[かいせつ] ツルゲーネフ生誕150周年記念作品
19世紀中葉のロシア貴族社会を背景に、理想に燃えながら夢破れるインテリ貴族の悲劇を描いた、ツルゲーネフの代表作の映画化。
監督は、タルコフスキーと共に60年代ソビエト映画の新しい潮流を担ったアンドレイ・ミハルコフ=コンチャロフスキー。
斬新な映像感覚を発揮し、凝りに凝った描写に徹して、19世紀ロシアの貴族社会の生活を再現し、原作のもつ淡い憂愁と詩情を見事に伝えている。また、愛と信仰にひたむきで、永遠に純真さを失わないツルゲーネフ文学最高のヒロイン、リーザの形象には、ロシア古来の精神的美徳が鮮やかに刻まれている。
そのリーザ役には、当時、演劇学校在学中の新人のイリーナ・クプチェンコが抜擢されたが、彼女は清純な瑞々しい雰囲気と確かな演技力をみせて充分にこの大役を果たした。主人公のラヴレツキー役にはモスクワ・ドラマ劇場のレオニード・クラーギン。そして、ワルワラ役には、当時、ポーランド映画の巨匠アンジェイ・ワイダ夫人だったベアタ・トゥイシケヴィッチが扮している。
撮影のゲオルギー・レルベルグはアンドレイ・ミハルコフ=コンチャロフスキー監督とは『最初の教師』につづいて2本目のコンビ。この作品が初のカラー撮影だが、原作のもつ優雅とけだるさのムードを淡く、美しい色彩処理で見事に映像化している。 |
[あらすじ] 華やかなパリの社交界で艶間が絶えない妻ワルワラに愛想をつかしたラヴレツキーは、長い西欧での生活に終止待を打って、単身で帰国し、久方ぶりに遠縁のカリーニン家を訪ねた。そこでは、清純でもの静かな姉娘のリーザが美しく成長して、いまでは内務省の官吏パンシンの_熱心な求愛を受けていた、パンシンの軽薄さに強い嫌悪感を覚えるラヴレツキーは、いつしかリーザを愛するようになる。
そんな折、彼のもとにワルワラの訃報を知らされる。悲しみとも安堵ともつかぬ複雑な感情を抱いたラヴレツキーはリーザに妻の死を告げたが、信仰心に厚く他人の不幸を黙認できない彼女は、却って彼を避けるようになった。思い余った彼は遂に愛を告白する。だが訃報は誤りで、妻は生きていた……。
ワルワラの出現はリーザの繊細な神経をズタズタにしてしまった。リーザは修道院に入り、夫との愛のない生活に疲れたワルワラもパリヘと発ってしまい、ラヴレツキーは一人残される。 |
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[スタジオ/製作年] モスフィルム・1969年製作 |
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[スタッフ] 原作:イワン・S・ツルゲーネフ
脚本:ワレンチン・エジョフ
監督・脚本:
アンドレイ・ミハルコフ=コンチャロフスキー
撮影:ゲオルギー・レルベルグ
音楽:ヴャチェスラフ・オフチンニコフ
美術:A・ボイム
N・ドヴィグブスキー
M・ロマジン |
[キャスト] リーザ:イリーナ・クプチェンコ
ラヴレツキー:レオニ―ド・クラーギン
ワルワラ:ベアタ・トゥイシケヴィッチ
パンシン:ヴィクトル・セルガチョフ
マリヤ:タマーラ・チェルノワ |
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[ジャンル] 長編劇映画
[サイズ] 35mm / カラー / シネマスコープ
[上映時間] 1時間50分
[日本公開年・配給] 1970/8/29・東和
[VIDEO・DVDなど]
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