新鮮でたくましい映像美の中に、あふれい
ずるような叙情、戦争というきびしい現実の
中にとらえられた帰休兵と銃後の人たちの間
に交わされる美しい善意と人情の香りが、限
りない感動に彩られる。一九六〇年度カンヌ
映画祭特別賞受賞作品。ヒーロー・アリョ
ーシャは、まだ童顔の去り止らぬ純情な少年
兵であり、故郷へと急ぐ大切な帰休日、その
貴重な時間の流れを、善意という心で見知ら
ぬ人たちに与え分けていく姿が、素朴な描写
力の中で浮き彫りにされていく。彼の目的は
故郷の母に逢うためである。だが、混乱の国
土にさまよう人間たちの心のふれ合いは、こ
の若いヒーローの胸底を揺すぶり、明日知れ
ぬ青春の終りを予感してか、一秒一秒の突然
の出来事にも、耳をかし、手をさしのべる、
清純な青春のきらめき、アリョーシャの全身
には、間違いもないその輝きがあった。
−−あまりにも有名な、ソビエ、映画の代表
的名作の一つ。ソフトな黒白の画調の見事な
効果、押さえ切れぬ感動の涙に濡らされるグ
リゴリー・チュフライ監督の傑作である。脚
本はワレンチン・エジョフとグリゴリー・チ
ュフライの共同、撮影ウラジーミル・ニコラ
ーエフとエ・サヴェリェワの共同、音楽はミ
ハイル・ジフが担当。
 果てしもなくつづく麦畑と、それをめぐる
ような細い道、母が一人、そこにたたずむ。
母は戦場に行った息子の帰りを、そこで待ち
わびるのが日課の一つになっていた。息子の
アリョーシャは、猛火の戦場で、2台の敵戦
車を炎上させて、その勲功として6日間の休
暇を貰った。6日間の帰休、だが故郷への道
は遠い、行って2日、帰って2日、母の許に
いられるのは2日間だけである。そして、こ
の若いアリョーシャは、他人の不倖せを見逃
せぬやさしい性格を持っていた。心は故郷の
母に走りながらも、片足のない傷病兵が、雑
踏の駅で、迎えるべき妻の姿を探すさまを見
ると、貴重な時間を、そのためにさかなくて
はならなかった。やがて、傷病兵の妻は来た。
涙の抱擁を後にして、アリョーシャは立ち去
る。彼は、軍用貨物列車に乗りこんだ。その
貨車の中の枯草の隅に、若い娘が身体を沈め
ていた。二人はいっか心をとけ合わせた。列
車の中から見る、ちぎれ雲、白かばの林、雨
の色−−戦火がもし、遠いところのものであ
ったなら、二人の心は、胸は、もっと幸福で
あったろう。お互いに、行きずりの心以上の
ものを感じなから、別れていかねばならぬ二
人だった。アリョーシャは、まだ果さなけれ
ばならない約束があった。戦友から頼まれた
ものを、その家族へ届ける約束が………。や
っとの思いで母の許へたどりついた時、アリ
ョーシャの休暇は、帰りの時間を残すだけと
なっていた。母は息子を、息子は母を、その
手でしっかりと抱きしめる。言葉は涙にかわ
ってしまう、もう隊へ帰らなけれは……アリ
ョーシャは心残す思いで走り出す。
 そして彼は、戦争が終っても、遂にこの道
へは戻ってこなかった。
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