[かいせつ]
1990年カンヌ国際映画祭カメラ・ドール受賞作品
53歳にして長編第一作、遅れてきた映画作家ヴィターリー・カネフスキーの奇跡の傑作。
カネフスキーは長い間この映画のアイディアを温めていたというが、無実の罪で8年間の投獄を経験し、不遇の時を過ごした。才能は無視され、2本の短編映画を演出するに止まった。その不遇の映画のキャリアにもかかわらず、アレクセイ・ゲルマン監督に認められ、映画の製作が開始された。
自身の少年時代の記憶をもとに、カネフスキーの生まれ故郷でもある炭鉱の街が舞台となる。虚無感漂う大人たちの中でもがく少年の研ぎすまされた感性が、痛いまでに鮮明に描き出される。その残酷なまでの美しさと衝撃のラスト。無名の映画作家の突然の登場に世界は驚き、カンヌ国際映画祭ほか各国で賞賛された。
映画の冒頭やラスト・シーンに監督自身の声やスタッフの影を写し込んだショットが挿入され、映画作家の存在が暗示される。
「…完結しない感じがするかもしれない。しかし、これには目的がある。あなた自身が、自分の想像力によって映画を正しく完成するためなのだ。見終わった後、これが1947年についての映画であるばかりでなく、今日についての映画でもあることに、あなたは気づくだろう」とカネフスキーは語っている。
なお、2年後、同じ少年少女を使って続編「ひとりで生きる」が作られた。 |
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[あらすじ] 第2次世界大戦直後の極東ロシア。収容所のある小さな炭坑町スーチャンで暮らす少年ワレルカと少女ガリーヤは共に12歳。恋人がやってくるとワレルカを家から追い出す母に、彼は次第に反発を強めていた。淡い思いを抱くガリーヤが、蚤の市で小遣い稼ぎをしているのを見て、ワレルカは邪魔をするが、結局、しっかりもの彼女に何かと世話になっている。
ある日、学校のトイレの汲み取り口から汚物が溢れかえった。ワレルカが便所の中にイースト菌を入れ、繁殖させたのだ。一方、ガリーヤの助けでワレルカは盗まれたスケートを取り返すことができた。
だが、学校のトイレの件がばれて退学になってしまう。懲りないワレルカは、鉄道に悪戯をし、とうとう機関車が転覆してしまう。刑事が捜査する中、彼は家出し、強盗たちの仲間となって、宝石店強盗を手伝わされる。
突然、ガリーヤがやってくる。彼女はワレルカのまるで守護神のようですらある。二人は強盗たちから逃げ出した。線路の上を歩きながらワレルカは屈託なく歌い、ガリーヤも歌をねだった。
しかし、それもつかの間。歌はと切れ、叫び声と銃声が聞こえる… |
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[スタジオ/製作年] レンフィルム(卜ロイツキー・モスト)・1989年製作 |
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[スタッフ]
脚本・監督:ヴィターリー・カネフスキー
撮影監督:ウラジーミル・プリリャーコフ
製作:アレクセイ・プルチョフ
美術:イーゴリ・パシゴーレフ
音楽:セルゲイ・バネヴィチ
音響:オクサーナ・ストルーギナ
撮影:N・ラズトキン
編集:G・コルニロー
衣装:T・コチェルギナ
T・ミレアント
メイク:G・ヴイドヴィチェンコ
セット・デザイナー:Y・ロチン |
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[キャスト]
ガーリヤ:ディナーラ・ドルカーロワ
ワレルカ:パーヴェル・ナザーロフ
ワレルカの母:エレーナ・ポポワ
その他:ワレリー・イフチェンコ
ヴャチェスラフ・バンブーシェク
ワディム・エルモラーエフ
シミズ・リューイチ |
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