[かいせつ]
1987年ベオグラード国際映画祭優秀男優賞
その公開が、1985年に始まったゴルバチョフ新体制のもとでの、文化面の改革の象徴的事件となった映画。
原作は、監督の父である作家ユーリー・ゲルマンの小説「"祝新年"作戦」。心ならずもドイツ軍の捕虜となって、これに協力したソビエト軍の元伍長がパルチザンに投降し、何とか再び祖国の兵士として認められたいと死闘する物語だが、映画では、ゲルマン監督独特のドキュメンタリー・タッチで映像化され、その歯切れの良いテンポと優れた名優の競演で、まさに「手に汗にぎる」第一級のサスペンスドラマとなっている。
同時に、 独ソ戦をテーマにした作品ながら、ドイツ軍との激しい戦闘や将兵の勲功よりも、むしろ銃後で苦闘したさまざまな人物像に光をあて、かれらの困難な生活や内面的な悩みを描いて、友情と反目、信頼と裏切りといった人間的で普遍的なテーマを追及している。
画面の細部にまでこだわるその透徹したリアリズムは、長くロシア文学に脈打つ伝統を思わせ、この作品の製作当時、33才の若き監督の大きな才能をうかがわせる作品であるが、主題と内容から15年間にわたって上映が禁止されていた。
主役のウラジーミル・ザマンスキー(タルコフスキー作品「ローラーとバイオリン」の青年労働者役)をはじめ、タルコフスキー映画の名優アナトリー・ソロニーツィン、監督でもあるロラン・ブイコフなど個性的な俳優の演技がひかる。加えて、「僕の村は戦場だった」の主人公イワンを演じたニコライ・ブリャーエフの好演も見逃せない。
音楽は「カラマーゾフの兄弟」「デルス・ウザーラ」「白夜の調べ」など、抒情的なメロディで知られるイサーク・シワルツ。 |
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[あらすじ]
1942年冬。ロコトコフ隊長が率いるパルチザンの小部隊は、ドイツ軍占領下のロシア北西部でナチスの討伐隊に包囲されて、困難な活動を続けていた。そこへ突然、ソビエト軍のもと伍長でラザレフと名乗る男が投降してくる。そして敵側に一度寝返って彼らに協力したのだが、今は後悔していて、自分の罪を償いたいという。裏切者はただちに処罰すべしというべトゥシコフ少佐の教条的な主張を抑えて、ラザレフにも身の証を立てる機会を与えようと、作戦に参加させる決断をしたのは部隊の隊長ロコトコフ大尉である。
ラザレフは、勿論、戦場のならいで裏切者に向けられる厳しい目にさらされながら、最初の任務を無事に遂行したが、その作戦の途上で一人犠牲者が出たため、あろうことか、かえってペトゥシコフ少佐から嫌疑を受け、逮捕されてしまう。絶望したラザレフは自殺を計るが、幸い一命は取りとめる。この時、既にラザレフの心を信じようとしていたロコトコフは生き抜いて汚名をそそぐよう諭して、再び決死の任務を課したのである。 |
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[スタジオ/製作年] レンフィルム・1971年製作 |
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[スタッフ]
原作:ユーリー・ゲルマン「"祝新年"作戦」
脚本:エドゥァルド・ヴォロダルスキー
監督:アレクセイ・ゲルマン
撮影:L・コルガノフ
B・アレクサンドロフスキー
V・ミローノフ
美術:ワレーリー・ユルケーヴィチ
音楽:イサーク・シワルツ |
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[キャスト]
ロコトコフ、パルチザンの隊長:ロラン・ブイコフ
ラザレフ:ウラジーミル・ザマンスキー
ぺトゥシコフ少佐:アナトーリー・ソロニーツイン
インガ:アンダ・ザイツェ
ミーチカ:ゲンナジー・ジュジャエフ
少年:ニコライ・ブルリャーエフ |
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[ジャンル] 長編劇映画
[サイズ] 35mm / シネマスコープ / モノクロ
[上映時間] 1時間37分
[日本公開年・配給] ソビエト映画の全貌'87(1987/4/4) ・日本海
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