[第14回ソビエト映画祭(1976.11/26〜12/3)パンフレットより転載]
[かいせつ]
エドモンド・ケオサヤン監督はここ数年は国内戦時代に神出鬼没の活躍をした少年パルチザンを描いたP・ブリャヒン原作の小説「赤い小悪魔たち」をモチーフにした『赤い小悪魔たち』『小悪魔たちの大冒険』『ロシヤ帝国の王冠』などのアクション映画を製作しているが、『九月になれば…』はこうした作品とは打って変った、コメディータッチのホームドラマである。
さらにこの映画の話題は主人公のアルメニヤの農民レヴォン爺さんを演ずる、アルメン・ジガルハニャンの名演技とわき役ながら久し振りに日本のファンにその端正な姿を見せる、ウラジーミル・イワショフ(デビュー作『誓いの休暇』の少年兵アリョーシャで国際的な人気を得た)である。ジガルハニャンはアルメニヤのエレワン出身の舞台俳優で、現在はモスクワのマヤコフスキー劇場の舞台に立っており、一方映画歴も20年におよぶベテランである。レヴォンでは陽気で人なつこく、誰に対しても進んで善意を施そうとする典型的な南国人を演じて、好評を得た。本年度全ソ映画祭グランプリ受賞作品。 |
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[あらすじ]
レヴォン爺さんは娘のヌネ夫婦の一人息子レヴォーニクの入学式に出席しようと、アルメニヤの山奥のアシタラーク村からはるばるモスクワまでやってきた。入学式はレヴォーニクにとって待ちに待った日だったが、お爺さんにも待ち遠しい日だった。この喜びを誰かと分ちあおうと、モスクワでの道づれやタクシーを待つ人の群れにも声をかける。世の中、悪人より善人がはるかに多い。誰に対しても誠意をもち、勇気をもって接しなければいけない。人生は複雑なものだから、人には各々事情があるのだ。それゆえ、誰でもまづ信用することだというのがお爺さんのモットーだ。
お爺さんにしても穏やかな人生を歩んできたとは云いがたい。アシタラークの石の多い土地での耕作は苦労させられたし、ドイツ軍を追ってのベルりンまでの戦いの日々も辛かった。散弾の傷跡は30年もすぎた今になっても、かれを悩ませる……。
レヴォン爺さんは孫の入学式の日、同じように孫のカーチャの手を引いて入学式にやってきた退役中佐と知り合う。二人は同じ歴戦の勇士、すっかり意気投合する。
レヴォンはわずかな時間を利用しては村人へのみやげ物の買物に町に出かけたりするが、どこへ行こうが、必らず誰とも知り合いになる。
だがレヴォンの気がかりは娘夫婦のこと、ヌネは沢山の女性が働いている織物工場で働く夫を何となく嫉妬している。それをレヴォンは自分の娘のこととは云え、やはりウラジーミルヘの云いがかりではないかと思う。
ところで散弾の傷に悩むレヴォンを気づかって、退役中佐は戦友の外科医のもとへかれを連れていく。外科医はレントゲン写真を見て後、手術の必要はないとだけ云った。レヴォンの命があと4ヵ月だと知らされたのは中佐だけだ。
モスクワ滞在も終る頃、なじみになった鍛冶工の助けでアパートのベランダにコンロを作ると、そこでレヴォンは自慢の料理"シャシリク"を作って、短い間に知り合いになった人々を招いて楽しい宴を開く。
この都会で生活する若夫婦にとって隣近所の多くの人たちの力が一番助けになるとレヴォンは信じている。 |
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[スタジオ/製作年] モスフィルム・1976年製作 |
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[スタッフ]
脚本:コンスタンチン・イサーエフ
エドモンド・ケオサヤン
監督:エドモンド・ケオサヤン
撮影:ミハイル・アルダビエフスキー
美術:エヴゲニー・セルガノフ
音楽:ヤン・フレンケリ |
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[キャスト]
レヴォン爺さん:アルメン・ジガルハニャン
ウラジーミル:ウラジーミル・イワショフ
ヌネ:ラウラ・ゲヴォルキャン
レヴォーニク:アントン・イリイン |
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[ジャンル] 長編劇映画
[サイズ] 35mm / スタンダード / カラー / 全9巻
[日本公開年] 第14回ソビエト映画祭 1976/12/ 2 東京 読売ホール |