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雪の女王
СНЕЖНАЯ КОРОЛЕВА

[かいせつ]
'57ヴェネチア国際映画祭第1賞
'58ロンドン国際映画祭長編映画ベストテン

 デンマークが生んだ有名な童話作家アンデルセン原作のアニメ化。1950年代のソビエト・アニメ黄金期の代表的作品で、原作の持つ優雅で格調高い雰囲気を損なわず、それでいてダイナミックでメリハリのあるストーリ展開、魔術的ともいえる色彩と表現力に富む描写は、ディズニー作品にも比肩しうるほど。
 監督のレフ・アタマーノフ(1905〜81)は、「せむしの仔馬」のI・イワノフ=ワノらとともにソビエト・アニメの基礎を築いた巨匠。アルメニア出身で、初め俳優を志すが、31年にアニメの監督としてデビュー。代表作は50年代に発表した一連の童話アニメで、中でもインドの伝説をモチーフにした「黄金のかもしか」(54、カンヌ映画祭特別賞他)と「雪の女王」は、このジャンルの作品作法の手本となった。
 60−70年代にヒット作を連発した人気アニメーター、フョードル・ヒートルークが、構成、キャラクターの振り付けを担当しているのも話題のひとつ。

雪の女王
−運命に立ち向かうヒロイン−
おかだえみこ
(アニメーション研究家)
 おそらく私は日本でもっとも古い旧ソビエトアニメファンの一人だろう。『せむしの仔馬』(1947)はもちろん、『灰色くびの野鴨』『七色の花』などの短編は忘れられないが、『雪の女王』(57)はまさに〔雪解け時代〕の象徴的作品だった。かわいい主役たち、女王の冷たい気品、息詰まる吹雪の動画。構成その他に若き日のフョードル・ヒートルークの大活躍があったことは今回知った。それほどソビエトアニメの情報や資料は少ないのである。60年代はそのヒートルークの都会的短編群、70年代はユーリー・ノルシュテインの詩的作品集、80年代はラトビア、エストニアなど民族共和国作家たちとエドワルド・ナザロフやガリ・バルディンの時代……それぞれに魅力があるが、日本のアニメに強烈な影響を与えた作品は何と言っても『雪の女王』なのだ。
 〈1963年に、ぼくは東映動画の新人アニメーターになっていたが、仕事はおもしろくなかった。(中略)労働組合主催の映画会で『雪の女王』に会わなければ、アニメーションを続けたかどうか疑わしい。『雪の女王』は、絵を動かす作業にどれほど愛惜の念が込められるか、絵の動きがどれほど演技に昇華し得るかを立証していた。ひたむきに純粋に、素朴に強く、貫く想いを描く時、アニメーションは他のジャンルの最高の作品達に少しも負けずに、人の心を打つのだと証明していた>宮崎駿「日本のアニメーションについて」(「日本映画の現在」岩波書店・1988より)そして、腰をすえてこの仕事を続けようと覚悟を決めた、と宮崎駿は回想している。
 彼の言う通り、この作品には従来のアニメに見られない微妙な表情や、よりリアルな演技表現への試みがある。そして何より、彼が指摘する長編アニメ史上最初の〔貫く想い〕、すなわち〔運命と戦い、その意志を貫き通す主役〕の登場。この作品以前の長編アニメを調べて見れば、おとなしくて、脇役に食われがちな主役の多さに驚かれるはずだ。しかも、主役は少女。氷の宮殿に連れ去られた少年を捜し求める彼女のひたむきな旅路と愛の勝利は、東映動画の新人たちをどれほど感動させたことだろう。従来のアニメの内容や演技に飽きたらなかった彼等の前に、この時、輝く〔目標〕が出現したのだ。
 高畑勲もやはりこの作品に感動したようだ。苦闘の長編『太陽の王子・ホルスの大冒険』(68)は〔冬の魔王との戦い〕が大雪原に展開し、〔二つの心を持つ主役〕が登場する。テレビアニメの傑作『母をたずねて三千里』(76)も、母を探す少年が、行く先々の人情に支えられてたどる苦難と感動の旅路は『雪の女王』に誘発されて生まれたものであろう。 毅然としたゲルダに劣らず、彼女の勇気に心打たれる屈折少女〔山賊の娘〕は新鮮だった。捕らえた兎や狐を全部解放して泣き崩れる彼女に、自由を得た動物たちがそっと体を寄せて来る場面は、何度見ても心ゆすられる。やさしく健気なゲルダと、戦闘的で孤独な山賊娘。彼女たちは後の宮崎アニメヒロインの原型となった。ゲルダ型は『未来少年コナン』(78)のウナ、『天空の城ラピュタ』(86)のシータに。山賊娘は『どうぶつ宝島』(東映動画'71)の海賊娘キャシーを経て『コナン』のモンスリイ、『風の谷のナウシカ』(84)の女将軍クシャナに。史上最強の少女ナウシカ自身、ゲルダ型と山賊娘型の折衷ヒロインだ(山賊の首領の老婆にもご注目を。『ラピュタ』の女海賊ドーラの原型と思われる)。さらに、ゲルダとカイの帰りの道中、出会った人々や動物たちが次々に二人を送って行くフィナーレの暖かな心くばり……『三千里』終章はまさにこの精神だったし、宮崎アニメ得意のラストタイトルを使う物語フォローの配慮も、ここに学んでいる。『雪の女王』はアニメ史の金字塔であると同時に、高畑勲と宮崎駿に大きな影響を与え、日本のアニメ史を書き替える力となった、知られざる傑作なのである

[「ソビエト映画の全貌91」増補版より転載]

[あらすじ]
 北の国にある古い小さな町。カイ少年と少女ケルダは人の仲良し。"いつまでも仲良くね"と誓い合う。…長い冬が訪れた。ある日のこと、"雪の女王を熱いストーブで溶かしてやる"と言ったため、女王は怒り、自分の氷の宮殿にカイをさらってしまった。
 春になってもカイは戻って来ない。勇敢なゲルダはカイを探しにひとり、出発する。野を行き山を越え、北へ北へと進むゲルダ。彼女は途中、山賊に襲われ、危ういところを山賊の娘に助けられる。ゲルダの身の、上話に同情した、この娘や動物たちに助けられ、さらに遠くラップランドヘと旅を続けるゲルダ。度重なる危機を乗り越えたゲルダは遂に、雪の女王の氷の宮殿に辿り着く。ゲルダの、熱い涙と友情は、凍りきったカイの心を溶かした。カイは、元の優しい少年にかえった。そして、雪の女王は姿を消し、ふたりは抱き合って喜ぶのだった。

[スタジオ/製作年] 連邦動画スタジオ・1957年製作

[スタッフ]
原作:ハンス・アンデルセン
脚本:G・グレブネル
    レフ・アタマーノフ
監督:レフ・アタマーノフ
美術:A・ヴィノクーロフ
    I・シワルツマン

[ジャンル] 長編アニメーション
[サイズ] 35mm / スタンダード / カラー
[上映時間] 63分
[VIDEO・DVDなど] VIDEO=IVCV-50001【日本語吹替版】 ビームエンタテインメント 発売日:1997/12/16
DVD=
IVCF-32【日本語吹替版】 ビームエンタテインメント 発売日:1998/10/25

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