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翌日戦争が始まった
ЗАВТРА БЫЛА ВОЙНА
TOMORROW THERE CAME WAR

[かいせつ]
 ユーリー・カラ監督は1954年生れ。エンジニアとして実社会に出た後、モスクワの全ソ国立映画大学に入りなおし、監督科でセルゲイ・ゲラーシモフ監督の指導を受けた。在学中に製作した、アレクサンドル・ゲリマンの戯曲に基ずく短篇映画「ベンチの二人」は全ソ新人映画祭で受賞している。
 スターリン体制下の青春を描く「翌日戦争が始まった」は著名な現代作家ボリス・ワシーリエフの同名小説の映画化で当初、短篇の習作映画の予定だったが、ゴーリキースタジオの特別の許可を得て、長篇の卒業制作として完成したもので、87年マンハイム国際映画祭審査員特別賞他を受賞したのをはじめ、第2回東京国際映画祭ヤング・シネマ参加作品でもある。
 長篇第二作はファジーリ・イスカンデル原作による「合法的泥棒たち」(88)、プレジネフ体制下のウズベキスタンを舞台にしたマフイアをめぐる実話を題材にした娯楽作品である。

 知的で生真面目で心優しいイスクラ、気立ての良い、ちよっとミーハー的なジーナ、控えめで利口そうな美少女ヴィーカの二人のヒロインが16歳の春を迎えたのは、独ソ戦前夜の1940年、折りしもスターリン体制下の重苦しい時代である。映画は大人たちの偽善と偏見に抗し、自らの信念を貫いて生きようとする主人公たちの学園生活を描く爽やかな青春物語だが、物語のタテ糸となるヴィーカの父の逮捕から、ヴィーカが自殺においやられるまでの悲劇はサスペンスタッチで描かれ、しのびよる暗い影を彷彿させる。無実の市民たちの突然の運行、密告といった、当時の人々が体験した、 しかし、これまで正面きって描かれることのなかった粛清の実態がうかがえるこの映画は、ソ運市民にさまざまな反響を呼び、ソビエトの映画雑誌「スクリーン」の人気投票では、87年ベストテン第2位に選ばれた。
 ユーリー・カラ監督は、スターリンが死んだ翌年の1954年生れ、物語の背景となった時代とは無縁だが、「この映画では、30〜40年代に青春を迎えた人々の気持を代弁したかった。なぜならば、その多くは戦死したために、また、生き残った人々は恐怖政治で身についた悲しい性のために自分自身を語ることをしないから」と言っている。

 二人の若きヒロイン、イスクラ役のイリーナ・チェルニチェンコはワフタンゴフ劇場附属演劇学校在学中で、映画出演は4度目。ジーナ役のナターリヤ・ネゴタはモスクワ芸術座付属演劇学校出身で青少年劇場所属、これがデビュー作。ヴィーカ役のユーリヤ・タルホワは全ソ国立映画大学俳優科出身でやはり映画初出演。主役の少年少女を演じる新人たちの鮮々しい演技と、大人たちの役を名優で固めた俳優アンサンブルもこの映画の成功の鍵を握っている。校長役のセルゲイ・ニコネンコは、20年間に50の役をこなしたという名脇役で監督でもある。教条主義的で冷たい女教師を演じるヴューラ・アレントワは、「モスクワは涙を信じない」で国際的にも名を知られる女優。リュベレツキー役のウラジーミル・ザマンスキーは、「道中の点検」に主演したベテランである。
*「ソビエト・シネマ・フェア'88」パンフレットより転載

[あらすじ]
1940年、ある地方都市の学校。9年B組の仲間たちは、16歳の少年少女がいつの時代もそうであるように、夢を語り、けんかをし、恋をし、青春のまっ只中にあった。一方、ヒットラーは既にヨ―ロッパ中に魔の手を延ばしていたし、国内では、スターリンによる厳しい粛清が人々の相互不信を募らせていた。
 ある日、アルテムの誕生祝いにクラスメートが寄り集った席で、ヴィーカが美しい詩を朗読して、詩とはおよそ縁遠い腕白たちを感動させた。それは、退廃的であるとして当時禁止されていたエセーニンの詩だった。
 これを知った担任の女教師は、コムソモール副書記のイスクラを呼び出して、厳しく咎めた。"ワレンドラ″と云うあだ名のこの教師は生徒には命令のみ下して厳重に管理すれば事足れりとする考えの持主で、日頃、新任の、温厚なロマーヒン校長とも事あるごとに対立していた。イスクラはヴィーカをかばってワレンドラに反駁する。イスクラはちょっとおっちょこちょいで茶目っ気のあるジ―ナを伴って、次に呼び出されるに違いないヴィーカの家に急いだ。
 ヴィーカの父リュベレツキー氏は、有能な航空技師で、生前のマヤコフスキーと親交があったという程の、文学にも造詣が深い人だった。父娘二人きりの家庭だったが、ヴィーカは父親の暖かい愛情に包まれて幸せそうだった。リュベレツキー氏は少女たちに非はない、と言って、かえってイスクラたちをなぐさめた。
 それからしばらくしたある夜、リュベレツキー氏が"人民の敵"として運行される。つづいて、ヴィーカが親子の縁を切るよう、ワレンドラから強要される。拒んだヴィーカをさらに追い詰めるワレンドラ。耐えかねてヴィーカは自ら、命を絶つ。
 ワレンドラは生徒たちに、ヴィーカの葬儀への出席を禁止する。イスクラの母も、親友を失って悲しむ娘を、葬儀に出席させまいとする。国内戦を経験した筋金入りの党員で政治委員の仕事に忙殺されている厳格な母親である。
 だが、ヴィーカの野辺の送りにはクラスメート全員が集まつた。心のこもった弔辞を読み上げるイスクラ、ヴィーカとの淡い思い出を胸に傷心のランディス、学校からただ一人参列したロマーヒン校長。…やがて校長は職を追われ、党籍もはく奪される。
 そして来年こそは良い年になると信じたジーナの願いもむなしく、明けて41年、独ソ戦が始まったのである。

[スタジオ/製作年] ゴーリキー・スタジオ1987年製作

[スタッフ]
原作・脚本:ポリス・ワシーリエフ
監督:ユーリー・力ラ
撮影:ワジーム・セミョーノヴィフ
美術:アナトーリー・コチュロフ
PRODUCTION : GORKY STUDIOS
SCREENPLAY AND BASED ON A NOVEL BY : BORIS VASILEY
DIRECTED BY : YURY KARA
DIRECTOR OF PHOTOGRAPHY : VADIM SEMYONOVYKH
ART DIRECTOR : ANATOLY KOCHUROV

[キャスト]
校長:セルゲイ・ニコネンコ
イスクラの母:ニーナ・ルスラーノワ
ワレンドラ:ヴェーラ・アレントワ
リュペレツキー:ウラジーミル・ザマンスキー
イスクラ:イリーナ・チェルニチェンコ
ジーナ:ナターリア・ネコダ
ヴィーカ:ユーリヤ・タルホワ
PRINCIPAL : SERGEI NIKONENKO
ISKRA'S MOTHER : NINA RUSLANOVA
VALENDRA : VERA ALENTOVA
LYUBERETSKY : VLADIMIR ZAMANSKY
ISKRA : IRINA CHERNICHENKO
ZINA : NATALYA NEGODA
VIKA : YULIYA TARKHOVA

[ジャンル] 長編劇映画
[サイズ] 35mm / カラー / スタンダード
[上映時間]
1時間26分
[日本公開年・配給]
 1987 第2回東京国際映画祭ヤングシネマ・コンペシション
              1988/10/22 ・日本海

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パンフレットソヴェート映画史−七つの時代
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