[かいせつ]
1930年代の初め、マクシム・ゴーリキーは1917年の2月革命から10月革命を経て社会主義建設に至る歴史的期間における様々な階級の人々の激動する生活と葛藤、その運命の推移を4つの連作戯曲をもって描こうとした。この映画の原作「エゴール・ブルイチョフとその他の人々」は、この計画されていた連作の最初のものである。商人、工場主、貴族、僧侶、兵士、労働者など、あらゆる階級の人々が登場するこの戯曲は当時ロシアの政治、社会状況の断面図でもある。
ソロビヨフ監督は、この戯曲の映画化にあたり、当時の記録写真やポートレート、戦争のニュース映画などをたくみに挿入することによって2月革命前後の社会的状況を浮かびあがらせつつ、偽善の奥に物の本質を見出せない主人公の心の動きを未後に描き出している。 |
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[あらすじ]
1917年、革命前夜のロシア。
エゴール・ブルイチョフは町の実業家で有力者だが、非凡な気質と強い意志と尽きぬユーモアの世界を持った人間である。ブルイチョフは駅頭で、信仰と皇帝と祖国のために戦い傷ついた数多い兵士を目撃した。家に帰るとブルイチョフは、牧師のパブリンに見るも恐ろしいほどに痛めつけられた民衆のことを告げた。パブリソは何事も神の意志によるものと主張するが、ブルイチョフはロシアの皇帝によって起こされた戦争の不合理性と致命的な結果に気づいていた。
ブルイチョフは町でも屈指の実力者であり、やろうと思えば自分の財産を数倍にすることもできた。だから、戦争という好機にも関わらず、ブルイチョフがあまり仕事に興味を示さないのを見て、彼の大家族は不安にかられた。だからといって、あからさまに彼を非難する者はいなかった。家族の中には悪意にみちた想像が渦巻いていた。
金持ちの家長が勝手な振舞いをし、大衆も金のためにそれがあたりまえと思っている当時の世相に、ブルイチョフは疑問を持っていた。だが、彼をとりまく連中はブルイチョフの悩みを病気のためだと考えた。事実、彼は医師からガンを宣言されていたが、自分の人生は徒らにすぎないことを自覚しており、どれほどの財産もはなばなしい出世も彼には少しの満足感ももたらさなかった。
身内のなかで、古い体制の崩壊を予知し、ブルイチョフの心を理解したのは私生児のシューラだけだった。シューラはブルイチョフが内に秘めている自由を愛する心と反抗の精神を受け継いでいたのである。そしてシューラにあっては全人生が未来にかけられていたが、ブルイチョフはもはや何事もやり直すことができなかった。
やがて、ブルイチョフの病気を聞きつけ、彼の死後の財産の分け前をねらって様々な人々が群がってくる。だが、歴史はこうした人々を飲み込み、革命へと向かってうねって行く……… |
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[スタジオ/製作年] モスフィルム・1971年製作 |
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[スタッフ]
原作:マクシム・ゴーリキー
脚本・監督:セルゲイ・ソロビヨフ
撮影:レオニード・カラーシニコフ
美術:アレクサンドル・ボリーソフ
音楽:イサーク・シワルツ |
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[キャスト]
エゴール・ブルイチョフ:ミハイル・ウリヤーノフ
クセーニャ(ブルイチョフの妻):マイヤ・ブルガーコワ
ワルワーラ:ジナイーダ・スラーヴィナ
シューラ:エカテリーナ・ワシーリエワ
パヴリーン:ヴァチェスラフ・チーホノフ |
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[ジャンル] 長編劇映画
[サイズ] 35mm / スタンダード / カラー
[上映時間] 1時間30分
[日本公開年・配給] 1972/9/16 ・ ATG |