[かいせつ]
1972年カンヌ映画祭審査員特別賞
国際エヴァンジェリー映画センター賞
この作品は、スタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」(1968)と比肩されるSF映画の傑作で、アンドレ・タルコフスキー監督の名を不朽のものにした。ポーランドのSF作家スタニスラフ・レムのベストセラー長篇「ソラリスの陽のもとに」の映画化であるが、"未知なるもの"と遭遇して極限状況に置かれた人間の内面に光をあて、「愛」と「良心」をめぐる道徳・哲学的な問題を提起。深い洞察と独得の映画表現によって、映像による思弁ともいうべきタルコフスキーの世界を構築している。そして、これまでのSF映画に見られない新たな地平を拓いた画期的作品として、多くのファンを今なお魅了し続けているのである。
ヒロインのハリーは、これが初の主演作となったナタリヤ・ボンダルチュクが好演、国際的名声を得た。クリスにドナータス・バニオニス(「ゴヤ」1972他出演)、他にユーリー・ヤルベット(「リア王」1971他)、タルコフスキー作品の常連のアナトーリー・ソロニーツイン等ベテランが主演、この重厚なドラマを支えている。
日本では1977年4月、岩波ホールにてロードショー公開され、さらに翌1978年7月より銀座・日劇文化で2ヶ月に渡って続映され、ソビエト映画の興行の困難な時代にあって、エッポックメークな事件となった。
なお、原作にはない"地上のプロローグ"の未来都市のシーンは東京で撮影され、1972年夏、タルコフスキー監督はロケ撮影のため来日した。東洋哲学わけても日本の中世思想に共感を示したタルコフスキーだが、この来日が最初にして最後となってしまった。 |
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[あらすじ]
映画はプロローグ(地上の現実)とエピローグ(惑星での未来)を持つ2部作。
惑星ソラリス、それは宇宙のかなたの謎の星で、生物は存在は確認されないが、理性を持った有機体と推測されるプラズマ状の"海"によって被われていた。世界中の科学者達の注目が集まり、"海"と接触しようとする試みが幾度か繰り返されたが、いずれも失敗に終った。そして、ソラリスの軌道上にある観測ステーションは原因不明の混乱に陥ってしまっていた。
心理学者クリスが原因究明と打開のために送られることになった。美しい緑に囲まれた我が家を後に宇宙ステーションヘと飛び立つクリス…。
しかし彼を待っていたのは異常な静寂と恐しい程の荒廃だった。物理学者ギバリャンは謎の自殺を遂げ、残った二人の科学者も何者かに怯えている。そんなある日、突然クリスの前に、すでに10年前に自殺した妻ハリーが現われた。
彼女はソラリスの"海"が送ってよこした幻だった。"海"は人間の潜在意識を探り出してそれを実体化していたのである。妻の自殺に悔恨の思いを抱いていたクリスは、遂には幻のハリーを愛するようになるが、科学者としての使命感と個人的な良心との相剋に悩まされる… |
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[スタジオ/製作年] モスフィルム・1972年製作 |
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[スタッフ]
原作:スタニスラフ・レム「ソラリスの陽のもとに」
脚本:アンドレイ・タルコフスキ
フリードリヒ・ガレンシュテイン
監督:アンドレイ・タルコフスキー
撮影:ワジーム・ユーソフ
美術:ミハイル・ロマージン
音楽:エドゥアルド・アルテミエフ |
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[キャスト]
ハリー:ナタリア・ボンダルチュク
クリス:ドナタス・バニオニス
スナウト:ユーリー・ヤルヴェト
アンリ・パートン:ウラジスラフ・ドヴォルジェツキー
サルトリウス:アナトーリー・ソロニーツィン
クサスの父:ニコライ・グリニコ |
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[ジャンル] 長編劇映画
[サイズ] 35mm / シネマスコープ / カラー / 全17巻
[上映時間] 2時間45分/2部作
[日本公開年・配給] 1977/4/29(岩波ホール)・日本海映画
[VIDEO・DVDなど] VIDEO=IVCB-7010, DVD=IVCF-20 RCCF-1001アイ・ヴィー・シー |