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「火の馬」(1991年4月26日発行)より転載 |
イワン、息がつまる。 イワン「あ、私はお前を、マリチ コ、忘れる事が 出来ないのだ」 イワン「私達は 夫婦になろうか? 私達の生命のある限りは!」 マリーチカは、銀自の手で顔を覆 う 。 その手をイワンの方へさしのば す。まるでその手は、イワンの方ヘ 飛んでくるかの様である。 それから、イワンの手をつかむ。 イワンの声「あーあーあー」 タイトル「葬 式」 ●イワンの家 小屋の中で老婆が、イワンの死体 を洗ってやっている。傍らで男が祈 りをあげている。 老婆「何だかあの男、シャガレた声 で、変な具合に唄っているよ、水を 一杯、あの男に持って行ってやんな |
よ」 パラグナ「私のイワンが死んだ、も う居ないのだ。お前さんは、私を誰 の所に残そうって云うの?」 イワンの亡骸。 パラグナ、首飾りを身につけなが ら、無関心にお祈りの言葉を云って いる。 葬いの儀式が進んでいる。ミーコ が遺体の寸法を計っている。 パラグナ(お祈りをする)「イワン は死にました、死んだのです。もう 私のイワンは居ないのです。ああ神 様、ああ神様!」 ミーコは板を削っている。 娘がリンゴをとる。 イワンの手に金貨がおちる。 グツールの歌「麦粉は誰にやろうか 麦粉は誰に 麦粉は誰に 麦粉は誰に 麦粉は誰に 麦粉は誰に 麦粉は誰に 私は結婚する 誰と? |
パラスカと ハハハ」 人々の葬いの儀式がたけなわと なった頃、急にだれかの冷静な声が 聞こえてくる。 男の声「ねえお前さん、聞いて下さ いよ。私、今、憶い出した事がある んだよ。 いつだったか、昔のこと、イワン と羊の放牧をした事があったのだ。 そのときイワンが云っていた。死ん だら、あのきれいな白い服を着せて 葬って下さい。あの服は、ずっと前 に、若い頃に着た服なんだ、そう 云ってた。 私は、あの可愛そうな奴が、そん な事を云うのを聞いてびっくりした んだよ」 窓から八人の子供が部屋の中を見 ている。 ただ木を削る音のみが響いている。 上映時間 1時35分 |
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「火の馬」パンフレット(1991年発行)より転載 | <- 前へ 次へ -> |
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