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無断転載を禁ず -P22- 「惑星ソラリス」パンフレット(1977年6月18日発行)より転載

● 馬のいるガレージ
アンナ「やさしい馬よ,ごらんなさ
い。きれいでしょう?」
● 
 クリスとバートン,ガレージの傍
には,ディークを連れたアンナがい
る。
クリス「あたしの言うことを理解し
て下さい.ソラリス研究は無責任な
空想の結果,行き詰まってしまった
ように思います.わたしは真実が知
りたいんです。(木造の小屋の方へ
行きながら)だがあなたはわたしに
先入観を与えて味方にしようとして
いる.(階段を上り)わたしには激
情に駆られて決定を下す資格はあり
ません.わたしは詩人ではないし,
非常に具体的な目的を持っているん
です.ソラリス研究が行き詰まって
危機に瀕していることを認めて研究
を打切り,ステーションを軌道から
外してしまうべきか,(立ち止まり,
振り返って)非常手段を取るべきか,
を決めねばならないのです。海に強
い放射線をかけることもあり得ま
す」
 池の方へ歩くバートン.
バートン「それだけは,やめるべき
だ!」
クリス「どうしてです? あなた自
身どんな犠牲を払っても研究を続け
るよう提案したじゃないですか!」
バートン「何を言うんだ,まだ我々
が理解できてないものを消滅させた
いんですか? 失礼だが,どんな犠
牲を払っても認識しようというのは
賛成できませんよ.認識は道徳的で
ある場合にのみ真実なんだ……」
クリス「(階段を上り乍ら)学問を道
徳的にするのも非道徳にするのも人
間です.広島を思い出して下さい」
バートン「ですから(池の縁に立ち)
学問を非道徳的なものにしないこと
だ.不思議だ!」
クリス「(階段の最上階でこちらを
向き,肩をすばめ,腰を下ろして)
不思議だって? 不思議なことは何
もないでしょ? あそこであなたが
見たものは,すべて幻覚ではないと,
あなた自身も信じきれないんですか
ら.わたしには分りますよ」
● 
 さっときびすを返し,家の方へ歩
き出すバートン.途中でこちらに来
るクリスの父とすれちがう。
バートン「ありがとう! ずいぶん
おしゃべりしたな!」
「(立ち止まり)どうしたんだ?」
バートン「帰るよ!」
「どこへ?」
バートン「クリスは会計係で,学者
ではない! あんたが言ったとおり
だ!」
「(バートンの方を振り返り)親友
とはいえ,そんな風に言うことはあ
るまい。!」
バートン「結構だ.もう20年のつき
あいだがな.それもいつかは終わる
んだ!」
「(叫んで)子供はおいていくの
か!(クリスに近寄り)何でバート
ンを怒らせた? 言っておくが,お
まえは厳しすぎるんだ! おまえの
ような人間を宇宙に送るのは危険だ
な.あそこでは何もかもが非常に脆
くなるんだ! そうだ! 本当に脆
くなるんだ! 地球ではおまえのよ
うな人間でもどうにかなってるが,
それだって大変な犠牲が払われてる
んだ.(池面を見つめながら)……お
まえはわたしを葬ってくれるのが,
おまえでなくてバートンだというの
で,嫉いてるのか?」
● ケルヴィンの部屋
 椅子にかけたアンナがテレビを見
ている.
アナウンサー「……こうしてソラリ
スの海は独特な頭脳であることが判
明しました.そこで初めて思い切っ
た仮説が打ちたてられましたが」
 クリスの父が入って来てアンナの
横に腰かける.
アナウンサー「……それによると,
海は思考力を持った実体であると考
えられています。そしてこの仮説が
たてられて,もう何年にもなります
が,これを確証する論拠も,反駁す
る論拠もないのであります」
アンナ「ソラリスについての放送ね」
 テレビ放送を椅子にかけて見てい
るアンナの後姿.
● プラウン管(ステーション全景)
アナウンサーの声「その仮説を信じ
る側の人も僅かになりました.先鋒
はソラリスの軌道ステーションと運
命をともにしている人たちです.85
人乗りのこの巨大なステーションで
いま働いているのは3人です。(ブ
ラウン管にその3人のポートレート
を次々と映し)天体生物学者サルト
リウスと,サイパネティックス学者
スナウトであり,物理学者のギバリ
ャンはステーションで相対性理論に
取り組んでいます……」
 ブラウン管にバートンが映り,テ
レビ電話が入る。
バートン「町から電話してます」
● ケルヴィンの部屋
 ブラウン管を見ているアンナと父.
アンナ「バートン!」
「アンナ,ちょっと席を外してく
れないか?僕らは話がしたいので」
● 町を走る車中
 バートンとディークが乗っている.
バートン「わたしはクリスとは別の
ことを話して,一番重要なことを言
わなかった。あの会議で特別意見を
述べたメッセンジャー教授のことな
のだが,教授はソフリスの海で亡く
なったフェフナーに興味を持ってい
た.フェフナーが息子を置きざりに
して家庭を棄てていた事実もわかっ
た.わたしも教授と未亡人を訪ねて
みた。そして自分で……」
● ケルヴィンの部屋
 バートンに聞き入るアンナ.入口
にクリスが立っている.
バートン「子供にも会ったんだ」
「そのことは,わたしに話さなか
ったね?」
バートン「チャンスがなかったんで」
「いいだろう。で,どうなったん
だ?」
バートン「それが,その赤ん坊が,
あのときわたしがソラリスで見た赤
ん坊とそっくりなんだ。勿論,4メ
ートルはなかった。いま出発をひか
えて,彼がこのことをあまり深く考
えるには及ばないが……」
● 
 車,トンネルに入る。
バートン「だが,向こうに行ったら
思い出すといい」
● 車中
 考え込みながら,ハンドルにかが
みこむバートン.
● 
 トンネルを行く車の流れ.バート
ンとディークの車が走り去る。トン
ネルと高架橋を走る車の群れ.
● 車中
 疲れたディークがバートンにもた
れかかる。
● 
 トンネルを走る車の流れ.
● (夕暮)
 道路と高架橋を走る事の流れ.
● (夕暮)
 走り去る車のライトの洪水.

● (夕暮)
 家の前で焚火をするクリス.父が
彼に近寄って来る.犬を連れたアン
ナもクリスに歩み寄る.クリス,書
類を火に投げ入れている.傍を通り
過ぎて池に向かう父.
クリス「これは要らない書類です.
取っておくべきものは自分の部屋に
ありますから.(書類を火に投げ入
れながら)学位論文や研究論文は残
しておきました」
「(火に近づきながら)もし何か起
こったら,それをよく検討してもら
おう。何か考えつくだろう」
クリス「あのフィルムは持って行き
ますから,探がさないように.あれ

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