール』男優陣 最優秀女優賞・・・『遠ざけられた接近』ダナ・アギーショヴァ、エレーナ・ルファーノヴァ 特別審査委員賞・・・『マウンテン・パトロール』 映画祭特別賞・・・『ヴィタール』(2004、日本、塚本しん也監督) |
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