●じつに半世紀の後に、いま初めて、「サンダ ー・オーヴァー・メキシコ」「タイム・イン・ ザ・サン」の贋作−−−一概に贋作よばわりは いささか酷であるが−−−に蔽われていた天才 エイゼンシュテインの真の姿に接することが できる。「メキシコ万歳」は、80年代はじめ の一大イヴェントである。 岩崎 昶 ●「メキシコ万歳」は、エイゼンシュテインの 心からほとばしる第三世界への賛歌である。 若き巨匠が、メキシコの誇り高く素朴な人々 にいかに熱い共感をよせていたかは、どのシ ョットをひとつとりあげてみても分る。その 映像のみずみずしさ。造型的な力の圧倒的な 強さとのびやかさ。構図というものがこれほ ど雄弁である映画はちょっと類がない。 佐藤 忠男 ●さすがはエイゼンシュテインである。撮影 からほぼ半世紀をへだてて彼の意志は貫かれ た。この力強く素朴で生命感にあふれた異国 を見る目のたしかさに、私は驚嘆する。「タイ ム・イン・ザ・サン」などのアメリカ版がい かに彼の意志とは程遠い編集であったかを知 らせてくれた。幻の映画と言われるゆえんで あり、古くして新しい貴重な作品である。 登川 直樹 ●エイゼンシュテイン未知の遺産のなかで、 この「メキシコ万歳」こそ、彼がその「喪失」 をわが子の死のごとく終生くやみつづけた最 大最高の財宝である。それがいま同僚の手で 半世紀ぶりによみが、えった。その天才的な映 像美、メキシコの歴史と文化と民衆への敬愛、 それが今日世界をゆるがす「第三世界」の興 起を見事に予言する。 山田 和夫 |
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