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「ストーカー」(1981年10月31日発行)より転載
あらすじ
 隕石の落下か?それとも宇宙人の来訪か?
何が起ったのかわからないが、ある小国にゾ
―ンと呼ばれる不可思議な地域があった。そ
こにはただちに軍隊が派遣されたが、兵士は
一人として帰還しなかった。ゾーンには鉄条
網が張られ、警戒厳重な警備隊がゾーンを守
つていた。だが、このゾーン内には、人間の
一番切実な望みをかなえる「部屋」があると
云われていた。そこで、禁を犯してゾーンに
侵入しようとする者たちが現われる。彼らを
「部屋」まで案内する者はストーカー(密猟
者)と呼ばれた。
 この日も、ストーカーは妻が引きとめるの
を振り切って、ゾーンヘと出発する。待ちあ
わせ場所のバーには二人の客がいた。「現代社
会は法則づくめで退屈だ。ゾーンには、何か
インスピレーションを取り戻すものがあるん
じゃないか」と云う作家と、口数の少ない物
理学者の教授……。
 かれらはゾーンの境界地帯にいる警備兵の
銃火をかいくぐり、軌道車に乗ってゾーンヘ
侵入する。ゾーンはかっての文明の根幹、発
電所の跡のようだが、いまでは緑がうっそう
と茂る廃墟でもある。そしてそこには、この
地の秘密を暴くべく派遣された軍隊の戦車の
残骸や、人間の骸が雨露にさらされたままだ。
 ストーカーは、ゾーンは「云わば複雑な罠
で、その罠にかかれば命がない」と語り、白
布を結びつけたナットを投げては「部屋」へ
行く道順を決めていく。ストーカーの忠告を
聞かずに前進しようとした作家も、何者が発
したかわからない「止まれ、動くな!」という
声に怯え、たちこめてきた霧に行手を阻まれ
る。ゾーンでは周囲の風景も、自然も刻一刻
と変化するのだ。風が吹き、大地が揺らぎ、
そして帰路も同じコースをたどっては戻れな
い……。
 かれらは、水が、竜の如く流れ落ちる「乾燥
室」という皮肉な名を持つトンネルを通り、
何人もの生命を奪った「肉挽き機」と呼ばれ
る非常に危険で恐ろしい"管"をくぐりぬけ、
深い井戸をもつ、波紋が連なる砂丘の部屋を
通過し、ついに「部屋」の入日にたどりつく。
「部屋」を眼前にして、三人とも無事にここ
にたどりついたことを喜ぶストーカー。
がこの時、教授は、かって友人と共に製造し
た爆弾をリュックから取り出す………。かれ
は、人間が胸に秘めている最も大切な夢を
かなえるというゾーン内の「部屋」が、犯罪
者に利用され、人類が不幸に襲われるかもし
れないという危倶を抱いていたから、「部屋」
を爆破することを目的にゾーンに来ていたの
だ。ゾーンを唯―の心の支えに生きていたス
トーカーは、必死で爆弾をとりあげようとす
る。
 一方、自らの才能や名声に倦んで、ゾーン
に新たな希望を托してやってきたはずの作家
は、やがてゾーンを神聖視するストーカーの
態度に疑間を感じ始めていた。そして、かれ
は全人類のための愛と云ったような、教授の
言動を一笑するが、同時にまた、ゾーンこそ
偽善にすぎないとストーカーをなじる。教授
は、「部屋」を爆破するのをあきらめ、爆蝉を
解体する。そしてやがて、三人は「部屋」の
敷居をまたぐこともせず、ただ黙して坐り込
む…… はたして「部屋」とはなんだったろ
うか。
 ――かれらは揃ってバーに戻って来た。そ
こでは妻が、足の動けない娘とともに、スト
ーカーを待っていた。

 わが家に帰って、ストーカーは「あんな作
家や学者ども、何がインテリだ!………骨折
り損だった」と絶望的に叫ぶ。「少し眠ったほ
うがいいわ」とやさしくいたわり続ける妻。
 そして、ストーカーの妻の独自がつづく、
「母は云いました。"ストーカーよ、呪われた
永遠の囚人なのよ。ろくな子供は生れない"
って。……でも好きになったんだから仕方あ
りません。……私たちって、そういう運命だ
ったんです。」
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