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無断転載を禁ず 「惑星ソラリス」パンフレット(1977年6月18日発行)より転載

ったが……。」
バートン「彼はあたしを見たとき,逃
げ出そうとしたな」
● ケルヴィン家の前
 庭に立っている隣家の少女に近づ
くディーク.
ディーク「こんにちわ」
少女「こんにちわ」
ケルヴィン家の一階の部屋
 父親が,庭に面した戸日に立って
いる.
バートン「今日はお邪魔しない方が
よかったようだな」
「(部屋の中に入って)お互い年を
とったね!いまやっと気づいたよ.
いや.何もあんたが悪いんじゃない」
バートン「すべてはステーションか
らの,クリスの第一報にかかってい
ることを,彼はよく分っていますよ.
乗組員はずっと,わけのわからない
とんちんかんなデータを送ってきて
いるんだ。もし彼が,何らかの原因
で研究続行が困難だと確認すれば,
ステーションはソラリスの軌道から
外されるかもしれない」
「あいつは,それを分っているよ」
バートン「あなたが息子さんと話を
しようと言われたんですよ.わたし
はビデオ・テープを持ってきまし
た。そのためにわざわざやって来た
んですよ」
「それはそうだ!」
バートン「子供を2,3日預かっても
らえませんか? わたしは仕事が忙
がしいし,家には誰もいないもんで」
「アンナに面倒見させよう。彼女
も暇になるから(と戸日から庭に出
る)」
バートン「彼は何時に発つんですか」
「(庭から窓ごしに)明朝はもうこ
こにはいないだろうな」
バートン「ここはいいな!」
「(戸日にもどって)この家はあた
しの祖父さんの家に似てるんだ。あ
の家がとても気に入ってたから,お
袋と二人で同じような家を建てるこ
とに決めてね.わたしは新式は好き
じゃないんだな」
 雨.
● 
 雨の中を犬を連れたディークと隣
家の少女が,高い道路の影に走り出
す。
少女「(犬に)メタン!おいで!」
● ベランダ
 雨の中にクリスが立っている.ク
リスは降りしきる雨に首をすくめな
がら,椅子にかける.雷鳴.
● 
 雨がやみ,木立の滴が池に落ちる。

● ケルヴィンの部屋(二階)
 クリス,濡れた頭をタオルで拭
う.
「(出日の方へ向かいながら)じ
ゃ,わたしは行くとしようか。まだ
仕事が一杯あるから」
クリス「ここにいてくれるんじゃな
いんですか?」
 クリスの伯母アンナが腰かけ,ビ
デオのプラウン管を見ている。ブラ
ウン管に,若い頃のパートンの姿が
映る.ビデオから声が聞こえる。
「これはもう何回も見たから…
…」
● プラウン管(大理石のホール)
 大ぜいの科学者たち.その中に探
検隊々長チモリスがいる。
チモリス「我々探険隊が,上陸後21
日目に,生物学者ヴィンニャコフと
物理学者フェフナーがエア・クッシ
ョンで進む滑走艇でソラリスの海上
の調査飛行を行いました.ところが
16時間経過しても帰隊しないため,
我々は非常警報を発せざるを得なく
なりました」
● プラウン管(ガラス張リホール)
 科学者たち.そのうちの一人,ト
ラヒエが時計を見る。
チモリスの声「だが,霧が濃くなっ
てきたので,捜索はやむを得ず打ち
切られました」
● プラウン管(大理石のホール)
チモリス「そして救援機は全部ステ
ーションに帰還したが,アンリ・バ
―トンが乗った貨物用のヘリコプタ
ーだけが戻らなかったのです」
● ケルヴィンの部
 バートン,クリス,アンナが椅子に
かけ,じっとブラウン管を見ている.
チモリスの声「バートンは暗くなっ
て1時間後に戻ってきました。ヘリ
コプターから下りるや,彼は逃げる
ように走り出しました。神経にショ
ックを受けていたのです」
● プラウン管(大理石のホール)
チモリス「11年の宇宙旅行のキャリ
アを持ち,ときには非常に困難な条
件に直面したこともある男にとって
も,それは驚くべきことだったので
す.二日後,パートンは良くなった
が,しかしそれ以後一度も宇宙ステ
ーションから出ようとせず,海が見
える窓にも,近づかないようにして
いました.その後,彼は療養所から
の手紙で,非常に重要なこと,おそ
らくソラリス研究の運命を決するで
あろう事柄について述べた声明を出
すつもりであると言ってきたので
す」
● プラウン管(ガラス張リホール)
トラヒエ「(椅子にかけて)よろし
い.バートンに一部始終を話させま
しょう。それじゃ,話してもらいま
しょうか」
● プラウン管(会議室)
 バートン立ち上がる.
● ケルヴィンの部屋
 立ち上がり,壁に近づき,肘で壁
に寄りかかるパートン.
バートンの声「わたしが初めて300
メートル降下したとき,風が吹き上
げてきて,高度を保つことが難しく
なりました」
● ブラウン管(会議室)
バートン「操縦に全神経を集中しな
ければならなかったので,暫くの
閲,窓から外を見れなかったのです」
● ケルヴィンの部屋
 ブラウン管を見つめるアンナ.
バートンの声「そのため,そんなつ
もりはなかったんですが霧の中に入
り込んでしまったんです」
● ブラウン管(会議室)
 机を前にして立っているパート
ン.
学者の声「それはごく普通の霧で
すか?」
バートン「もちろん,違います.普
通の霧ではなく,コロイド状の,と
てもねばねばした混合物のようなも
のです.それが窓のガラスをすっか
り蔽ってしまいました.この霧によ
る抵抗のためにプロペラの回転が落
ちて,高度が下がり始めました。大
陽は見えませんでしたが,その方角
は霧が赤く輝やいていました。30分
後,わたしはやっと霧の切れ日に脱
け出ることができました。それは直
径が数百メートルもある,ほぼ円筒
のようなものでした。その瞬閲,わ
たしは,海の状態が変化し始めてい
るのに気づいたんです.波は全く消
え去り,濁りもありましたが,表面
は殆ど透明になりました。海の底に
は黄色い泥が集まっていて,それは
細く帯状に浮き上がり,浮き上がる
とガラスのように輝やき始めまし
た。やがてそれはたぎりだし,泡立
ち,凝固しました。まるで煮つめた
砂糖のシロップのようでした.その
泥,というか粘液は集まって,大き
な塊となり,だんだんとさまざまな
形を作っていきました。わたしは霧
の方へ引き寄せられ,暫くの間はヘ
リコプターを元の位置に引き戻すの
に必死でした」
● ケルヴィンの部屋
 ブラウン管を見つめるクリス.
バートンの声「わたしが再び下を見
たとき,わたしは公園のような光景
を見ました」
クリス「(バートンに向かって)公
園だって?」
 バートンが顔でブラウン管を指
す。

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