[「ロシア映画の全貌」(ソビエト映画の全貌91増補版)「日蝕の日々」より転載]
[かいせつ]
ペレストロイカにより、ソクーロフ監督自身「私はかつて一度もこれほど自由に仕事をしたことがない」と語るほど開放された環境の下で、彼の才能をいかんなく発揮して撮りあげた大作。
SF作家ストルガツキー兄弟の中篇小説『世界終末十億年前』をモチーフにした哲学的ファンタジーだが、結局、主人公たちの名前すら残らないと言っても良いほどに原作を翻案し、独自の世界を構築している。
空中撮影を生かした衝撃的なファースト・シークェンス、モノトーン的な色彩構成など随所に見られる奔放な試みは本国のみならず、この作品が公開されたドイツ、フランスなどでも話題を集めた。
撮影は中央アジアのトゥルクメンで行なわれた。プロの俳優は「道中の点検」のウラジーミル・ザマンスキーくらいで殆どが素人。主役のアナニシノフはコンピューター技師、ヴェチェロフスキー役のウマーロフは外科医である。 |
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[あらすじ] 多様な民族が混在する中央アジアの小さな街。ロシア人の青年マリャーノフは、うだるように暑いこの街で医師として働いている。彼宛に理由のない小包が届く。中味はゼリーで固められた大きな伊勢海老。
……大蛇を飼う隣人、安全ピンをたべる子供、イォシフと名付けられた大トカゲ。周囲は奇妙な存在で満たされているが、彼は動じない。心配してロシアからやって来た姉に対しても、"大丈夫"を繰り返す。
しかし、知合いのスネガヴォイが突然の自殺を遂げてから、何かが少しづつ狂い始める。追われた男が彼の診療所に逃げ込み、そして追手に捕まる。死んだ筈のスネガヴォイが死体置場で急に起き上り、語り出す。そしてある日、家の前に金髪の子供が倒れている。天使のようなその幼な子との束の間のふれ合い、そして別れ。
……次第に闇が深まる。日蝕。かつて、この地に強制移住させられたという親友ヴェチェロフスキーだけが唯一の救いだ。たが、その彼も去ってゆく…… |
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[スタジオ/製作年] レンフィルム1988年・製作 |
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[スタッフ]
原作:アルカージー・ストルガツキー
ボリス・ストルガツキー
脚本:ユーリー・アラボフ
監督:アレクサンドル・ソクーロフ
撮影:セルゲイ・ユリズジツキー
美術:エレナ・アムシンスカヤ
音楽:ユーリー・ハーニン |
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[キャスト]
マリャーノフ:アレクセイ・アナニシノフ
ヴェチェロフスキー:エスカンデル・ウマーロフ
マリヤーノフの姉:イリナ・ソコロワ
スネガヴォイ:ウラジーミル・ザマンスキー
スネガヴォイの運転手:アレクセイ・ヤンコフスキー |
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[ジャンル] 長編劇映画
[サイズ] 35mm / シネマスコープ /カラー
[上映時間] 2時間18分
[日本公開年・配給] 1995/6/17・パンドラ |