<かいせつ>
戦後ソビエト映画の代表作「誓いの休暇」
は、いわゆる“雪どけ”時代の1959年に製作
され、翌60年には各地の国際映画祭の賞を総
なめにして、グリゴーリー・チュフライ監督
の名を不朽にした作品である。日本でも1960
年に公開され、60年度キネマ旬報ベストテン
にも選ばれた。TVでは今もなお、時々放映され
るなど、ソビエト映画のなかでも日本の観客
にこれほど広く親しまれた作品は少ない。
戦いの合間の束の間の静謐と安らぎを彷彿
させる自黒の端正な画面、淡く、はかない青
春の輝きを好演した主演の二人の初々しい演
技、そして何よりもこの映画を貫ぬく、暖か
くヒューマニスティックな監督のまなざし。
公開当時、戦争映画でありながら、戦闘シー
ンの登場しない映画としても話題を集めた作
品である。
少年兵アリョーシャを演じたウラジーミル・
イワショフは1939年生れ、国立映画大学俳優
科2年に在学中に抜擢され、純真でひたむき
な若者の内面をユーモアのセンスに溢れた演 |
技で熱演、イタリアのサン・ヴィンセント文
化協会より、61年ヨーロッパ最優秀男優賞を
受賞するなど、国際的名声を馳せた。以後、
甘いマスク、端正な容姿で同世代人を演じて
人気があり、「すみれをつけたおばさん」64「九
月になれば」76 「ピルクスの審問」80他の代表
作があり、映画俳優スタジオ劇場の舞台にも
立っている。一方、ヒロインに扮したジャン
ナ・プロホレンコもやはリモスクワ芸術座演
劇学校在学中の学生だった。1940年生れで、
そのあどけない表情、純朴なまなざしで観客
を魅了した。その後も「赤いカリーナ」74 「朝
やけから朝やけまで」75 「新任者」78他でけれ
んのない、抒情味豊かな演技が好評である。
共同脚本のワレンチン・エジョフも、「誓い
の休暇」で認められ、「貴族の巣」「シベリヤの
詩」「砂漠の白い太陽」など多数のシナリオを
手がけ、最新作に日ソ合作「オーロラの下に」
がある。作曲家ミハイル・ジフは「誓いの休
暇」以後、一連のチュフライ監督作品の音楽
を担当、名コンビぶりを謳われている。 |