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無断転載を禁ず -P27- 「惑星ソラリス」パンフレット(1977年6月18日発行)より転載

クリス「別に何も……」
スナウト「(電話で)サルトリウスが
実験室に来るように言ってるんだ.
どうかね?」
クリス「いいでしょう.結構です.
行ってみましょう」
 ハリー,ベッドに起き上がって泣
きながら,腕の血を拭う.
ハリー「クリス,あたし,どうした
の?ひょっとすると癲癇じゃない
かしら?」
 クリスに,後ろからすがりつくハ
リー.海が見える窓に眼をやるクリ
ス.




● 実験室
 クリスを待っているスナウトとサ
ルトリウスが,実験室から廊下に出
る.
● 二階の廊下(実験室の前)
 クリスと,紐を持ったハリー,現
われる.
クリス「(二人に)わたしの妻です」
ハリー「こんにちわ」
スナウト「(ハリーと握手しながら)
こんにちわ」
サルトリウス「(ハリーを無視して
クリスに)お待ちしてました!」
クリス「今,やっと暇になりました」
ハリー「(飾ってあった子供の写真
を見乍ら)まあ,可愛い! あなた
の?」
サルトリウス「(カーテンを引いて
写真を被い隠し)いいえ,スナウト
に)」
ハリー「ああそう」
サルトリウス「……そういうわけで
す.判明した限りでは,それらは作
られたものだ!」
スナウト「それを簡単に<客>と呼
ぶことにしましょう」
サルトリウス「結構ですな.原子か
ら成り立っている我々と違って,彼
らはニュートリノから成っている」
スナウト「だがニュートリノ系では
不安定ですがね」
サルトリウス「あたしはソラリスの
カの場がそれを安定させていると考
えます.(ハリーの手から紐を取り
上げ,クリスに向かって)あなたに
も,ここに立派な見本があります!」
クリス「これはわたしの妻だ!」
サルトリウス「結構ですな,素晴ら
しい。まあ,奥さんの血液分析をや
ってご覧なさい」
クリス「何のために?」
サルトリウス「そうすれば,君も少
しは迷いから醒めるだろう.(スナ
ウトに)君はどう考えるかね?」
スナウト「君たちの好きなように!」
● 実験室
 椅子に掛けたハリーから血液を取
るクリス.
● 廊下
 実験室から出るハリーとクリス.
クリス「わたしは血液を酸で焼いて
みたが,血液はもとどおりになるん
だ!」
サルトリウス「組織再生ですね?
どうなんですか? 本質的には不滅
ということは――これはファウスト
の問題だな」
サルトリウス「(ハリーの腕にあて
がってあった綿を取り)失礼.綿は
必要ないですな.(クリスに)あな
たは本格的に解剖をやりますか?」
クリス「妻だと申したじゃないです
か。分らないんですか?」
サルトリウス「この実験は地球でや
るモルモットの実験よりもヒューマ
ニスティックです。そう思いません
か ?」
クリス「どっちみち,自分の足を鋸
で切り取るようなもんですよ.(後
から近寄ってきたハリーに)ドアに
ぶつかって切ったとき,痛くなかっ
た?」
ハリー「もちろん!痛かったわ!」
クリス「そうだろう.(サルトリウス
に)もしいつかこの仕事の事であた
しがあなたを責めるとしたら――」
サルトリウス「(廊下の真ん中の,
傾いた配電盤にもたれ)君に有利な
のは――」
クリス「と言うと?」
サルトリウス「君の脅し文句は意味
ないが,君が <客> と感情的に接触
しているのは良いことかもしれん
な」
クリス「あなたは羨ましがっている
んですか?」
サルトリウス「そうかもしれない」
クリス「いや,あなたは羨むことは
ないんだ.本当にあなたには責任は
ないんだから」
サルトリウス「そりゃそうですよ!」
クリス「責任があるのは僕の方だ」
サルトリウス「どういうことで?」
クリス「あなたが手足の不自由な身
障者にでもなったら,いつでも呼ん
で下さい.あなたのためならどんな
お世話でもしましょう」
サルトリウス「一体,あなたは誰に
対して責任があると言うんです?」
クリス「あなたに対してもね……」
クリスとハリー,去る。

● ソラリスの海

● クリスの部屋
 ハリーとクリス,ベッドに腰かけ,
クリスが地球から持ってきたフィル
ムを見ている。
クリス「これは父が撮ったものだ.
わたしが撮ったものもある」
● フィルム(ブラウン管)
 冬.焚火に近づき,木の枝を投げ
入れる子供時代のクリス.
 秋.木立ちを背にしたクリスの母.
 冬.森の中を行く父と幼いクリス.
クリスが転び,石塀の前に小犬を抱
いている母.幼いクリスが枯枝を抱
えて母の方へ駆け寄る。森の中を行
く母.
 池の岸で燃えている焚火.池の畔
に立つ少年クリス.池の畔に立つ母.
 家の傍の草むらに立つ,ケープを
はおったハリー.
 木にもたれかかるハリー.
● クリスの部屋
 フィルムを見終わって,顔を見交
わす二人.立ち上がり,クリスはス
イッチを切る.
ハリー「ねえ――」
● 浴室
 鏡に近づくハリー,つづくクリス.
ハリー「あたし全然自分のことがわ
からない.覚えてないの.眼を閉じ
ても,自分の顔も思い出せないのよ.
あなたは?」
クリス「何のことだ?」
ハリー「自分のことがわかるの?」
クリス「あたりまえにはな」
ハリー「ねえ! 白い服を着た人は
あたしを憎んでた人でしょ?」
クリス「そんなことはない.おふく
ろは僕らが知り合う前に死んだん
だ」
ハリー「あなたが何故あたしを混乱
させるようなことを言うのかわから
ない。あたしはね,あたしたちがお
茶を飲んでいた時にね,お母さんが
あたしを追い出そうとしたのをはっ
きり覚えているわ.勿論あたしは出
て行ったのよ.はっきり覚えている
わ.その後どうなったの?」
クリス「その後僕はあそこを出て,
それきり,わたしたちはもう会って
もいない」
ハリー「どこへ行ったの?」
クリス「別の町へ行ったんだ」
ハリー「なぜ?」
クリス「転勤だよ」
ハリー「あたしをおいてどうして行
ったの?」
クリス「君は行きたがらなかった」
 クリス,出て行く.
ハリー「ああ,それは覚えてるわ!」
 水が滴るシャワー.
● ベッド
 ハリーが眠っている.
● クリスの部屋
 部屋着を着て壁にもたれかかって

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