[かいせつ]
原作はシェークスピアの4大悲劇の一つ「リア王」。その厳しいまでの悲劇性のため舞台の上演も少なく、映画界でもそのスケール、人間模様の複雑さから映像化が困難といわれてきたが、18ヶ月におよぶ撮影を経て映画化した作品。
「ハムレット」に続いてシェークスピア研究の大家コージンツェフ監督がメガホンをとり、この作品が遺作となった。
撮影も再びグリツュスが担当して名人芸を披露。特にシベリアで撮影された、すさまじい雷雨シーンは映画史に残ると言われている。
主役リア王には、エストニアの舞台俳優で映画にはまだ脇役でしか顔を出していなかったユーリー・ヤルベットが抜擢され、"その血も肉も彼自身がリア王なのだ"と評されるほどの迫真の演技をみせた。
他の配役陣も、「ハムレット」で王妃を演じたエリザ・ラジニをはじめ個性的な実力者が顔を揃えている。
長年、コージンツェフ監督と組んだ作曲のショスタコーヴィチにとってもこれが最後の映画音楽(作品137)となった。
黒澤明監督の「乱」(1985)が「リア王」をモチーフにしたものであったことを思うと、正攻法で取り組んだこの作品の偉大さがあらためて感じられよう。 |
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[あらすじ]
中世のイギリス。老いたりア王は隠居生活に入るため、領地を愛する3人の娘たちに分け与えようとした。しかし末娘コーディリアはひとり、父に抗い財産受領を拒み、結婚もせず終世を父に捧げると主張、かえってリアの怒りを買って勘当されてしまう。
だが、2人の姉とその配偶者たちは、財産を手に入れた後は、父リアを虐待し、遂には殺害まで企てる有様。
純粋で父想いのコーディリアは、何とか父を助けようと、嫁いだ先のフランスの軍をひきつれ、波荒いドーバー海峡を越えイギリスに渡る。
…戦いは始まった。フランス軍は勇敢に戦うが百戦錬磨のイギリス軍にはとても歯がたたず、敗北する。コーディリアも捕らえられ、首に縄をかけられ無残な最後を遂げた。
愛に裏切られ世の苦悩に苛まれて半ば気のふれたリア。目も裂けんばかりに娘の死体を見つめた彼は悲痛な絶叫とともに悶死してしまう……。 |
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[スタジオ/製作年] レンフィルム・1971年製作 |
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[スタッフ]
原作:ウィリアム・シェークスピア
脚本・監督:グリゴーリー・コージンツェフ
撮彩:イオナス・グリツュス
美術:エフゲーニー・エネイ
音楽:ドミトリー・ショスタコーヴィチ
演奏:レニングラード国立フィルハーモニーオーケストラ |
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[キャスト]
リア王:ユーリー・ヤルベット
コーディリア:バレンチナ・シェンドリコワ
ゴネリル:エリザ・ラジニ
道化:オレグ・ダリ |
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[ジャンル] 長編劇映画
[サイズ] 35mm / シネマスコープ / モノクロ /
[上映時間] 2時間18分
[日本公開年・配給] 1972/2/5 ・松竹映配 |