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無断転載を禁ず -P30- 「惑星ソラリス」パンフレット(1977年6月18日発行)より転載

本当に残酷です!」
 コップを手にしたまま歩いて行く
ハリー.壁ぎわで飲みほそうとする
が飲めない.彼女に近づいて,彼女
の前に跪くクリス.
サルトリウス「立ちなさい!」
 クリスを見つめるサルトリウス.
クリスの横にスナウトが立っている.
やがて立ち上がるクリス.
サルトリウス「ねえ,君(出て行き
ながら),本当にそれが一番簡単な
のにな」
スナウト「口論しても無駄だな.品
位も,人間らしさもなくなるからな」
ハリー「(壁の方を向いて駿り泣き
ながら)いいえ! あなた方は各人
各様に人間だわ.だから口論するん
です」
スナウト「僕はお邪魔じゃないんで
しょうな?」
クリス「あなたはいい人だ.見かけ
は良くないけど」
 図書室の入口に立っていたスナウ
トは,廊下に出て行く.クリス,あ
とから追いつく.
● 一階の廊下
 スナウトとクリスが歩いている.
時を告げる時計.少し酔っ払って,
足許がふらつく.
スナウト「僕は本当に参った.ちょ
っと一緒にいてくれ.自分がどんな
値打ちがあるか知りたいばっかりに,
こんな不幸な接触のために,命を賭
けている男が,酔っ払っちゃいけな
いとでも言うのか? 道徳的にも全
く資格はあるさ.君は我々の使命を
信じているか? えっ?(自分の部
屋の前まで来て)僕は自分の部屋に
は行かない.眠ることができないの
は問題だがな,ファウストのところ
へ行くよ.あの実験室では我らがフ
ァウスト――サルトリウスが不死を
なくする薬を探がしているんだ.だ
が我々はどうだ?」
 スナウト,ドイツ語で“おおスザ
ンナ”を歌う.
● 二階の廊下
 ゆっくり歩きながら,歌い続けて
いるスナウト.彼のあとについて来
るクリス.
スナウト「おい! 床のハッチを開
けて,下に向って叫ぼうじゃない
か? もしかすると,聞きつけてく
るかもしれないぞ.ただな,(笑いな
がら)何と呼べばいいのかな? 笞
で懲らしめるべきか? それとも祈
りを捧げる方が良いのか? どうし
たんだ?」
クリス「(走り出して)図書室のドア
が閉まったような気がする! あそ
こにはハリーが一人きりだから!」
スナウト「行ってくれ.僕はもう大
丈夫だから.ステーションは今,点
検中だ.17時かっきりで30秒間無重
力になる.覚えておけよ!」
● 一階の廊下
 図書室に走って行くクリス.
● 図書室
 机の上に腰かけて煙草を喫むハリ
ーが,壁にかかった絵を見ている.
近づくクリス.
● プリューゲルの絵
 《雪中の狩人》の部分――冬の田
園風景.
● フィルム
 ブランコの傍に立つ幼小のクリス.
● 図書室
 ハリー,絵に見とれている.
クリス「ハリー! ハリー!」
 クリスが近づいたのに気づかない.
ハリー「あなた, ごめんなさい!
あたし,ちょっと考えこんでいたの.
何か起きたの?」
クリス「いや,別に.万事変わりな
しだ」
 無重力状態.空中に浮かが燭台.
空中に浮かがクリスとハリー.浮遊
している一冊の本.
● プリューゲルの絵
 《雪中の狩人》の部分
● 図書室
 絵の前を浮遊するクリスとハリー.
● プリューゲルの絵
 《雪中の狩人》の部分
● 図書室
 無重力状態終わる.長椅子に腰か
けたハリー.ハリーの膝に頭を埋め
るクリス.ハリー,クリスに接吻す
る.
● フィルム
 少年クリスが火に枯枝を投げると
明るく燃え上がる焚火.

● ソラリスの海
 白く波が立ち始めている.

● 
 壊れた魔法瓶の容器から,蒸気が
立ち上っている.その傍に横たわる
死んだハリー.ハリーを仰向けにす
るクリス.仰向けになったハリー.
廊下の鏡にハリーの顔が歪んで映っ
ている.
● 一階の廊下の床
 横たわるハリー.傍の箱に茫然と
して腰かけているクリス.スナウト
が自分の部屋から出て来てクリスに
近づく.立ち上がるクリス.
クリス「(死んだハリーに身を屈め
ながら)液体酸素を飲んだんだ.彼
女は絶望してやってしまった」
スナウト「これからはもっとひどい
ことになる.彼女は君といればいる
ほど,人間らしくなるんだ.サルト
リウスの例を見るがいい!」
クリス「ご忠告ありがとう」
スナウト「君はどうするつもりだ?」
クリス「蘇生するまで,待ちます」
スナウト「その後は? ステーショ
ンを離れるのか? クリス! 彼女
はこのステーションでしか生きられ
ないんだ.君も分ってるだろう」
クリス「一体どうすればいいんだ?
わたしは彼女が好きだ」
スナウト「どの彼女を? この人を
か? それともロケットの方かな?
彼女を軌道上から引っ張ってくるこ
ともできるんだ.彼女は必ず現われ
るし,それもいつでも現われるだろ
う.科学の問題をすり変えないでく
れたまえ」
クリス「これはまずい結末になると
感じてはいたんだ……」
スナウト「(死んだハリーに近づき
ながら)君は彼女を助けるべきだ!」
 死んだハリーの傍に坐るクリス.
ハリー,少しずつ蘇る.クリス,ハ
リーの胸に耳をあてがう.
スナウト「(遠ざかりながら)気味が
悪いな.こうした蘇生にはどうして
も慣れっこにはなれない」
 呼吸がもどり始めたハリー,体を
痙攣させる.クリス,身を屈めてハ
リーの日の血を拭う.部屋に洋服を
取りに行くクリス.床に横たわった
まま痙攣し続けるハリー.床から起
き上がろうとするハリーに服を着せ
かけ,後から支えるように抱くクリ
ス.喘ぎながら,クリスの腕から逃
れようとするハリー.
ハリー「(苦しげに)これはあたし?
…….あたしはハリー…….何なの,
何なの?……どうして,どうしてな
の?(うつろな眼で自分の手をじっと
見て)いいえ,これはあたしではない,
これは…….あたしは…….ハリーで
はない.あなたは…….ねえ,あなた
は……?もしかするとあなたも?」
クリス「やめなさい,ハリー」
ハリー「(叫んで)あたしはハリーで
はないわ!」
クリス「(もがくハリーをしっかり
抱きしめて)もう,いいんだ.いい
よ.もしかすると君が現われたのは
責苦かもしれないし,海がわざわざ
送ってくれたのかもしれない.だが
もしも,かつて世の中にあったとか
いう学問の真実よりも,もっと君が
僕に大切だとすれば,そんなことは
どっちでもいいんだ」
ハリー「あたしは彼女によく似てい
る?」
クリス「いや,君は似ていた.が,
いまでは君が彼女なのではなくて,
本物のハリーなんだ」
ハリー「(涙ながら)に言って頂戴.

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