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「グリゴーリー・チュフライの世界」(1990年5月25日発行)より転載
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くかいせつ〉
 「君たちのことは忘れない」は、78年11月
21日より79年2月中旬まで、モスクワ市内の
代表的ロードショウ館“ロシア”と“十月”
の2館で公開されていたが、軍当局の指示で
上映中止となり、同時に海外へ出すことも禁
ぜられた“自宅監禁”映画である。
 映画は夫や長男をすでに戦場に送つた農婦
マトリョーナが、次男をこの上、戦いで死な
せたくないと屋根裏に匿う話だが、チュフラ
イ監督はかつて新聞に掲載されていた、12年
間、箱の中に隠れていたという兵役忌避者に
ついての記事をヒントにこの映画を製作した
と語っている。また、「危険から自分の息子
たちを護りたいという母親たちの気持が子供
たちを積極的で活気ある生活から隔離してし
まうことになる」ことを示したかったとも
言っている。
 この映画は又、そうした母と子の情愛、葛
藤をその広大悠久のロシアの自然やそこに培
われたロシアの人々の心を伝えるロマンチシ
ズム溢れる流麗端正な映像に描くことで、親
と子とは、国家と個人とは、男と女の愛とは、
など我々にさまざまな問いかけをしている。
 薄闇に沈む曠野を翔ける自馬の自い騎士、
白銀の広野に橇を走らす母――壮大で華麗と
も言うべき映像、そして国の運命に翻弄され
る幾つもの愛を慈しむような抒情と哀切にみ
ちた音楽、いづれもチュフライ作品の真髄が
うかがえる。
 主演は父親がパルチザンだったというノン
ナ・モルジュコーワ。ロシア女性のおおらか
さと、刻々と不安と緊張に追いつめられてい
く母親の内面を好演している。1925年生まれ
で、出演作も多く、その役者歴はソビエト映
画のヒロインの歴史を映しているとも言われ
る。
 共同脚本のヴィクトル・メレシヨは1939年
生まれで、国立映画大学脚本科出身。「絆」
(82)「夢は舞う」(83)他の代表作があり、
現代人の内面にかかわるモラルの問題を取り
あげた脚本には定評がある。映画の出演作も
あるが、最近はめまぐるしく変貌しつつある
映画界の現況を伝えるレポーターとしてTV
にも登場している。
ТРЯСИНА(TRYASINA)THE MIRE(泥沼)
製 作  モスフイルム 1973年(14巻
      2時間10分)
脚 本  ヴイクトル・メレシコ/グリゴー
      リー・チュフライ
監 督  グリゴーリー・チュフライ
撮 影  ユーリー・ソコル/ミハイル・デ
      ムロフ
美 術  コンスタンチン・ステパノフ
音 楽  ミハイル・ジフ

くキャスト〉
マトリョーナ………ノンナ・モルジュコーワ
ステパン……………ワジーム・スピリドノフ
ミーチヤ……………アンドレイ・ニコラエフ
ニーナ………………ワレンチナ・テリチキナ
グリシカ………………ワレーリー・ノーシク
カーチヤ………………ガリーナ・ミケラーゼ
コルナコフ………アルカージー・スミルノフ
コルナコワ…………ヴエーラ・クズネツォワ
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