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ジプシーは空にきえる
ТАБОР УХОДИТ В НЕБО
The Gypsy Camp Vanishes Into The Blue

[かいせつ]
1976年第24回サン・セバスチヤン国際映画祭"金の貝殻"賞
1977年第15回パナマ国際映画祭最優秀女優賞

 詩人でもあるエミーリ・ロチャヌー監督、音楽のエヴゲニー・ドガらの代表的なモルダヴイヤの映画人がモスフイルムのセルゲイ・ウロンスキー(「カラマーゾフの兄弟」ほか)のカメラで完成した70ミリ大作。
 原作は、文豪マクシム・ゴーリキーの誕生を告げることになった記念すべき作品で、若きゴーリキーが南ロシヤ放浪の日々に見聞した、古くからこの地方をさすらっていたジプシーたちの伝説「ロイコとラッダ」をモチーフに発表した処女作「マカール・チュドラー」。若きゴーリキーの片鱗をうかがわせる自由を謳うロマンチシズムに貫かれた作品である。
 映画はかつて東ヨーロッパのジプシーがさまざまな運命を秘めて漂泊の旅を続け、その帰属をめぐってロシア時代からルーマニアとの係争が絶えなかったたザカルパチア地方のヴイノグラドフ市にロケ。みずからもこの地の出身であるロチャヌー監督が、美しい故郷の自然を舞台に、さすらいと屈従の運命に生きた民族の魂を、哀愁を帯びたメロディと激しくもエロティシズムにあふれる踊りをないまぜながら、映像化している。
 作曲家エヴゲニー・ドガは、ロチャヌー監督とは「モルダヴィヤのバイオリン弾き」(1972年製作。サン・セバスチャン国際映画祭審査員特別賞受賞)以来のコンビ。二人はこのの作品を製作するにあたって、数ヶ月にわたり、ソビエト各地を旅して、ジプシー民謡を集めてまわったという。
 ロチャヌー監督が、この映画は「まるで多彩な万華鏡のような音楽の画布」と語っているように、虐げられた者の哀愁や日々の生活そのものまでを歌いこんでいるジプシー音楽は、激しくも悲劇的な愛のドラマをもの語るうえで大きな役割をはたしている。
 主役のグリゴリー・グリゴリウとスヴェトラーナ・トマはともにロチャヌー監督の「赤い草原」(1966年製作)がデビュー作であり、ロチャヌー監督の薫陶を受けた、モルダヴイヤの人気俳優である。
 モスクワのジプシー劇場"ロメン"からも、多数のメンバーが出演しており、ジプシーの生活や風俗もうかがい知れる。
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[あらすじ]
 今世紀初めの東ヨーロッパ地方、ジプシーたちがさすらいの旅を続けている。そんな群れのなかの一人、馬泥棒のゾバールは馬をこよなく愛し、自由を謡歌する大胆不敵な若者である。その夜も軍隊の兵舎から、まんまと馬を盗みだした。馬はすぐさま、地主に売りつけられた。
 翌朝、ゾバールの一味の仕業は軍の将校たちに発覚してしまう。兵士に追われて負傷したゾバールは森に逃げこんだ。そのとき突然、木立ちの葉かげから、彼の眼前に現われたのは、黒い瞳の美しい娘ラッダだった。彼女はゾバールの肩の傷口をいやすと、いずこともなく立ち去る。それは、神秘的な出会いだった。だがこの出会いから悲劇の愛は始まったのだった。
 あるとき町の市場で、ゾバールは鶏を盗んで捕えられそうになったブーチャを救いだした。ブーチャはゾバールを自分のキャンプに誘った。そのキャンプでゾバールはラッダと再会したのである。
 ラッダはポーランドの貴族に見そめられたが、高慢な彼女は男の執勘な求愛を拒み続けた。とはいえ、彼女は男を虜にして離さない魅惑をそなえた女で、仲間からは"魔女"のように噂されていた。
 ……激しいリズムにあわせてステップを踏む娘たち。そのなかでもラッダはひときわ美しく、その視線は誇り高い情熱をもの語っていた。そんなラッダの熱い眼差しにひかれていくゾバール。ゾバールは彼女に白い馬を贈る約束をして、キャンプを去る。
 だが、彼はおたずね者の身だった。……降りしきる雨の中、ついに囚われたゾパールが処刑の時を待っている。しばり首のロープがかれの首に触れようとしたその一瞬、仲間のブブリャが放った銃声が雨雲をついて響き、ゾバールは危うく処刑を逃れた。このとき、ブブリャは射たれて犠牲になる。仲間を失ったゾバールの悲しみは深かった。
 ゾバールが彼女に美しい白い馬を捧げて愛を告白する時がきた。愛のためにラッダに脆まずこうとするゾバール。自由に生きる大胆な勇士に熱い愛の炎を燃やしながらも、おのれの自由を捨てがたいラッダ。ゾパールが並みいる人々の前に進み出て、ラッダに近寄る。だが、彼女は荒々しく彼を突き離す。
 それがゾバールの激しい気性に火をつけた。彼はラッダの胸を刺し、ゾバールがその同じ刃に倒れる。
 さすらい人たちが焚く火の煙が、ベッサラビヤの空に哀しみの弧を描いて立ち昇っていった。

[スタジオ/製作年] モスフィルム・1976年製作
               Mosfilm Studio 1976

[スタッフ]
原作:マクシム・ゴーリキー「マカール・チュードラ」
脚本・監督:エミーリ・ロチャヌー
撮影:セルゲイ・ウロンスキー
音楽:エヴゲ二ー・ドガ
Based on MAXIM GORKY's stories
Script and Direction : Emil LOTYANU
Camera : Sergei VRONSKY
Music : Yevgeny DOGA

[キャスト]
ラッダ:スヴェトラナ・トマ
ロイコ・ゾバール:グリゴーリー・グリゴリウ
ブブリャ:セルゲイ・フィニチ
ブーチャ:ボリスラフ・ヴロンドゥコフ
ダニーロ:フセヴォロド・ガブリーロフ
マカール・チュドラー:ボリス・ムラエフ
RADA : Svetlana TOMA
ZOBAR : Grigory GRIGORIU
BUBULYA : Sergei FINTI
BUCHA : Borislav BRONDUKOV
DANILO : Vsevolod GAVRILOV
MAKAR CHUDRA : Boris MULAEV

[ジャンル] 長編劇映画
[サイズ] 35mm / シネマスコープ / カラー / 原版は70mm
[上映時間] 1時間40分
[日本公開年・配給] 1979/4/7(日劇文化)・日本海
[VIDEO・DVDなど] サウンド・トラック盤 絶版 VIP-7283 ビクター(1979/4/5発売)

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