●新しい時代を予感させる作品
 「道中の点検」はソビエトがドイツ軍占領下に味わった苦渋の日々に、抗しがたい運命に自らの魂を、そして命を臆することなく晒して、なお自らの真実を全うさせ、生の証を立てようとした人間の姿を描いています。苛酷な現実に翻弄される誠実でひたむきな魂の悲劇もここでは、若い監督のさわやかな感触で映像化されており、そこには愛と憎悪、友情と反目、信頼と裏切りと云った普遍的テーマが極限の人間関係の葛藤を通して、ある時は水墨画のような落ち着きと抒情のなかで、ある時は息づまるサスペンスのなかで展開されています。
 戦後のソビエト映画の代表作「誓いの休暇」「僕の村は戦場だった」などを貫ぬくヒューマンな眼差を継承しつつ、いまや第二次大戦の惨状を歴史の事実としてストレートに受けとめる冷静な視線、そしてドキュメンタリー・タッチでたたみかけていく独得のリズム、さらには一コマ一コマに賭ける映画作りの無我の情熱など、この映画には80年代の新しい流れを予感させるものがあります。
 また、タルコフスキー作品の常連だった故アナトーリー・ソロニーツィン、児童映画の巨匠で悠揚せまらぬロラン・ブイコフ、演技力にかけては抜群の個性派ウラジーミル・ザマンスキー、「僕の村は戦場だった」でデビューしたニコライ・ブルリャーエフらの迫真の演技とイサーク・シュワルツの抒情的音楽も見逃せません。
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