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白いキャラバン
БЕЛЫЙ КАРАВАН

[かいせつ]
 1960年頃、グルジア共和国の若いジャーナリスト、メラブ・エリオジシヴィリが首都トビリシで短篇小説・ルポルタージュ集を出版した。そのなかには先祖代々羊飼いをしているグルジア牧夫のきびしい日常生活が描かれていた。エリオジシヴィリはこの本が絶讃を博したので、ぜひ映画化したいと思い、はじめて自分でシナリオを書いてみた。それが「白いキャラバン」のシナリオであった。
 監督はやはりグルジア出身の国立映画大学卒業生エリダール・シェンゲラーヤとトマズ・メリアーワの2人。シェンゲラーヤは、「二六人のコミッサール」で知られるグルジヤ映画創世期の監督ニコライ・シェンゲラーヤを父に持ち、母は女優ナト・ワチナーゼ、弟ゲオルギーも後に「ピロスマニ」で世界的に知られた監督になる、という映画一家に育ち、大学ではセルゲイ・ユトケーヴィッチ監督の指導を受けた。素朴な田舎の人たちの日常を映画化することを夢みていたが、「氷の心の伝説」(1957年)「雪の物語」(1959年)を発表し、深い人間のドラマのなかにロマンチックなテーマを追うことに成功して評価を得た。一方、メリアーワは「静かな埠頭」(1958年)で、民族的なユーモアを生かした持情的喜劇をつくった。この2人の同窓生は、エリオジシヴィリのシナリオを得て、ついに共同で念願の故郷グルジアの素朴な人たちを主人公とした映画「白いキャラバン」にとり組むことができたのだった。
 スタッフのなかで注目されるのは、撮影のゲオルギー・カラトゾシヴィリ。「戦争と貞操」「送られなかった手紙」で有名なミハイル・カラトーゾフ監督の息子であり、グルジアの自然と人間を見事な構図とリリカルなトーンでとらえた「私とおばあさんとイリコとイラリオン」(1963年)1本で一躍注目をあび、この「白いキャラバン」で第一線カメラマンの地位を確立した。
 主役の娘マリヤを演じるアリアードナ・シェンゲラーヤは、国立映画大学々生時代にオペラ映画「エフゲニー・オネーギン」(1958年)のヒロインタチアーナに抜擢された幸運の若手スター。この映画の主役に選ばれると、数ヵ月前からカスピ海沿岸の漁業基地に身分を隠して入りこみ、漁業労働者たちと働いたという。一緒に働いていた仲間たちはこの映画を見て、はじめて彼女が女優だったと知って驚いたというエピソードもある。マルチヤ老人を演じるスパルタク・パガシヴィリは、30年のキャリアをもつグルジアきっての名優で、グルジア映画の名作「アルセン」(1937年)「ギオルギー・サ―カッゼ」(1943年)などの主役で名高い。

[あらすじ]
 グルジアの山奥にある部落。秋が来るとコルホーズの牧人たちは住みなれた自分の家を離れ、カスピ海沿岸の草原に冬の牧場を求めて家畜の群を追って行く。出て行く牧夫たちが両親や妻子と別れをつげている光景は何かお祭りさわぎの様な特別な零囲気をかもし出している。牧夫は、これから山の峰をこえ、落着かない遊牧の途に出るのである。白い羊の群れが果てしなくつながって小径を移動して行く。
 牧夫の中にはきまざまの人がいる。バルタは、まだ子供と言ってもいい位の若者で羊飼いの仕事にまだよくなれていない物静かな男、ゲラは気性のはげしい激しやすい男で、まだ家から遠く離れて冬を越した経験がない。
 この人達1対1で自然の条件と戦って行くうち、一家族として回く結びつく。その"長"は黙りこくったマルチヤで、彼はその生涯を遊牧で明け暮れた古老である。その意見や言葉は、他の者に対しては鉄則である。
 海沿いの牧場で、彼等は思いがけなく、沿岸漁業をやっているロシア娘のマリヤに出会う。悪天候をさけていた彼女は彼等が入って来たので、とまどうが、愛相のよい牧夫たちはマリヤを大切にする。若いゲラが誰よりも先づこの娘に近づこうとするが最初は失敗する。しかし、マリヤの心には、この気性の激しい落着かない男に対する愛が芽ばえる。
 町に出かけたり、漁夫の女のところに遊びに行ったり、牧夫達の生活も順調にすぎて行く。子羊が生れると言う電報を受取った牧夫の1人は数日の予定で村に帰って行く。羊の冬のお産は牧夫の生活では大きな出来事である。習慣に従ってお祝のため飾られたテーブルの上ではじめに生れた子辛がびっくりしてあたりを見まわしている。
 ゲラは段々、物想いにふけるようになり、暗い日を送るようになる.単調な遊牧生活がいやになって都会の"明るい"生活がして見たくなったのである。仲間の者に対する義務感や、自分の仕事の重要性の自覚、それからマリヤに対する愛情も、彼を押さえることが出来なかった。
 そして新年のある夜、町から来た芸人達が牧夫に色々な面白い出し物を見せた時、遂にゲラは仲間と別れる決心をする。仲間達は、ゲラがマリヤに与えた悔辱を許すことが出来ない。マリヤはもう肉親のようにしたしくなっているので彼等も、その運命に責任を感じている。非難されて激昂したゲラは牧夫達に八つ当たりし、古老マルチヤはゲラを牧場から追い出してしまう。そうするうちに嵐が起こり海は荒れ、羊の群は、恐ろしさのあまり、見さかいもなく羊舎を出て、荒れ狂う浪間に向って突進して行く、牧夫たちは羊を破減の危険から救おうとして羊群の中をかけまわる。そして自然の猛威のためマルチヤは死んで行く。ぼう然と渚に立つ牧夫達のとこヘゲラがかけつける。しかし、彼は逃げ出して行った過去の不心得をとがめられて若者になぐられる。マリヤもさげすんだまなざしで彼を迎える。自分の義務を果さず仲間や仕事をすてたゲラは、今はじめて、自分の間違っていたことをつくづく悟るのであった。

[スタジオ/製作年] グルジアフィルム・1963年製作

[スタッフ]
脚本:メラブ・エリオジシヴィリ
監督:エリダル・シェンゲラヤ
   トマズ・メリアーワ
撮影:ゲオルギー・カラトゾシヴィリ
   レオニード・カラシニコフ
美術:ハ・レバニッゼ
   デ・タカイシヴィリ
作 曲:イ・ゲッシャッゼ

[キャスト]
マリヤ:アリアードナ・シェンゲラーヤ
ゲラ:イメーダ・力ヒアニ
老人マルチャ:スパルタク・バガシヴィリ
パルタ:メラブ・エリオジシヴィリ
運転手:ドドー・アバシッゼ

[ジャンル] 長編劇映画
[サイズ] 35mm / 黒白 / スタンダード / 10巻
[上映時間]
1時間37分
[日本公開年]
 1964/10/27 第2回ソビエト映画祭(東京・有楽町読売ホール 10/30新潟・松竹大竹劇場)にて上映

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パンフレットソヴェート映画史−七つの時代
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