[「ソビエト映画の全貌91」パンフレットより転載]
[かいせつ]
'60カンヌ国際映画祭特別参加賞
ロンドン国際映画祭最優秀映画賞
チェーホフ生誕100年記念作品。
きめ細かな心理描写に優れた、チェーホフの有名な短篇小説の映画化で、作家の生誕100年記念の作品である。世紀末、クリミヤ半島の避暑地ヤルタでの憂愁に閉ざされた日々、中年の妻子ある男グーロフと人妻アンナとのはかない恋を黒白の画面に、チェーホフの文章さながらに、簡潔単純な映像で切々と謳いあげたこの映画は、イオシフ・ヘイフィッツ監督の代表的な名作でもある。
グーロフにはモスクワ芸術座ほかで活躍するアレクセイ・バターロフ、そのバターロフの推薦で、アンナには当時モスクワ大学の学生演劇に出演中だったイヤ・サーヴィナが抜擢された。気品のある面立ちで、知性と繊細さを兼ね備えたヒロインの心の綾を見事に表現して成功し、以後、彼女は女優の道へ進む決意を固めた。 |
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[あらすじ]
19世紀末のヤルタ。銀行員のグーロフは避暑地の所在ない生活の合間に、美しく上品な"犬を連れた貴婦人"と出会い、心を奪われる。二人は自分のことを語り合い、日毎に親しみを増していく。山の頂きに白い雲がかかり、海が朝霧にかすむ港を見下しながら、二人はこれまでの人生で見たことのないほのかな光を感じたのだった。
やがてアンナは、夫が待つサラトフに帰るが、一方モスクワに戻ったグーロフはアンナのことが忘れられず、妻にはペテルブルグへ行くと偽ってサラトフヘと旅立つ。そし
て劇場の片隅で再会した二人は熱い口づけを交わす。
それから恋情抑えがたいアンナがモスクワにグーロフを訪ねたのは、大きな雪片の舞う冬の日であった。こうして二人の愛はこれまでの死んだような生活に生への希望の灯をともしはしたが……。 |
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[スタジオ/製作年] レンフィルム・1960年製作 |
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[スタッフ]
原作:A・P・チェーホフ
脚本:イオシフ・ヘイフィッツ
監督:イオシフ・ヘイフィッツ
撮影:アンドレイ・モスクヴィン
D・メスヒーエフ
美術:B・マネヴィチ
I・カプラン
音楽:ナジェージダ・シモニャン |
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[キャスト]
ドミトリー・グーロフ:アレクセイ・バターロフ)
アンナ・セルゲーエヴナ:イヤ・サーヴィナ
グーロフの妻:ニーナ・アリーソワ
アンナの夫:D・セヴロフ |
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[ジャンル] 長編劇映画
[サイズ] 35mm / スタンダード / モノクロ
[上映時間] 1時間30分
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