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「火の馬」(1991年4月26日発行)より転載
 泣き出すマリーチカ。
 イワンコは戸惑って、泣くマリー
チカを見ている。
教会の前
 教会の旗。死んだピョートル・パ
リーチュクを悼む泣き声。
「我々を残して、あなたは、死ん
でしまった。残ったイワンコはどう
なる。あなたは、息子をどうする気
か」
 若いグツール人が十字架を持って
行く。
「敵がお前をこの世から奪ってし
まった。お前は何と云うつらい死に
方をした事か」
 髭をはやしたグツールが香炉を吹
きながら十字を切る。老いたグツー
ルがトレムビータに水を差す。木の
十字架を背した男が帽子を脱ぐ。
 棺桶に釘を打つ。傍らにイワン
コ。パリーチュクの妻、泣きくずれ
る。
雪の丘
 葬列が丘の向こうから歩いて来
る。橇の上においた棺に従い、嘆き
悲しむパリーチュクの妻。
パリーチュクの妻「おお、私のペト
リクよ、お前は私を残してしまっ
て、いまいましいグチェニュクの奴
等よ、神よ奴等に疫病を与え、畜生
どもをほろぼし給え」
 トレムビータの音がひびく。
 イワンコは両手に小羊を抱え、父
の棺のあとについて行く。小羊を雪
の上に放すと、行列を離れる。道の
脇の茂みにマリーチカが立って葬列
を見ているが、イワンコの姿を見て
逃げようとする。
イワンコ「待て、怖がらなくてもい
いじゃないか。名前は何と云うん
だ?」
マリーチカ「あんたイワンコでしょ
う」
イワンコ「どうして知っているん
だ?」
マリーチカ「あたし、小羊を飼って
るの」
イワンコ「僕は牛を飼ってるんだ」
マリーチカ「ヒムカがうちの小麦粉
を盗んだよ」
イワンコ「どんな奴だ?」
マリーチカ「とても悪い奴よ」
 再びトレムビータがひときわ高く
鳴る。
 イワンコ、葬列の方を見やる。
 一面の銀世界に教会の旗がゆれ、
行列が進んで行く。
 イワンコは行列の人達の方に向
かって雪の上を走って行きながら、
二度、三度とあとをふり返って見
る。
パリーチュクの妻の声「お前さんは
幼な子のイワンコを残して死んでし
まった……」

タイトル「イワンの記憶では、マ
     リーチカと出会ったのは
     父の死から間もない頃
     だった…」

タイトル「イワンコとマリーチカ」

春、花の咲きみだれる草原
 マリーチカの唄声がきこえる。
マリーチカの歌「白い羊が走って来
           た
           私はお前が大好き
           だ
           お前の言葉をきく
           のは
           とても楽しい。
           白い羊の子が
           出来たら
           白い羊を飼って」
 イワンコとマリーチカが花の咲き
みだれる草原の中で踊りながらくる
くるとまわる。
歌「牧夫が白い羊を番しているとき
私の歌は皆の心の中まで伝わっ
ていくだろう」
 踊っていたイワンコとマリーチカ
が草花の斜面をころがりながら降り
て行く。
「家の近くの森で
  カッコー鳥が啼きました
  唄を作ったのは
  イワンコとマリーチカ」
 別の唄がはじまる。
「高い……ポローニナから
  風が吹いて来る
  そこでマリーチカが
  イワンコと一緒に
  羊の番をしている」
森の中の家
 朝、イワンコは焚火のそばで枯枝
を折って、火の中に入れる。
「私の愛する羊よ
  この唄を歌いながら
  山から山ヘ
  お前を追っていく」
 マリーチカは人のそばで刺繍をし
ている。
 マリーチカ、唄い終って
マリーチカ「イーワ、聞こえる?」
 イワンコは最後の枯枝を火に投げ
入れ、マリーチカの方に行き、立ち
止って斧の音に耳をすます。
イワンコ「聞こえるさ。音は聞こえ
るが斧は見えない」
マリーチカ「あたし、こわい」
イワンコ「何をこわがってる。山羊
だよ」
マリーチカ「どこに?」
 イワンコは変てこな切株の方に行
く。
マリーチカ「イワ、どこへ行く
の?」
 イワンコはポケットから笛をとり
だして吹く。吹き終るとマリーチカ
を驚かそうと歌い、踊り出す。
イワンコ「私の山羊はどこだ、私の
山羊は……」
 イワンコ、不思議な物音にふりか
えって、ハッとしてそこを離れる。
マリーチカ「イワ!」
 イワンコがマリーチカの手を引
き、あわてて変わった形の切株の間
を走って行く。

 さんさんと朝陽が注ぐ森を走り、
池の畔まで来ると、二人は洋服を脱
いで水に飛びこむ。水浴びに興じる
二人。
イワンコ「とうさん、かあさん、何
を煮た、何を煮た」
マリーチカ「赤大根のボルシチ、ボ
ルシチ、赤大根のボルシチ」
イワンコ「赤大根コン、コン、コ
ン、コン、赤大根コン、コン、コ
ン、コン」
 ニ人は水から飛び出し、洋服を掴
んで、茂みの中を走りまわる。
イワンコ「まて、君はどこの子だ」
マリーチカ「ヤボロフの者よ」
イワンコ「君、誰の子だ?」
マリーチカ「グチェニュクよ」
イワンコ「そうか、元気でやれよ」
 二人は着物を振りまわして、笑い
ふざける。マリーチカの首にかかっ
ていた十字架の首飾りをイワンコが
思わず引きちぎってしまう。二人と
も茫然となる。イワンコに目指しを
向けるマリーチカ。
 草叢にこぼれた首飾りの赤いガラ
ス玉が陽ざしを反射している。
遠くからマリーチカを呼ぶ母親の

「マリーチカ」
 イワンコ、立ち上がって、聞いて
いる。切株の陰からマリーチカの顔
がのぞく。
教会の中
 白い教会の旗
 教会の中に成人したイワンコが
立っている。
 聖歌隊の中に柳の枝を持った成人
したマリーチカがいる。他の娘と一
緒に唄っている。
「聖母様、我を救い給え」
 マリーチカは隊を離れて教会の中
を進む。再び唄声がひびく。
「聖母様、我々を救い給え」
 マリーチカ、祭壇の前で跪き、柳
(9)
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