[かいせつ]
1998年カンヌ国際映画祭正式出品
前作「わが友イワン・ラプシン」から16年、アレクセイ・ゲルマン監督が、みなぎるパワーで描くロシア近代史の暗闇。
タイトルの「フルスタリョフ、車を!」というのは、ソビエトの独裁者スターリンが息を引き取る直前、側近を通して命じた言葉
だという。映画は、そのスターリンの死の1953年に始まり、約10年後で終わる。脳外科医にして赤軍の少将でもある主人公が、「医師陰謀事件」と呼ばれる粛清に巻き込まれて強制収容所に入れられるが、突然、モスクワに呼び戻されてスターリンの死を看取った後、再び姿を消してしまう。
実に多くの人物が登場し、交わされる台詞も膨大な量で、それらには一見、脈絡がない。説明を廃して、ひたすら画面に映し出される「出来事」だけが描かれ、次々と転換していく。そのスピードは常人にはついてゆくのがやっとで、マーティン・スコセッ
シ監督が「何が何だかわからないが、すごいパワーだ」と評したと伝えられている。それは、「道中の点検」の公開によって、ペレストロイカの"顔"を担なわされて、世界各国を旅し、空白とならざるを得なかった前作からの十数年を一気に取り戻そうとする監督の強烈な思いを見るようでもあり、"ロシア"というカオスをそのもののようでもある。
「知性でロシアを理解することはできない。メジャーで測ることもできない」とゲルマン監督は語っている。 |
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[あらすじ]
時は1953年反ユダヤ主義の色濃い時代。ユーリー・クレンスキーはモスクワの病院の脳外科医にして赤軍の将軍、そして大家族の長でもある彼は、病院と、家庭と、愛人のところを行き来する日々を送っている。
そんな折、彼はスターリンの指示のもとにKGBが企てたユダヤ人医師の迫害の計画、「医師団陰謀事件」に巻き込まれてしまうことになる。
スウェーデン人の記者がクレンスキーの周辺を嗅ぎまわり、その気配を察して彼は逃げようとする。が、すぐに捕らえられ、強制収容所で拷問を受ける。ところが突然解放されて、スターリンの側近ベリヤに、ある要人を診ろと言われる…。
それから10年。モスクワと、そして家族を捨て、マフィアのボスとなったクレンスキーは列車の中にいた。…圧政下で生きるロシアの人々の混乱と悲哀を映し、ロシアの歴史と人生を乗せた列車が走り去っていく… |
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[スタジオ/製作年] フランス・ロシア合作
ソダペラーガ+ゴスキノ1998年製作
Sodaperaga+Goskino
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[スタッフ]
製作:ギー・セリグマン
Guy Seligmann
アルメン・メドベージェフ
Armen Medvedev
アレクサンドル・ゴルトヴァ
Alexandre Goloutva
脚本:スヴェトラーナ・カルマリータ
Svetlana Karmalita
アレクセイ・ゲルマン
Alexei Gherman
撮影:ウラジーミル・イリネ
Vladimir Ilyne
録音:N・アスターホフ
N.Astakhov
美術:V・スヴェトザーロフ
V.Svetzarov
G・クロパチョフ
G.Kropatchiov
M・ゲラシモフ
M.Guerassimov
衣装:E・チャプカイツ
E.Chapkaits
編集:イリーナ・ゴロホフスカヤ
Irina Gorokhovskaia
音楽:アンドレイ・ペトロフ
Andrei Petrov |
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[キャスト]
将軍:ユーリー・アレクセーヴィチ・ツリロ
Yuri Alexevich Tsurilo
将軍の妻:N・ルスラノヴァ
N. Rouslanova
将軍の息子:M・デメンティエフ
M. Dementiev
スウェーデン人の記者:Y・ヤルヴェット
Y. Yarvet |
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[ジャンル] 長編劇映画
[サイズ] 35mm / スタンダード / モノクロ
[上映時間] 2時間22分
[日本公開年・配給] 2000/6/17・パンドラ |