●物語 前世紀末のロシア。木の葉がくれに館のバ ルコニーが映える美しい田園風景……。ある 暑い夏の日の昼下り、その木立ごしに戯れ興 ずる人々の声が聞こえてくる。 ヴォイニーツェフ将軍の未亡人アンナ・ペ トローヴナの館に、近隣の地主や、退役大佐 トリレツキー、その息子で医者のニコライ・ トリレツキー、妻を連れた小学校教師プラト ーノフらが、将軍の先妻の息子セルゲイの新 妻にひと目会うのを口実に、まるで長い冬眠 から覚めたかのように久方ぶりに寄り集って いる。そしてアンナはまた、ここらでは珍 しい高価な自動ピアノで皆を驚かそうと云う 魂胆である。 ところでセルゲイの新妻ソフィヤこそ、プ ラトーノフの初恋の女性だった。思いがけな い再会に、静かで平穏な日々を送っていたプ ラトーノフの心が揺れ動く。その胸の動揺を 見られまいと、自ら道化役を演じて見せるプ ラトーノフ。 やがて宵闇をついて上る花火が水面に映え、 なすこともなく、ただ乱痴気騒ぎを繰り返し ている人々のさんざめきのなか、水辺で抱き あうプラトーノフとソフィヤ。だが二人にと って、もはや時の流れは呼びもどしようがな い。二人の語らいはついにかみ合うこともな く、スキャンダラスな騒ぎとなる………。 |
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