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わが友イワン・ラプシン
МОЙ ДРУГ ИВАН ЛАПШИН
My Friend Ivan Lapshin

[かいせつ]
1986年ロカルノ国際映画祭銅豹賞、FIPRESS1賞
1989年優秀映画鑑賞会推薦

 アレクセイ・ゲルマン監督の長編第3作で、ある港町で殺人鬼を追う刑事とその仲間たちの愛と友情を描くと同時に、これまで光の当てられることのなかった、スターリンによる粛清が始まる直前の1930年代の実相をリアルにもの語って、歴史の空白を埋める画期的作品と評判を呼んだ問題作。
 監督の父で有名な作家ユーリー・ゲルマンの小説「ラプシン」他をモチーフに、舞台をレニングラードから架空の小さな地方都市に移して映画化している。映画では、今は作家となった語り手の子供時代の回想を通して、作家の父たちの世代のことがもの語られる。それは、革命を揺り寵に成長した世代であり、また自分たちが生きているうちに「共産主義国家」という地上の楽園を建設しようと夢みた男たちの時代であり、芸術が、芝居が、人々にとって高い目的を掲げたロマンチシズムに輝いていた時代でもあった。1930年代半ば、国内戦の嵐が過ぎ、スターリンの厳しい粛清が始まる直前のことである。
 ソビエト映画はそれまで、1930年代と言えば、全てバラ色の時代、人々は皆、自信に溢れ、胸を張って社会主義建設にいそしんでいたかの様に描いてきた。が、この映画はそうした偏見をくつがえすことになった。国内では、年半の棚上げの後、先づテレビで公開され、肯定、否定の大きな反響があった。その後、映画として公開されると、エイゼンシュテインやタルコフスキーらの作品と並ぶ歴史的名作として評価され、世界各国でも上映された。
 映画では、黒ワクのキーロフ(スターリンの後継者とみなされていたが、34年レニングラードで暗殺され、後の大粛清のきっかけとなったとされる)のポートレート、スターリンの肖像を掲げた電車などに、35年から36年にかけての時期を象徴させている。まるでドキュメンタリーを思わせる、当時の状況を微細に、極めて正確に再現する徹底したリアリズム。そして、サスペンス、チェーホフ的ドラマ、ラブ・ロマンス、ルポルタージュと幾重にもジャンルを交錯させる独特の語り口によってその時代の現実と人々の生活を鮮やかに甦えらせている。
 さらに、そうしたディティールの積み重ねの中から、詩的な世界が開けてくるところがゲルマン監督作品の真骨頂ともいうべきものである。
 シナリオはニキータ・ミハルコフ監督の「光と影のバラード」(74)、ゲルマン監督の「道中の点検」(71)で知られるエドゥアルド・ヴォロダルスキー。撮影は、ゲルマン監督の「戦争のない20日間」(76)で名コンビを称えられたワレーリー・フェドーソフ。彼もレニングラード派を担う一人で、モスクワの映画大学卒業後、レンフィルムに所属。師のイオナス・グリッユスの助手として、グリゴーリー・コージンッェフ監督の「ハムレット」の撮影に参加している。「わが友イワン・ラプシン」は、入念な撮影は勿論だが、古びた写真の効果を狙うかのように抑えたトーンで、曇り日に撮影されている。
 エキセントリックな女優の役に、マヤコフスキー劇場のニーナ・ルスラーノワ、主人公ラプシンは、やはりマヤコフスキー劇場所属のアンドレイ・ボルトネフ(89年日ソ合作「オーロラの下に」に主演)、30年代のインテリゲンチャの苦悩を具現したハーニンには人気喜劇俳優、故アンドレイ・ミローノフが扮している。

[あらすじ]
 1930年代半ば頃のロシアの貧しい地方都市ウンチャンスク。物語は当時、まだ小学生だった作家の回想で綴られてゆく。
 この田舎町の官舎のぼろアパートに、作家は刑事の父と一緒に住んでいる。その同じアパートに、作家の父と同じ刑事捜査局の、穏やかで控えめな性格だが、精桿で悪には容赦しない刑事イワン・ラプシン、そして、ちょっとネクラの刑事オコーシキンが住んでいた。町ではその頃、ソロビヨフという殺人鬼が出没し、たびたび殺人事件を引き起こして人々を震え上がらせていた。ラプシンとその仲間は何とかして彼を捕らえようと必死だった。
 そんな折、ラプシンは、この町の劇団の女優ナターシャと知り合った。彼女は、役作りのために本物の売春婦の話が聞きたいと言って署にラプシンを訪ねて来た。ラプシンはナターシャに、取り調べ中の札つきの売春婦を紹介する。
 やがて、ラプシンはナターシャに魅かれるようになる。だが、ナターシャが心を寄せていたのは実は、ラプシンの友人で、ごく最近、病気で妻を失くしたばかりのジャーナリストのハーニンだった。
 やがて、冬が明けて春、いよいよ殺人鬼ソロビヨフ一味の一斉逮捕の日が来た。ラプシンの仲間たちが警戒していたにもかかわらず、取材と称して無理やり同行していたハーニンは、素手でソロビヨフと渡り合って重傷を負ってしまう。しかし、何とかソロビヨフを逮捕することはできた。
 それから数か月、ようやく傷が癒えたハーニンはモスクワへ向けて旅立って行く。港には、ラプシンとナターシャだけがとり残された…
 それから半世紀、町にはかって作家の父たちの世代が地上の楽園を夢見て駆け巡った日々の面影はない。

[スタジオ/製作年] レンフィルム・1984年製作
              "LENFlLM"STUDIO

[スタッフ]
原作:ユーリー・ゲルマン
脚本:エドゥアルド・ヴォロダルスキー
監督:アレクセイ・ゲルマン
撮影:ワレーリー・フェドーソフ
美術:ユーリー・プガチ
音楽:アルカジー・ガグラシヴィリ
Screenplay by : Eduard VOLODARSKY
Directed by : Aleksei GERMAN
Director of Photography : Valery FEDOSOV
Art Director : Yury PUGACHl
Music by : Arkady GAGULASHIVILI

[キャスト]
ラプシン:アンドレイ・ボルトネフ
ナターシャ:二ーナ・ルスラーノワ
ハーニン:アンドレイ・ミローノフ
オコーシキン:アレクセイ・ジヤルコフ
ザナドヴォーロフ(父):アレクサンドル・フィリッペンコ
パトリケーヴナ:ジナイーダ・アダモーヴィチ
Lapshin : Andrei BOLTNEV
Natasha : Mina RUSLANOVA
Khanin : Andrei MIRONOV
Okoshkin : Aleksei ZHARKOV
Zanadvorov : Aleksandr FILIPPENKO
Patrikeevna : Zinaida ADAMOVICH

[ジャンル] 長編劇映画
[サイズ] 35mm / スタンダード / カラー
[上映時間] 1時間38分
[日本公開年・配給] 1989/3/25・日本海映画+ニワフイルム
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