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「火の馬」(1991年4月26日発行)より転載
建築中の家の傍
 イワンが建築中の小屋の敷居に掛
けてドリムバ(楽器)をならしている。
 女の声が聞こえる。
「私の古い家が壊れてしまった。
それで私は牛を売って、みなし子の
イワン・パリーチュクを雇い、新し
い家をたてさせることにした……」
 一人の女がやって来て、イワンの
前に飯腕を置き、スプーンを添え
て、側に立ったまま見ている。イワ
ンは楽器をならし続ける。
「イワンは私のところで働いてい
る。もう、まる一カ月になる。彼は
何を考えているのか知らないが、可
愛そうに何時も考えごとをしてい
る。私が訊いても、言おうとしな
い。ただ坐ってドリムバをならしが
ら考えている。」
教会で働くイワン
 イワン、教会の屋根から梯子を伝
わって降りて来る。
 二人の女の会話が聞こえて来る。
「お前、どこに行ってたの、マリ
ーチカ?」
「クラスノポーリエの僧侶のとこ
ろまで」
「何しに?」
「塩漬肉を少しと、私の息子のド
ミトリーの墓にお供えするのに酒を
五本持っていったのだけど、あそこ
でイワンを見たわ」
「どこのイワン?」
「パリーチュクの」
「まあ!」
「屋根にペンキを塗ったり、十字
架を作ったりしていた。私はよくわ
からないけど、何だか気に入らな
かった。とても寒くて、私は毛皮外
套を着てても凍える位だった。イワ
ンは可愛そうに破れ服を着ていた…
…」
雪の祠の前
 イワンは祠に近づいて、ローソク
の火で手を暖めている。
「ジヤビエでもクリヴォリブニで
も、ここでも本当に寒かった。学者
の話だと、今年は、何でも凍るほど
寒くなるんだって」
 イワンが手を暖めようとして、息、
を吹きかけるのでローソクの人が消
える。
 キリスト磔りつけの像。その像に
ミーコの顔、少年の頃のイワンの顔
が次々とオーバーラップする。
 成人したイワンコ、息をかけて手
を暖めている。
 ミーコの像、自分で作った光輪を
頭からはずす。
 燃える光輪が落ちる。その上で誰
かが手を暖めている。
 二つの手が白い小羊を撫でている
が、小羊は起ち上がって、去る。
 三人の若者がドリムバをならす。
クリスマスの歌が始まる。雪の吹
き込んだ祠にイワンが坐っている。
目をさまして小羊を抱き、祠の外に
出る。あたリ一面の雪。イワンは体
を暖めるため、山羊と一緒にくるく
るまわる。
「よきこの夜 みな喜び合え!
  大地よ この世に生を受けし神
  の子よ
  卓に敷布をかぶせて、喜び合え!
  大地よ 生を受けし神の子よ
  豊かなる稔りの麦より作れる
  パンを供えて 喜び合え!
  大地よ 生を受けし神の子よ
  よろこび合え!」
 女たちの声が聞こえる。
「元気かね?」
「元気です。クモーニカ、あなた
は?」
「ええ、お前さん、どこに行って
たの?」
「男の人と飲んでまわってまし
た」
「うちの連中と、それともマ
ジャール達と一緒に?」
 祠の側にイワンがいる。
「あそこで、マジャール達とよ」
「知ってるかい、聖夜にはマ
ジャール達は馬でやって来たと思う
と、村全体に……」
「そりゃ、飲んで踊って、そして
若者たちと十二日節を歌いました
よ」
「お前、祠のそばに立っていたイ
ワンを見たかい?」
 酔った人達がイワンの方に近づ
く 。
「そりゃ見ましたよ、クモーニ
カ」
「いい男だろう?」
「それで、何かいいことがあった
んでしょう」
「私はあの人にウオッカを一本
やって、ローソクを手に渡し、リン
ゴをかじらせてあげた。あの人、と
ても喜んでいたよ」
「イワンは皆にのまされて、山羊
が柳の木によりかかる様に、若い百
姓女に寄りかかっていましたよ」
 イワンが盃に女からウオッカをつ
いでもらっている。イワン、百姓女
と接吻する。女は彼に、リンゴをか
じらせ、ローソクを手渡す。
見事に紅葉した森の中
 イワンが葉の落ちたリンゴの本に
登る。残っていた最後の実をもぎと
る。
 黄金色の葉の本立を透して結婚式
の行われている光景。
 結婚式の歌が響く。
「さ、踊ろうよ、
  お前一人が若くてきれいだ
  意気の良い駒に、鞍を置こうよ
  きれいな娘を、一緒に乗せて駆
  けようよ」
鍛治屋の前
 鍛治場で、若いパラグナが、ふい
ごで火をおこしている。
 歌が聞こえる。
「さ 踊ろうよ 踊ろうよ
  お前一人が 若くてきれいだ」
 白馬を撫でていたイワンが上着で
リンゴをこすりながら、パラグナの
方を見ている。
 パラグナが寄ってきて、イワンに
しなだれかかる。
「意気のいい駒に、鞍を置こうよ
  きれいな娘を 一緒に乗せて期な
  けようよ」
 イワンがパラグナを抱きよせよう
とするが、彼女はすりぬけて、蹄鉄
をイワンに渡す。
「娘さん、おじぎをしなさい」
  低く頭を垂れなさい
  お前の若い運命は
  もうすぐやってくる」
 イワン、鍛冶場に行き、金槌を
取ってきて蹄鉄を打ちつける。
「リンゴの花が咲いた
  白い花が咲いた
  若い娘は
  悲しく泣いた」
パラグナが媚びるような表情でイ
ワンを見つめている。
 イワンが蹄鉄を打ちつけている。
 イワンは時々、蹄鉄を打つ手を休
め、パラグナを見つめる。
 パラグナが馬に乗っている。イワ
ンがパラグナに赤い洋傘を差しかけ
る。パラグナは、イワンを見つめて
いるが、馬から少しづつ身をずらし
て、赤い洋傘を手にしたまま、イワ
ンの手にくずれていく。イワンはパ
ラグナをその手に抱きとめる。
 イワン、林檎の木から離れ、林檎
をかじる。

タイトル「…イワンは結婚する。主
     となりはしたが…」

タイトル「イワンコとパラグナ」

イワンの新しい家の中
 イワンを木の桶の中に入れて、女
たちが!先ってやっている。
第一の女「イワン、お湯は暖かいで
しょうね。もし、お前のお母さんが
生きていたら、私達よりも、もっと
上手に洗ってくれただろうにね。お
(13)
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