<- 作品検索 ((・ Home Page ・)) 他のパンフレット ->
「火の馬」(1991年4月26日発行)より転載
の枝を祭壇において十字を切り、出
口の方に行く。
 イワンも祭壇の前に進み寄り、十
字を切って、ローソクを立て、出口
に行く。
 鐘つき堂の傍でイワンとマリーチ
カが幸福そうに微笑を交わす。
鐘つき堂の前
 イワンがマリーチカを抱き、頬を
寄せあって話している。
マリーチカ「イーワ」(イワンのこ
と)
イワン「私のマリーチカよ、何?」
マリーチカ「私たち一緒になれる
の」
イワン「さあ、どうなるか」
マリーチカ「私達の両親は、すごい
憎しみを持っていたのよ」
イワン「大丈夫さ、マリーチカ。お
母さんに話して、お前を山の我々の
所に連れて行くよ」
マリーチカ「おお、イワンコ」
イワン「悲しむなよ、マリーチカ」
マリーチカ「何故?」
イワン「いいかい?私のところに来
るのだ」
マリーチカ「そんなこと……イワン
コ」
 イワンの手がマリーチカの顔に近
づき、その手からオランダイチゴの
実を直接マリーチカの口にふくませ
る。そしてその彼女の頭が静かに草
花の間に倒れて行く。
教会の広場
 教会のそばではグツール人達が
踊っている。その踊りの列の中にイ
ワンとマリーチカがいる。
イワン「言いたい人は何とでも言う
がいい。しかしお前は私と一緒にな
るのだ。わかったか、マリーチカ」
 マリーチカが途中で踊るのを止
め、くずれおれる。イワンは彼女を
抱いて外に出る。
イワンの家の近く
 若木を囲った垣根の間からマリー
チカが現れる。彼女が立ち止まる
と、その方にイワンが近づいて、そ
のあと二人は一緒に歩き、不安気に
言葉を交わす。
マリーチカ「イワ……私たち一緒に
なれないわ」
イワン「何を云うのか、マリーチ
カ」
イワン「マリーチカ」
 涙を目にいっぱいためたマリーチ

イワン「一体どうしたんだ」
イワンの家
 イワンの母が屋根板を足もとに投
げつけながらつぶやく。
イワンの母「グチェニコフ達の家
が、私の家のように空っぽになるが
いい。私の家のように、奴等が減び
るがいい。イワンコ。奴等が我々の
種族を減ぼしおったと云うのに、お
前は……」
イワン「お母さん!」
 屋根板を茸いていたイワン、屋根
から降りて梯子をはずす。
パリーチュクの妻「息子よ、(泣き
ながら)お前が主人にはならず、仕
事を探して人に使われるなんて考え
ても見なかった。……パンのために
働きに出るのは」
イワン「お母さん」
パリーチュクの妻「残された私はど
うなるのかね。息子よ」
 母はイワンの肩にすがりつく。
イワン「お母さん、しっかりしなさ
い」
パリーチュクの妻「それも仕様がな
い……そうするがいい」
 母は袋をイワンに持たせる。
イワン「行って来ます」
パリーチュクの妻「無事に暮らして
おくれ」
 母は息子に十字を切ってやる。イ
ワン、振り切るように去る。
パリーチュクの妻「神よ、息子のイ
ワンをお護り下さい。そして私ども
の子供、ミハイル、ダニール、アン
ナ、ワシーリー、ミコーラ、オレク
サの冥福をたまわりますよう」
 家の軒先の縁に腰かけ、祈りの言
葉を続ける。
パリーチュクの妻「我等が父よ。天
にましまして、名を浄め、その御心
が支配なさるなら、我に豊かなみの
りを今すぐ与えたまえ……」
谷間にかかる丸木橋
 イワンは、踏み板を通って河をわ
たる。
 岸辺では女達が!先濯をしている。
イワン「ごきげんよく」
女 達「いつまでも、ごきげんよく」
イワン「ごきげんよく」
女 達「いつまでも、ごきげんよ
く、仕合せに、イワンコ」
イワン「大きに有難とう」
女 達「お仕合せに」
イワン「有難とう」
 丸木橋にマリーチカが現れる。
女達はマリーチカの姿に笑い声を
あげ、何かささやき合う。
一人の女「イワンコはポローニナに
行ったと言うのに、あの女は……」
もう一人の女「マリーチカ、よく眠
れた?」
最初の女「マリーチカ、よく眠れ
た?」
マリーチカ(照れながら)「よく眠
れたわ、あなたは?」
森の中
 マリーチカ、森を行く。
マリーチカ「イワ!」
 かもしかが振りかえる。
 イワンの声が聞こえて来る
イワン「マリーチカ」
歌 声「河の向こう岸で」
 マリーチカがイワンを追う
歌 声「藁が焼けた
    来ておくれ、来ておくれ
    私は病気になってしまった」
マリーチカ「イワンコ、行ってしま
うの?」
イワン「行ってくるよ、マリーチ
カ、これも運命だ」
 イワン、マリーチカをかき抱く。
イワン「冬までに戻って来る、待っ
ていてくれ」
「病気になったとは
  頭でも痛いのか」
 雨が振り出す。イワンが自分の帽
子をマリーチカの頭にかぶせる。
「来ておくれ、来ておくれ
  災の時だけでも」
マリーチカ「イワンコ。私は夜にな
れば、ポローニナの空に輝く星を見
ます。あなたも見て下さいね」
イワン「よし、マリーチカ、二人で
見よう」
「おお、良き夜よ、
  私は、この上なく愛す
  よき夜よ、私はポローニナに行
  く、
  夜の灯りを目あてに」
イワンとマリーチカ別れる。
ひとり残ったマリーチカ、雨の中
ただずんでいる。
「私はポローニナに行く
  あの古い森ヘ、
  私はどうしてこの夏を生き
  て行くか。自分の運命を思う」
マリーチカ「イワー!」
 両手で顔を掩うマリーチカ。
「私は、どうして、夏を生きて行
  くか
  自分の羊を飼って行けるか
  マリーチカよ、お前なしでは
  おれは死んでしまう」
 イワン、若い松の木の間を登って
いく。
イワン「マリーチカ!」
マリーチカの家の近く
 高い棚の続く道をマリーチカが行
く。
 向こうからヒムカ婆さんが来
る。
ヒムカ「ごきげんよう!あんたは
誰の子だったかね、グチェニュクの
かい?まあ、何と美しい子だこと。
マリーチカ、ほんとに美しいよ、マ
リーチカ、マリーチカ、こけももの
(10)
「火の馬」パンフレット(1991年発行)より転載 <- 前へ 次へ ->
HomePageソヴェート映画史−七つの時代資料館
服部美術館チグラーシャ・クラブ掲示板通信販売松本支局
広告 [PR] にきび  わけあり商品 資格 再就職支援 無料レンタルサーバー