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怒りと響きの戦場
ЖИВЫЕ И МЕРТВЫЕ
The Living and the Dead

[かいせつ]
1964年カルロビ・ヴァリ映画祭グランプリ受賞作
 大祖国戦争の初期を舞台に、その傷痕に冷静な眼を注ぎ、スターリンの個人崇拝時代にたいするきびしい反省と批判を込めた、秀抜な人間ドラマ。
 ストルペル監督は、日本で戦前公開され、伝説的な名声をもつ名作「人生案内」(1931年)のシナリオ執筆陣に参加し、映画界での地位を作り上げた。しかし、自らの演出作でコムソモールの生活を描いた「人生の法律」(1940年)で、スターリン政権からきびしい批判を受けた。その後、戦争中はコンスタンチン・シーモノフの原作をつぎつぎととり上げ、「われらの街から来た連中」(1942年)、「私を待て」(1943年)、「昼となく、夜となく」(1945年)で大きな成功を収めて復活。
 戦後は「真実の人間の物語」(1948年)、「モスクワを遠くはなれて」(1950年)に続いて、これが三作目となった。困難な情勢をのりこえる英雄的な人間像を描きながら、つねに説得力豊かな内面描写を忘れなかったストルペルの長所は、この作品でも遺憾なく発揮され、あまたある戦争映画のなかでも、まったくユニークな感動をもつ秀作をとなっている。
 スターリンのために無実の政治犯とされ、入獄していたセルピーリン将軍を演じるのは、これまでもっぱら喜劇俳優として有名だったアナトーリ・パパーノフ。はじめてのシリアスな役どころながら、彼はこの複雑で深刻な人間像にとり組み、見事な成功を収めている。軍医になるリュドミラ・クルィロワは、「レーニン物語」(1958年)などで頭角をあらわした若手女優。主役の1人、赤軍の上級政治指導員であり、新聞報道員であるシンツォフを演じるキリール・ラヴロフをはじめ、数多くの出演者がそろってリアルな集団演技を見せていることも特筆される。

[あらすじ]
 赤軍の上級政治指導員で、新聞報導員であるイワン・シンツォフは、愛妻をモスクワに残したまま、戦争が勃発すると同時に戦線におもむいた。
 優勢な独軍の電撃的攻勢によって、赤軍は退却につぐ退却を余儀なくされていた。新聞報道員としてのシンツォフの活動もひどく困難なものだった。ある日、彼は、壮絶な空中戦のはてに、メッサーシュミット機によってソヴィエト軍の飛行機がつぎつぎと射ち落される光景を目撃した。2人のパイロットがパラシュートによって地上に下りて来たが、そのうちの1人が、救けにかけつけたシンツォフ達を独軍とまちがえ、射撃して来た。シンツォフは、 はじめて銃弾を身体に受けた。
 後退しながらも、赤軍はけっして戦闘意識を失っていなかった。かえって独軍打倒の決意を固め、包囲におちいってもねばり強く抵抗していた。シンツォフの所属したセルピーリン将軍の連隊も、やはりそんな部隊だった。セルピーリンは、スターリンの狂気じみた粛政の犠牲となって、無罪の罪のために刑務所につながれていたが、大戦の勃発とともに釈放され、連隊長に任命されていたのだ。
 セルピーリン連隊の守陣地は、独軍の攻撃が激しくなり、頑強な抵抗にもかかわらず、退却しなければならなくなった。師団長は、その途中で死に、後任にセルピーリンが任命された。
 セルピーリン、政治副隊長のシュマコフ、シンツォフ等百名あまりの兵士達は、休むひまもなく、新しく編成された部隊に合流すべく出発した。そのなかには、新しくシンツォフが親しくなった兵士のゾロタレフや、勇敢でやさしい従軍女医のターニヤがいた。
 しかし、彼等は、すぐそばを独軍の戦車部隊が走っていたのを全く知らなかった。不意に独軍戦車部隊と出あった彼等は、ひとたまりもなかった。突進して来る戦車によって、数少ないトラックを焼かれ、機銃掃射によって、バタバタと兵士達は泥濘のなかに倒れていった。ソヴィエト軍の兵士達は、ちりぢりになって逃走した。
 シンツォフとゾロタレフと負傷したターニヤは、戦車と自動小銃の弾をのがれて、森林づたいに逃げのびた。ターニヤを背負ったシンツォフは、やっと樵夫のビリュコフの小屋を見つけ、しばらく休息した。が、それもつかの間、独軍兵士の急襲によって、シンツォフとゾロタレフは、ターニヤを置き去りにしたまま、森林のなかに逃げのびなければならなかった。
 シンツォフが、やっと味方のところまで1人でたどりついたとき、彼は負傷した上に、身分証明書も党員手帳も身につけていなかった。特務部の政治指導員は、身許を怪しんで、スパイあつかいをした。シンツォフを証明してくれるものは、誰もいなかった…
 …モスクワに帰ったシンツォフの見違えるほど変った姿に、彼の妻は驚き、そして狂喜した。シンツォフは、党の地区委員会にすべてを話し、誤解をといてもらった。
 ようやくその頃、優勢を誇った独軍に、最初の破局が近ずきつつあった。西に向う部隊に再ぴ加わったシンツォフは、なつかしいセルピーリン将軍の姿を、その部隊のなかに見つけ出した。

[スタジオ/製作年] モスフイルム・1963年製作

[スタッフ]
原作:コンスタンチン・シーモノフ(小説「生者と死者」より)
脚本・監督:アレクサンドル・ストルペル
撮影:ニコライ・オロノフスキー
美術:エス・ヴォルコフ
録音:ヴェ・レシチョフ

[キャスト]
シンツォフ:キリール・ラヴロフ
セルピーリン:アナトリー・パパーノフ
マリーニン:アレクセイ・グラズィリン
ビリューコフ:ボリス・チルコフ
マーシャ:リュドミラ・リュビーモワ
軍 医:リュドミラ・クルィローワ
イワーノフ:オレーグ・エフレーモフ
シュマコフ:レフ・リュベツキー
ゾロタレフ:ユーリイ・ドゥブロヴィン
リューシン:ロマン・ホミャートフ

[ジャンル] 長編劇映画
[サイズ] 35mm / 黒白 / シネマスコープ / 16巻(日本公開版)
[上映時間] 原版は201分
[日本公開年・ 1964/10/26 第2回ソビエト映画祭にて上映
 配給] 1964/12/3 日本ヘラルド


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パンフレットソヴェート映画史−七つの時代
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