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戦争、殺しあいがどんなに残酷で、悲惨なものかを全編で教えている。同時にこの映画の特徴が、人民全体が祖国防衛のために、老いも若きも、男も女も、体を犠牲にして守り抜いた姿が、大変よく描かれている。
今日の日本では(外国でも同じであるが)この辛い残酪な戦争体験をしない若者がだんだんふえてきた。そして、この若者たちが、将来の日本、世界を作り、動かしてゆく。この映画は如何にして戦争を避け、平和を守り抜くことが大切かを、何ものより強く教えている。そのためには現象の背後にある流れを見抜く力を養わねばならない。
ヒトラーが失業者を、若者を、そしてついには労働者、市民まで動員しえたという事実は、無視することができない。 だからこの映画が、技術的に可能なことかどうかはしらないが、もう一つ深く掘りさげたかった点は、何故、ソビエトが、働くもの全部の人民防衛戦争たりえたかを描いてもらいたかった。
なお、技術論をいえば、音楽効果を、もう少じ工夫してもらいたかった。音楽の国なんだから。
とにかく立派なドキュメント映画であり、感動の一時間四十分であった。
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またもう一つの戦争記録映画!と考えて、この映画を見る人は、おどろき、興奮し、深く考えこむにちがいない。ここには、われわれがはじめて見る、クローズアップでの戦争の姿と顔とがある。ドイツ軍に乱暴に拉致されていく母親にまつわりつく小さい女の子の悪魔的なショットを誰がとったのであろう。ドイツ兵か?ソビエトのゲリラのかくしカメラか?キャパの戦争写真をおもわせるショッキングでしかもヒューメインな画面を通じてわれわれにうったえるものは、反ファシズム、そして二度と戦争はしない、という人間の心の底からの叫ぴである。 |
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第二次大戦中もっとも激烈をきわめた独ソ戦の記録である。イギリス攻略を断念したヒットラーが鋒先を転じソ連に攻めこんで始められた陸戦だがこれは戦略的にも興味ある資料を生み出している。ポーランドやベネルックス、フランスを侵攻した時とおなじく最初の数ヵ月はめざましいスピードだったが次第にテンポが鈍り、ついに長い膠着状態におちいり最後はソ連の反撃を食って後退の余儀なきに至る。主たる原因はソ連軍事力への軽視、 季節変化に対する認識不足、補給線の伸ぴすぎにあったといわれている。戦略の天才をもって自任したヒットラーにしては千慮の一失だが、とにかく無敵を誇ったドイツ軍を破ったソ連の底力は恐るべきものがある。この映画はその強敵の進撃をうけて起ち剣ヶ峰にこらえた末に押し返したソ連の力をみせたものとして得難い記録である。凄壮な戦場の合間に挿入された民衆の姿も戦争の惨害を語っているし、前後につけられた国際環境や運合軍の動きも局面を知るのに役立っている。 |