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無断転載を禁ず -P32- 「惑星ソラリス」パンフレット(1977年6月18日発行)より転載



クリス
「(ベッドに横になったまま)
スナウト,聞いてくれ!」
スナウト「あとからな,クリス.心
配するな」
クリス「ああ,いったい,どうなっ
てるんだ?」
スナウト「幻覚だよ! 光と風の閃
きさ」
クリス「(胸苦しそうに)そう,最近
は彼女とうまくいってなかったん
だ」
 母がクリスの手を洗うのに使った
水差しとタオルが,椅子の上にある.
クリス「聞いてくれ! スナウト!
海は何故我々をこんなに苦しめるん
だ?」
スナウト「それはな! 我々が宇宙
の感情を失ってしまったからだな」

● 一階の廊下
 壊れたドア越しに,クリスの部屋
を覗くサルトリウス.だがそのまま
去り,途中で床に転がっているボー
ルを拾う.
スナウト「――昔はもっとそういう
感情になりやすかった.連中は決し
て何のためにとか,なぜかなどと論
争しなかった.シジーフの神話を想
い出してみたまえ.そうなんだ.我
々が海に君の脳電図を送って以来,
お客は誰ももう戻って来なくなった。
海では何かわからない事が起こり始
めた.表面に島ができ始めたよ」
● 二階の廊下(ステーション)
スナウト「最初にひとつ,1日後に
さらに数個……」
クリス「海が我々を理解したと君は
言いたいんだろう?」
スナウト「いや,そんなに早急には
な! だが我々には希望が湧いてき
た.そうだろう?」

● 図書室
 椅子に腰かけるクリス.スナウト
が立っている.
クリス「あなたはお幾つですか?」
スナウト「52歳.それがどうした?」
クリス「向こうから来てどの位にな
りますか?」
スナウト「君はわたしの調書を見て
ないのか?」
クリス「見ましたよ.ちょっと聞き
ますが,ここに何年か住んだあとで
も,向こうの生活との関連をはっき
り感じられるんですか?」
スナウト「君は極端な質問をするの
が好きだな.今に人生の意義につい
て問題にするんじゃないか」
クリス「待って下さい.からかわな
いでくれ」
スナウト「それは月並みな質問だ.
人間は幸せなときはね,人生の意義
とか,その他永遠のテーマとかには
興味を持たないものだ.そういうこ
とは死にぎわに考えればいいんだ」
クリス「(椅子に坐っている)その最
期がいつ来るか,我々にはわからな
い.だから焦っているんだ」
スナウト「君は急ぐことはない.幸
せな人とは,決してこうした忌わし
い問題に興味を示さない連中をいう
のだ」
クリス「問題は,知りたいという絶
えざる願望にあるんだな.だが,平
凡な人間の真実を守るためには,秘
密も必要だ.幸せの秘密,死の秘密,
愛の秘密!」
スナウト「もしかすると君は正しい
のかもしれない.しかし,そういう
ことは考えないようにしたまえ」
クリス「だが,それを考えることは,
自分の死の時を知ることでもある.
それを知らなければ,実際には我々
は不死になってしまうんだな」
● 雲が広がるソラリスの海
クリス「まあ,いい.ともかくわた
しの使命は終わった.これからどう
するか? 地球に戻るべきなのか?
少しずつ総てはもとどおりになるだ
ろう.そして新しい関心も湧き,新
しい知人も出来る.しかし僕は,そ
れにとことんまで没頭することは出
来ないだろう.仮にこの巨大な海と
接触できるとなったら,わたしは拒
む理由があるだうか? 我々人間は
何十年もあの海に探索の糸を延ばし
ているんだ.ここに残るべきだろう
か? 僕ら二人が手を触れてきた品
々の中に残るべきだろうか? まだ
僕らの息づかいを感じさせる物の中
にだ.何のためにだろうか? 彼女
が帰って来るのを待つためにだろう
か? だが僕にはその望みはない.
僕に残されているのは,待つことだ
けだ.何をかは分らない…….新し
い奇蹟だろうか?……」
● クリスの部屋
 窓の傍にスナウトが立っている.
窓辺に,地球から持ってきた金属製
の箱.傍の椅子にかけたクリス.
スナウト「疲れないか?」
クリス「いや,爽快ですよ」
スナウト「ところでクリス,君はも
う地球に帰るべきだ」
クリス「あなたはそう思いますか?」

● 地球のクリスの部屋
 窓辺に,小さな緑色の茎が,外に
向かって生えている金属製の箱.
● 水の流れ
 水面に浮かが長い水草.
● 池のほとり
 クリス,池の傍に近づき,池の縁
を歩き,水際に近づき,じっと静止
している水面を見つめる.
● 
 クリス,家の傍を通りかかる.家
の方から燃える焚火の横を通って走
り寄ってくる犬.クリス,犬を連れ
て家へ向かう.
● 家の中
 窓から家に近づくクリスが見える.
● 一階(客間)
 天井から雨が漏っている.雨には
おかまいなく,机の上の本を調べて
いる父.息子に気づくと,微笑しな
がら,ドアの方へ行く.窓ごしにク
リスの淋し気な顔.
● 玄関
 父が出てくる.クリス,父の前に
跪く.カメラ,遠ざかる.流れる雲.
● (ソラリスの海)
 雲間に,小さくなって行くケルヴ
ィン家.流れる雲.雲がちぎれると,
ソラリスの海の波間に島が見える.
島の上に,クリスの家と,池のある
庭がある.
              ――終――

色彩Cinemascope / 上映時間165分
シナリオ訳・採録●野原まち子


『惑星ソラリス』は1977年4月
29日より東京・岩波ホールにて
ロードショウ公開され,ソビエ
ト初の本格SF映画の話題作と
して反響を呼び,全国的な上映
を望む声が高くなっています.
名古屋にひきつづき大阪,札
幌,福岡でも公開される予定で
す.このプログラム作成にあた
り,岩波ホール,エキプ・ド・
シネマのご協力をえました.

1977年6月18日発行 / 定価300円
(C)発行所 日本海映画株式会社
  中央区日本橋本石町3の4ス
  トークビル

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