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無断転載を禁ず -P28- 「惑星ソラリス」パンフレット(1977年6月18日発行)より転載

いるクリス.ドアのノックの音.ク
リスはドアに近寄り,洋服で穴をふ
さいだ壊れたドアを開ける.
スナウト「(入口の前で)失礼! 側
を通ったら,あなたが寝ていないよ
うだったので」
クリス「何かあったんですか?」
スナウト「再生が遅れていてね.2,
3時間は暇になりそうだ」
クリス「それを報告するために,こ
の夜中にここに来たんですか?」
● べッド
 眠っていたハリー,眼を覚まし,
聞いている.
スナウト「まあ,聞いてくれ.わけ
があるんだ.サルトリウスとも考え
たんだが,海は我々が眠っている間
に,脳髄から <客> を引き出すのだ
から,海に我々の昼間の考えを伝え
ておくのも意味があるかもしれな
い」
クリス「どんな方法で?」
スナウト「放射線ビームでだ.海が
それを理解し,我々をこんな現象か
ら解放してくれるかもしれない」
クリス「また馬鹿げたレントゲンの
説教で,科学の偉大さを説こうとい
うのか?」
スナウト「我々の誰かの脳電流で,
このビームを変調させるのだ」
クリス「その誰かというのは勿論わ
たしだろ? 脳電図だ! わたしの
考えていることを全部記録するんだ
な! もしわたしが,突然,彼女が
死んで消えてしまったらいいと思っ
たとしたら?」
● クリスの部屋の入口
 ドアの横で立ち話をしているクリ
スとスナウト.
クリス「このゼリー状のものをすべ
て信頼することですよ。それはもう
わたしの心の中にまで,それほど入
り込んでいるんだ」
スナウト「クリス,もう,時間がな
い! ついでだが,サルトリウスは
もう一つ,素粒子消滅の計画を提案
している.ニュートリノ系だけをな
くしてしまおうと言うのだ」
クリス「それは何だ? 脅すつもり
か?」
スナウト「いや,僕は彼を脳電図か
ら始めるように説得した.この話は
忘れてくれたまえ.明日は僕の誕生
日だ.君を招待するよ」
クリス「嘘だ! 我々を仲直りさせ
たいんだな?」
スナウト「ああ,仲直りさせたいさ」
クリス「大きな声を出さないで下さ
い,ハリーが眠ってるんだから」
スナウト「(部屋の中を覗きながら)
眠っているって? もう眠ることを
覚えたのか? これはまずいことに
なりそうだ」
クリス「君はわたしに何を言いたい
んだ?」
スナウト「いや別に.じゃあ来てく
れるか? 明日,図書室で.ご馳走
を用意するよ.せめてあの部屋に窓
があればいいんだが,ところで,サ
ルトリウスが待っているから行こ
う」
クリス「ハリーは眠っているが,あ
とをつけて来ないだろうな?」
スナウト「ドアの鍵をかけなければ
いいさ」
クリス「このドアはないも同じなん
だよ」
● クリスの部屋
 着替えを済ませて浴室から出てく
るクリス、ベッドのハリーが部屋を
出て行くクリスをじっと眼で追う.
クリスの姿が見えなくなると,シー
ツを頭から被るハリー.
● 一階の廊下
 クリスの部屋の前の廊下を,スナ
ウトとクリスが歩いてもヽる.
● 二階の廊下
 実験室のドア近くにスナウト.ク
リスは突然振り返って走り去る。
クリス「待ってくれ,すぐ来る!」
スナウト「どこへ行くんだ?」
● クリスの部屋
 駈けこむクリス.ベッドに気を失
って倒れているハリー.ベッドが乱
れている.
クリス「(ベッドに飛び上がり,ハ
リーを両手で抱きあげながら)ごめ
ん,ごめん!」
 少しずつ気を取りもどすハリー.

● 変色しつつある海

● クリスの部屋(ベッド)
 ベッドにクリスとハリーが眠って
いる.
 起き上がるハリー.クリスもラン
プの明りで眼を覚ます.
クリス「どうして眠らないんだ?」
ハリー「あなた,あたしを愛してい
ないでしょ?」
クリス「やめろ! ハリー!」
ハリー「あたしたち,もっと話さな
きゃいけないわ」
クリス「何について?」
ハリー「(涙を浮かべながら)クリス.
あたしがどこから来たのか,あたし
には分らないってこと,あなたも分
ってるでしょ? それとも,あなた
知ってるの?」
クリス「何を考えついたんだ?」
ハリー「待って! あたしに言わせ
て! もし知ってるなら,いまは言
えなくてもいつかは言うんでしょう
? ねえ? クリス!」,
クリス「(起き上がって)何を言って
るんだ? さっぱりわからん,ほん
とうにわからない!」
ハリー「言いたくないんでしょ?
恐いんだわ.それじゃ,あたしが言
います.あたしはハリーじゃない.
あなたのハリーは死んだの.毒を飲
んで死んだの.そしてあたしは――
あたしは別者なのよ!」
クリス「誰が君にそんなことを言っ
たんだ?」
ハリー「サルトリウスよ.彼と話し
たばかりなの」
クリス「この夜中にね」
ハリー「あなたが言ってくれれば良
かったのに。そうでしょう?」
クリス「困ったもんだ! どっちに
転んでも同じだ!」
ハリー「あなた,あれからずっとど
うして暮らしていたの? 誰か好き
な人いた?」
クリス「わからない」
ハリー「あたしのこと,覚えていて
くれた?」
クリス「覚えていたよ.いつもとい
うわけじゃないが.わたしの具合が
悪いときに限ってかな」
ハリー「ネエ,わたしたちは誰かに
だまされているんじゃないかしら?
これが長く続けば続くほど,あなた
にとって,クリス,それこそあなた
にとって恐ろしいことになるわ!
どうやって,あなたを助けたらいい
のかしら? 話して! その女の人
はどうなったの?」
 ハリー,泣いている.
クリス「(ベッドに坐ったまま)僕ら
は口喧嘩をしてね.しまいにはたび
たび彼女と口争いをしていたんだ.
僕は荷物をまとめて家を出た.彼女
はストレートに言ったわけではない
が,言おうとしたことは僕にも何と
なくわかった.何年も暮らしていれ
ば,わかるもんだ。僕はそれが口先
だけだと信じた.ところが翌日冷蔵
庫に劇薬を残してきたことを思い出
したんだ。あれを実験室から持って
きたとき,僕はその効き目を彼女に
説明したんだ.僕は恐ろしくなった.
すぐ彼女を訪ねたかったが,それじ
ゃまるで僕が彼女の言葉を真に受け
たようにとられると思ったんだ.三
日目にもう我慢ができなくなって出
かけて行った。着いたときには,既
に死んでいたよ.腕に注射の痕が残
っていた……」
ハリー「これね? どうして彼女は
そんなことしたのかしら?」
クリス「きっと,わたしに愛されて
いないと思ったんだな.いまは愛し
ているんだが」
ハリー「(横になり,クリスの手に

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