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「ストーカー」(1981年10月31日発行)より転載
26 も関係が薄いし、主義主張もなく、
全く機械的な意味のない音で、連想
も呼び起しません。それなのに音楽
は、人の魂に直接ひびくのです。体
内の何かが共鳴するのでしょう?
何が単なる音のつながりを喜びに変
えて。」
ゾーン・水路
 教授と作家、起きあがって、驚い
た表情でストーカーの言葉に耳を傾
けている。
ストーカーの声「何のために私らを
感動させるのでしょうか? 誰のた
めでしょう? 何のためでも誰のた
めでもなく、"無欲"なのですか?
そんなはずはない。すべて必ず、価
値を持っているはずです。価値と理
由を。」
ゾーン・管(パイプ)の廊下
 廊下のようにぐるっと巡っている
管のなか。ところどころ、外の明り
が天井から洩れている。戸を開ける
重いきしみが聞こえる。
作家の声「それは、あそこへ行くと
言うことか?」
ストーカーの声「今の私らには、そ
れしかありません。」
ゾーン・管
 ドアが開いた入口に作家と教授、
後にストーカーが立ち、管の奥の方
に眼を疑らしている。
作家「気味わるいトンネルだね、教
授。先に行きたくはないよ。少くと
も志願はしない。」
 作家と教授、後のストーカーを振
り返る。
ストーカー「それじゃ、クジで決め
ましょう。」
作家「教授が志願しなければね。」
ストーカー「マッチを。(教授からマ
ッチを受取る)どうも……」
 ストーカー、二人に見られぬよう
に、2本のマッチ棒を挙に握ると、
作家にその手を差し出す。
ストーカー「長いのが先です。どう
ぞ。」
 作家、マッチ棒をストーカーの挙
から引き抜く。
ストーカー「長いほうだ……。つい
てませんね。」
作家「せめて何か投げてくれ。」
 作家、管の奥を不安げに見ている。
ストーカーの声「いいですよ。」
 ストーカー、石を拾って、入口か
ら中へ向って投げると、埃まみれの
汚い、部厚いドアをいったん閉め、
再びそっと開ける。
ストーカー(作家を促すように)「さ
あ。」
 作家、一度、ストーカーを振り返
り、意を決して、薄暗い管の廊下に
入って行く。
作家「行くよ…。行けばよかろう。」
ゾーン・管の中
 入口で作家の後姿に見入っている
ストーカーと教授。
 作家はおそるおそる、ゆっくりと、
時に後を振り返りながら、管の中を
進み、瓦礫を踏みしめる足音だけが
響く。
 作家の姿がカーブを出るや、教授
が先に、つづいてストーカーが荒々
しく息づかいながら、早足で跡を追う。
ストーカーの声「早く、教授!」
 作家は一度、何かに躓ずいて転ぶ
が、起きあがって、なお歩み続ける。
 教授とストーカーはカーブで立ち
止まっては作家の様子を覗い、再び
走るようにして作家の跡を追う。
 天井からは水がしたたり落ちてい
る。立ち止まって、跡をつけて来るス
トーカーと教授を振り返って見る作
家の不安げな表情のクローズ・アッ
プ。
 カーブまで来て、立ち止まってじっ
と作家を注視するストーカーと教授。
 作家は再び、深く息づきながら、
ゆっくりと進む。管の中は天井から
煤が下がり、ところどころ明りが洩
れている。
 天井から落ちる水に濡れながら進
んでいた作家、出口近くまで来て、
立ちすくむ。
作家「ここだ。……変なドアがある
ぞ」
ゾーン・管のカーブ
 ストーカーと教授が立っている。
足もとを水が流れている。
ストーカー「進んで。ドアを開けて
入るんです。」
ゾーン・管の出口
 閉じたドアの前に立ち尽くしてい
る作家。
作家「また、俺が先に入るのか?」
ストーカーの声「そうですよ。急が
ないとダメです。」
 作家はポケットからビストルを取
り出し、遊底を動かす。
ストーカーの声「いけません。武器
なんか出しては。破滅ですよ。戦車
を見たでしょう。」
ゾーン・管のカーブ
 立ち尽くしている教授とストーカー
ストーカー「早く捨てなさい。」
教授(激しい調子で)「捨てたまえ!」
ストーカー(体を屈めて作家の様子
を覗い)「どうせ銃なんか役に立ちま
せん。お願いだから捨ててください。
一体、誰を、誰を撃つつもりですか?」
ゾーン・管の出口
 作家がビストルを手にしてドアの
前に立っている。
ストーカーの声「時間がない。急い
で。」
 作家は思い直してビストルを捨て
ると、ドアを開け、外の階段を下り
始める。
作家「水があるぞ。」
ストーカーの声「手摺りに掴まって。」
 作家は階段を下りると胸まで水に
つかりながら、向う側の出口へ通ず
る階段まで渡り、今度は階段をゆっ
くりと上り始める。
ストーカーの声「出口で動かずに待
ってて下さいよ。」
 教授、管の出口まで来て、手すり
に掴まりながら階段を下りる。
ストーカーの声「お持ちでないでし
ょうね。」
教授(階段を下りながら、振り向き)
「えっ?」
ストーカーの声「銃などは。」
 教授、リュックを両手で差しあげ
ながら、水の中を渡っている。
教授「アンプルだけ持って来た。」
ストーカーの声「えっ?」
教授「毒薬さ。」
ストーカー(教授につづいて階段の
方へ来て)「死ぬために来たんですか
?」
教授「万―の用意だよ。」
 足もとの石の上に捨てられてある
ビストルを見詰めていたストーカー、
手で慎重にビストルを水の中に落す。
 ホールヘ通ずる出口を黙々と上っ
ていく作家。
ストーカーの声「危ない!戻って!」
ゾーン・ホール
 作家はホールの中を数歩進み、後
を振り返る。
ストーカーの声「動かないで待つよ
うに言ったでしょう。動かないで!」
ゾーン・ホールの入口
 ホールの入口近くに立っている教
授とストーカー。眼前には小さい砂
丘が渡紋を描いて連なっている。ス
トーカーがナットを投げるや、二人
は地面に身を伏せる。
ゾーン・小山
 ゆっくりと弧を描き、砂ぼこりを
あげて落ちていくナット。
ゾーン・ホール
 顔を手で拭う作家のクローズ・ア
ップ。
 わしが二羽、小山の上を砂ぼこり
を舞いあげながら、飛び去る。
 砂丘の陰に並んで身を伏していた
教授とストーカー、頭をおもむろに
あげ、作家の様子を覗う。
教授「まずい!」
ストーカー「何です?」
教授「君が先頭に行くべきだったん
だ。」
ゾーン・ホールの水溜リ
 水溜りに横になっていた作家、や
っとのことで起きあがり、井戸の縁
に腰かける。が、深呼吸をして立ち
あがり、傍の石を拾って来て、井戸
に投げ入れると、再び、体を屈める
ようにして井戸の縁に腰を下ろす。
落ちていく石の音が鈍くこだまする。
 作家は喘ぎながら、そしてだんだ
んと自嘲的に、ひとりごとのように話
す。
作家「これもまた一つの実験だ。実

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