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「ストーカー」(1981年10月31日発行)より転載
30 希望を与えるんです。(泣きながら、
身を振るわせ、作家の方を向いて)
私にはできる。人助けできるのは幸
せです。無上の幸せですよ。」
ゾーン・電話のある部屋の傍
 ストーカーの話に聞き入っていた
教授、窓辺へと歩いて行き、濡れた
上衣の裾を引っ張っている。
 ストーカーの喘ぐような息づかい
が聞こえる。
ゾーン・"部屋"の前
 "部屋"の前に立っている教授の方
へ、うつむき加減に歩いていくスト
ーカー。
作家「そうかもしれん。しかし君の
話は、つじつまが合わんよ。君自身、
理解していないんだろう。なぜヤマ
アラシは首を吊った?」
ストーカーの声「利得を目的にゾー
ンに入ったからです。だから弟を肉
挽き機で。」
 作家の冷ややかな表情のクローズ
・アップ。
作家「どうして首を吊ったんだ?
弟を取戻しにくればよかったのに。
後悔のためか?」
ストーカーの声「そうしたかったの
でしょうが……分りません。」
作家(ストーカーに問い正すように)
「ここで叶えられる望みは、無意識
のものなんだよ。頼んでもダメなん
だ。」
 "部屋"の前へ進んで行く作家、ス
トーカーも"部屋"の前まで来て坐り
こむ。
作家("部屋"の前に立って)「多分、
自分の本性が現れるんだろう。人は
自分の本性を知らずに一生振り回さ
れる。ヤマアラシは食欲に負けたん
じゃない。弟を返してくれと哀願し
たのに、ゾーンが彼に与えたのは大
金だったのだ。本性にそぐわしいも
のだ。」
 教授がストーカーの横に坐る。
作家("部屋"の方を見つめながら)
「彼は最後にそれを理解したんだよ。
だから首を吊ったんだ。俺は中に入
らんぞ。自分の本性の腐肉など欲し
くないし、他人にも見せたくない。
首を吊りたくもない。自分の家で飲
んだくれているほうがましだよ。俺
みたいな男を連れてくるようじゃ、
君も人を見る目がないぞ。それに、
(ストーカーと教授に問いたずねる
ように)奇蹟が存在すると言う証拠
があるか? ここで望みが叶えられ
ると誰に問いた? ここで幸福にな
った人間を知ってるかね? ヤマア
ラシか?ゾーンやヤマアラシや"部
屋"のことをそもそも誰が君に話し
たんだね?」
教授「彼だ。」
 この時、作家が思わず、"部屋"に
倒れかかるが、慌ててストーカーが
すがりついて止める。

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