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「ストーカー」(1981年10月31日発行)より転載
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第二部




ゾーン・発電所跡
 ストーカー、周囲に気を配りなが
ら、川へ下りて行く。
タイトル・第二部
     ストーカー
ゾーン・発電所のダム
 建物の入口の枠ごしにストーカー
が見える。
ストーカー「そこで何をしてるんで
す? 行きますよ。」
ゾーン・ダム
 トンネルの出日の薄汚れた石に作
家が凭れかかるように腰を下ろし、
直ぐ後に教授も腰かけている。
ストーカーの声「疲れましたか?」
 教授、立ちあがりながら、ため息
を洩らし、リュックを置いたまま、
そこを離れる。
作家(嘆息まじりに)「やれやれ。あ
の調子では、また説教を聞かされる
ぞ。」
ゾーン・井戸
 何か落ちる音に続き、銀に被われ
た水面がはね、波紋を描く。
ストーカーの声「希望はかなうもの
だ/信じて欲しい/情熱など頼りに
ならぬ/彼らの言わゆる情熱は心の
活力でない/塊と外界の軋轢なのだ
/大切なのは自分を信じること/幼
な子のように無力であること/なぜ
なら無力こそ偉大であって、力は空
しい……。」
ゾーン・ダム
 ストーカー、窓枠を越えて外に出
ると、外壁に這いつくばるようにし
て管(パイプ)までたどりつく。
ストーカー(モノローグ)「人が生れ
る時は軟弱で/死ぬ時に枯れ回まる
/木も成長する時に軟らかく/乾き
固くなるのは死ぬ時なのだ/硬直と
力は死と隣りあっている/弾力と軟
弱こそ若さの象徴だ/凝結したもの
に希望はない。」
 ストーカー、管の入口を伝って建物
の内部に入る。教授と作家が近づい
て来て、薄闇のなかで話を交わす。
ストーカー「こっちです。もうじき
"乾燥"トンネルに入ります。あとは楽
ですよ。」
作家「そう願いたいな。」
教授「先へ進むのか?」
ストーカー「ええ、もちろん。」
教授「待ってくれ。そのつもりじゃ
なかった。(建物の外の方を振り返り
ながら)リュックを置いてきてしま
ったんだよ。」
 作家は一人、腰を下ろす。
ストーカー「リュック?」
教授「そうとは知らなかったからな。
置いてきてしまったんだ。」
ストーカー「残念でした。」
教授(引き返そうとして)「取りに戻
らなくては。」
ストーカー「不可能です!」
教授「ないと困る。」
ストーカー「ここでは同じ道を戻っ
てはならないんです。」
作家「リュックが何ですか。」
ストーカー「望みのかなう部屋へ向
ってるんですよ。」
作家「命より大切なリュックらしい
な。」
教授「まだ遠いのかね。」
 ストーカーと作家は管の入口まで
出て来る。
ストーカー「直線距離だと200メー
トルですが、 回り道しますから。」
作家「経験主義はおやめなさい。奇
蹟が逃げて行きますよ。聖ペテロで
さえ溺れかけた。」
 ストーカー、ナットを投げ、落ち
る先に注意を払っている。
ストーカー「行きなさい。」
作家「どっちかな?」
ストーカー「この梯子を伝って。(教
授を振り向き)教授も早く。」
 作家に続き、ストーカーも壁に掛
かった鉄梯子を伝って下りる。
ゾーン・ダムの川
 流れ落ちる水しぶきで霞んで見え
る川面。
ゾーン・ダム
 水しぶきに霞む川面に下り立ち、
あたりに眼を配っているストーカー、
つづいて、傍で周囲の光景を怪訪そ
うに眺めている作家の顔のクローズ
・アップ。
 ニ人はダムから落ちる、激しい水
の流れが渦まく、トンネルの出口を
見ながら、"乾燥"トンネルの入口に
たどりつく。
ストーカー「ここが"乾燥"トンネ
ル。」
作家「悪い冗談だ。」
ストーカー「まあね。いつもは泳い
で渡るんだが。」
 二人は激しい水流のなかを歩み始
める。
作家(後を振り向き、水の音に掻き
消されないように大きな声で)「教授
はどこだ?」
ストーカー(一層大声で)「えっ?」
作家「いないぞ。」
ストーカー(大声で呼ぶ)「教授!
教授!(作家に向って)一緒じゃな
かったんですか?」
作家「どこかではぐれたんだな。」
ストーカー「リュックを取りに戻っ
たんでしょう。もう、ダメです。」
作家「待ってみよう。」
 二人はさらにトンネルに深く入っ
て行く。
ストーカー「ここは一刻一刻変化す
るんです。待てません。」
ゾーン・ダムの底
 流れる水の傍であかあかと燃える
石炭。
作家の声「こんな所にどうして火
が……」
ストーカーの声「分るでしょう?」
作家の声(驚きで声を詰まらせなが
ら)「分るって?」
ストーカーの声「ゾーンだからです
よ。さあ急いで下さい。」
 水面を透かして、タイル張りのダ
ムの底や、底に散らばった注射器、
古びたカレンダーなどが見える。流
れ落ちる水音がなお激しく聞こえる。
ゾーン・ダムのトンネル
 作家とストーカーが"乾燥"トンネ
ルを脱け出るや、そこに教授がいる。
作家「いた!」
 教授は出口の崩れかけた石に腰か
け、コーヒーを飲んでいる。足もと
では焚火が燃えている。ストーカー
が訝しげに教授の横にしゃがみこむ。
教授「わざわざ、お迎えとはどうも。」
ストーカー「どうしてここに?」
 周囲は霧が漂い、作家は焚火に両
手をかざして暖めている。
教授「やっとたどりついた。這うよ
うにして。」
ストーカー「私らを追いこすとは…」
教授「追いこす?リュックを取りに
戻っただけだよ。」
 作家がふと、トンネルの出口に下
がっているナットに気づいて――
作家「ナットがある。」
ストーカー(驚いて立ちあがり)「何
と云うことだ。これは罠ですぞ。ヤ
マアラシが残したナットです。なぜ、
私らがここに出られたのか?(ため
息まじりに)恐ろしい。今は一歩も
動けません。そうですよ。(思い立っ
たように歩き始めて)そうだ、休み
ましょう。」
 教授が食物や飲物を片づけて、リ
ュックにしまい、焚火に水をかける。
作家は休む場所を捜しに行く。
ストーカーの声「念の為、ナットか
ら離れて下さい。もう教授は助かる
まいと思ってましたよ。(せきこみな
がら)どんな人かはここで分るんで
す。分った時には遅いこともありま
すがね。」
作家の声「まあ、よかった。よっぽ
ど大事なリュックらしいから。」
教授(リュックを取りあげ、歩き出
しながら)「イヤミを言いなさんな。
何も分らんくせに。」
作家の声「もったいぶりなさんな。」
 教授が立ち去ったあと、水をかけ
ていったん消えた焚火が再び、小さ
く燃えあがる。
ゾーン・水路
 作家は水溜りにある小さな島に身
を横たえ、肘まくらで体を休める。
作家「どうせ探険費も出るまいから。
気圧計なんかを詰めこんできたんだ。
……ゾーンに忍びこんで調べるつも

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