[かいせつ] 原題「他人の白い鳩と斑の鳩」
1986年ヴェネチア国際映画祭特別賞受賞
思春期の少年少女たちを主人公に、ひと夏のキャンプ生活を描いた「想い出の夏休み」(第25回ベルリン国際映画祭銀熊賞他)、マクシム・ゴーリキー原作の戯曲の映画化「エゴール・プルイチョフ」、栗原小巻、ユーリー・ソローミン主演の日ソ合作「白夜の調べ」等、ロシア的詩情とリリカルな映像で知られるモスフィルムの監督セルゲイ・ソロビヨフが、カザフフイルムスタジオで撮った作品。カザフのステップを舞台に、母を亡くし、負傷して帰還した父と共に、戦後の困難な日々を生き抜いた少年のありのままの生活とその少年の内面の成長を描いた作品で、1986年ヴェネチア国際映画祭特別賞を受賞している。
監督はこの映画で「1946年当時、12〜15歳だった人々はいま、現代社会の重要で困難な仕事をその双肩に担っている世代だが、この世代の精神力の源泉を描こうとした」と語っている。詩情豊かなカメラワークは「鳥を追う少年」(1976)、「スラム要塞の伝説」(1985)などで国際的な評価が高いユーリー・クリメンコである。
主役の少年は、当時、アルマ・アタの小学7年生スラーワ・イリュシチェンコで、また、女優クセーニヤは「戦争と平和」で華やかなデビューを飾ったリュドミーラ・サヴェーリエワが演じている。 |
[あらすじ]
この物語は、現在、宇宙飛行士になっているイワン・ナイジョーノフが、その少年時代を回想する形で展開する。
1946年秋、西カザフスタンにある貧しい小さな町。戦争中、ナイジョーノフ一家はモスクワからこの町に疎開してきた。画家だった父親は戦争で手を失い、母親はチフスで死んだ。イワン少年は自分の力で生きていかなければならなかった。
平和な日々のおとずれと共に人々の生活に楽しみがもどってきた。この町の人は皆、鳩を飼うことに夢中になった。鳩への情熱が高じて売買したり、盗んだりする者もいた。鳩を専門にねらうマフィアまがいの窃盗団まで現れた。
イワンはかって有能な画家だった父親から世の中の美しいものを見分ける目と、人間愛と、自分の信念を貫き通す強い意志を受け継いだ。父は戦争で不自由になった身体にむちうって軍事教練の教官をして貧しい生活を支えた。父には心を痛めていたことが一つあった。かって彼の作品のモデルになってくれた女優で、やはりこの町に疎開していたクセーニヤが夫に捨てられ、食うや食わずの生活をしていることだった。自分の生活がやっとの父は思い余ってクセーニヤの前夫を訪ね、援助をしてやってくれと頼むが、前夫はこれを冷たく拒否する。クセーニヤは手元に残された最後の金目の物である毛皮の外套を売るが、その際、闇売買の嫌疑をかけられ悲嘆のあまり死んでしまう。
ある日、この町に見事な白い雌鳩が現れた。この鳩は利口でなかなか捕まらなかった。イワンは危険な目にあいながら、ついにこの自鳩を捕まえる。イワンは以前から一羽のまだらの雄鳩を飼っていた。彼はこのまだらに雪のように自くて美しい花嫁がきたと大喜ぴだった。
その日からイワンは鳩マフィアの間で注目の的になる。白鳩を売ってほしい、交換してほしいと持ちかける者もいたし、だまし取ろうとする者もいた。しかしイワンはどんなさそいも固く断った。だが、鳩マフィアはあっさりと白鳩を盗んでしまった。
イワンは岐路にたたされる――。自鳩をあきらめ、早劣な盗賊社会を容認するか、釣り合わね相手と知りながら命がけで鳩を取り返すか。
白鳩奪還の戦いはイワンの自尊心を守るための戦いでもあった。ついに白鳩を取り返したイワンはこの鳥を大空に放つ。 |
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[スタジオ/製作年] カザフフィルム・1986年製作 |
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[スタッフ] 原作:ポリス・リャホフスキー
B0RIS RYAKHOVSKY
脚本・監督:セルゲイ・ソロビヨフ
SERGEI SOLOVEV
撮影:ユーリー・クリメンコ
YURI KLIMENK0
美術:マルクセン・ガウフマン=スヴェルドロフ
MARKSEN GAUKHMAN-SVERDLOV |
[キャスト] イワン:スラーワ・イリュシチェンコ
IVAN:SLAVA ILYUSCHENK0
イワンの父:リュボミラス・ラウツァヴィチュス
IVAN'S FATHER:LYUBOMIRAS LAUTSYAVICHUS
クセーニヤ
リュドミーラ・サヴェーリエワ
KSENIYA:LYUDMILA SAVELEVA
ムラト:スルタン・バポフ
MURAT:SULTAN BAPOV
ジュスイリヤ・イワノフ
ZHUS:ILYA IVAN0V |
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[ジャンル] 長編劇映画
[サイズ] 35mm / カラー/スタンダード
[上映時間] 1時間39分
[日本公開年] 1987/6/5 第19回ソビエト映画祭にて上映 東京・よみうりホール(6/10新潟市音楽文化会館・6/12広島市東区民文化センター) |