[かいせつ]
1998年カンヌ国際映画祭監督週間部門出品
アレクセイ・バラバノフ監督作品としては、日本初登場となったセピア色の美しい映像の中で綴られたエロティックな異色作。凝りに凝った数々のオブジェ。全編を包むクラシカルな音楽。フェティシズムとアートの融合が生み出す耽美なムードは、溜め息がでるような美しさで迫る。
この作品は、1998年のカンヌ国際映画祭監督週間部門に出品され、大絶賛を受けたが、バラバノフ監督の作品はすでに長編第一作「幸福な日々」(1992年)、第三作「ロシアン・ブラザー」(1997年)も同じくカンヌに出品され、ロシア映画の新鋭として注目されてきた。しかも「ロシアン・ブラザー」は、全ロシアで大ヒットした大衆娯楽映画、かたやこの本作は芸術性を追求した純粋アート系と、その才能の懐の広さには目をみはるものがある。
映画は今世紀初頭、リュミエールのシネマトグラフが初めて上映された頃のサンクトペテルブルクを舞台に描かれる。二つのブルジョワ家庭が、それぞれの持つ密やかな欲望ゆえに崩壊していく姿が、エロティックな絵巻のごとく語られていく。
少女リーザを演じるのは、「動くな、死ね、甦れ!」(1989)「ぼくら、20世紀の子供たち」(1993)などヴィータリー・カネフスキー監督作品の少女役で知られるディナラ・ドルカロワ。この作品では、純粋さと強さを合わせ持つ魅惑的な役柄を好演している。
ヨハンを演じるセルゲイ・マコヴェツキーは、モスクワの舞台で20年以上のキャリアを持つ演技派で、その存在感は、この怪しげな物語にリアリティと独特の緊張感をもたらしている。 |
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[あらすじ] 今世紀初頭のサンクトペテルブルク。スタジオを営むヨハンは、SM写真の製作を専門としている。一方、有能な鉄道技師ラドロフと高名な医師スターソフは、平和な家庭生活をおくっていた。
ラドロフの愛娘、リーザは、窓から汽車を眺めては、西に行くことを夢見ている。しかし、ある日、そこにヨハンが忍びよる。以前からヨハンの写真に興味あったリーザは、父ラドロフの愛人であり、ヨハンの陰の共謀者でもある召使のグルーニャに手引きされ、彼女の純粋な心は次第に汚されていく…。
スターソフは、目の不自由な妻エカテリーナと暮らしていた。彼らの楽しみは、養子に迎えたモンゴルのシャム双生児の天使のような歌声を聴くことだった。しかし、ヨハンの手下であるヴィクトルは、エカテリーナを誘惑して双子を連れ出して、リーザと一緒に住まわせる。
やがて、ヨハンは新しい技術“シネマトグラフ”を使って、女性の鞭打ちの映像を撮ろうとする。彼はリーザに目をつけていた…。 |
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[スタジオ/製作年] CTB・1998年製作 |
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[スタッフ]
監督・脚本:アレクセイ・バラバノフ
製作総指揮:マクシム・ヴォロジン
撮影:セルゲイ・アスタホフ
美術:ヴェーラ・ゼリンスカヤ
編集:マリーナ・リパルチア
衣装:ナージャ・ワシリエワ
メイク:タマーラ・フリド |
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[キャスト]
ヨハン:セルゲイ・マコヴェツキー
リーザ:ディナラ・ドルカロワ
シャム双生児:アリョーシャ・デョ
チンギス・ツィデンダバエフ
その他:リカ・ネヴォリナ
ヴィクトル・スホルコフ
ワジム・プロホロフ |
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[ジャンル] 長編劇映画
[サイズ] 35mm / スタンダード /セピアカラー
[上映時間] 1時間33分
[日本公開年・配給] 2001/2/17・アップリンク
[VIDEO・DVDなど] DVD=アップリンク(2001/06/22) |