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無断転載を禁ず -P22- 「ふたりの駅」パンフレット(1985年10月12日発行)より転載

手で頭の回転が早い人よ」
プラトン「(嘲笑いながら)商売上の付
きあいってわけかい? デートかと思
ったのは商談か?」
 プラトン、立ち止まってはまるで捨
てゼリフを吐くようにわめいている。
ヴェーラも足を止め、説得する口調で
熱弁を振るう。
ヴェーラ「本当に商談だったのよ」
プラトン「あれが商談なら僕たちの仲
は本物だ」
ヴェーラ「バカな事言わないでよ。小
さな商談には乗らないわ」
プラトン「マクワウリは、キロ3ルー
ブルだろ? 大仕事か?」
ヴェーラ「まとまれば大きいわよ。説
明するわ。儲けはキロ50カペイカ。ア
ンドレイは1ルーブル半、取るの。そ
れが原価と彼の儲けだわ。残りの1ル
―ブルはショバ代よ。コルホーズに払
うの」
"ミーシャ小父さん"の居間
 "ミーシャ小父さん"と呼ばれる、中
年の恰幅の良い女性の家。壁には信号
掛をしていた頃のかの女の肖像画が掛
けてある。部屋にある調度品などから、
なかなかの羽振りと見受けられる。
ミーシャ小父さん「(ヴィデオカセット
の画面を見ながら)ダメよ。神経痛が
出ちゃって歩けないの」
ヴェーラ「ミーシャ小父さん、これは
マクワウリよ。日持ちしないのよ」
プラトン「(けげんそうに)小父さんで
すか?」
ミーシャ小父さん「ミーシャは死んだ
夫なのよ。この仕事やってて皆にあり
がたがれてたの。私が引き継いだって
わけ」
 電話のベルが鳴る。
 "ミーシャ小父さん″口もとに受話
器を寄せささやくように――
「6ルーブルでいいわ。今、お客だか
ら、あとにして。(受話器を下ろし、プ
ラトンの方を向いて)夫は轢かれたの、
貨車に。酔ってたのよ。(壁に掲げた夫
の写真を指し示しながら)私はミーシ
ャ小父さんの二代目さ」
ヴェーラ「このマクワウリを何とかし
て」
 ヴィデオカセットの音楽が止み、カ
セットを取り出す"ミーシャ小父さん"。
ミーシャ小父さん「いつでも力になっ
てあげるよ。大事なビタミンだし」
プラトン「人民の健康が心配ですか!」
ミーシヤ小父さん「冗談でなく、心配
さ。あいつらに任せておけるかい。八
百屋の品物を見るがいい。ろくなもの
置いてないだろ?私はいい物しか扱わ
ないよ。あいつらなんか……」
 笑いながらも領いているヴェーラ。
得意気にしゃべり続ける"ミーシャ小
父さん"。
ミーシャ小父さん「スイカは熟れてな
い。トマトは青い。私はイチゴ一粒に
も気を配って出すんだから。経験と誠
意さ。果物も野菜も扱い方次第なんだ
から。(ヴェーラにあらためて訊ねる)
この人は?」
プラトン「幽霊です。旅券も金もない」
ヴェーラ「汽車に乗り遅れたのよ」
 ヴェーラと"ミーシャ小父さん"は逃
げ腰のプラトンに何とか市場でマクワ
ウリを売らせようと説得する。
ミーシャ小父さん「ウズベク帽をかぶ
せてマクワウリを売らせよう」
プラトン「(苦笑しながら)まさか!物
売りなんか……」
ミーシャ小父さん「売子たちの逆をや
ればいいのさ。にこにこして愛想よく
するんだよ。秤も甘くしてやるといい。
サービスさ。よそは野菜を濡らして売
るけど」
 唖然とするプラトンを二人の女は顔
を見合せながら嘲笑っている。
ミーシャ小父さん「なぜか分らないの
? 世間知らずねえ。重くして高くう
るためさ。あんたのマクワウリは乾い
ているわ。市場に電話しとくよ。秤も
上っぱりも貸してくれる」
 プラトン、逃げるように戸口の方へ
移る。"ミーシャ小父さん"がラジオに
スイッチを入れると、古い民謡が流れ
てくる。
プラトン「イヤだよ、君が売れ」
ヴェーラ「私は仕事があるでしょう」
プラトン「僕は音楽家だ」
ミーシャ小父さん「音楽も売物よ」
ヴェーラ「国際コンクールの受賞者な
の」
プラトン「まあね。よしてくれ」
ミーシャ小父さん「やってごらんよ」
ヴェーラ「頼むわ。(拒み続けるプラト
ンに向って強い調子で)エゴイスト。
お願いだから」
"ミーシヤ小父さん"の玄関の間
 プラトン、まるで追いつめられたよ
うに思わず腰かけ――
「闇屋なんか、イヤだ」
ミーシャ小父さん「闇屋じゃないよ。
生産者と消費者の伸立ちさ。役に立つ、
りっばな仕事だよ」
プラトン「恥ずかしいよ」
コルホーズ市場・果物の売場
 秤とマクワウリを並べた売り台。ウ
ズベク人と頭の秀げた男にはさまれて
同じ様にまいかけ姿のプラトンが、お
じけづいた表情でウリを売っている。
 ウズベク人の物売りの声と買物客の
声が行き交っている。
ウズベク人「14ルーブル、おいしいマ
クワウリだよ。うちのマクワウリは特
別、甘いよ。甘くて、おいしい折紙つ
き。(客にウリを渡し)12ルーブルだよ、
いらっしゃい。マクワウリ、いかが?
うちのが最高だよ」
 群がる客たちのなかに花柄のワンピ
ース姿のヴェーラがいる。
プラトン「(低い声で)さあ、皆さん」
 プラトンの売り台の値札に気づいた
客が騒ぎ出す。
客の声「まあ、強欲な!」
客(V)の声「何だと思ってるの?」
客(W)の声「くたばるといい」
女性客U「1個15ルーブルだなんて」
物売りの男「暴利だよ」
 売台を前にして立つプラトンに周囲
の視線が集中する。
男の客「向うはキロ2.5ルーブルよ」
物売りの男「ボロもうけだ」
女性客I「見てごらんよ。この生白い
手。きっと旅人だわ。悪い奴ね」
女性客U「図々しい顔してるよ」
 ヴェーラ、評定している客たちの中
に見かねて割こんでくる。
ヴェーラ「(周囲の客に)買わないでい
じめるなんて悪いわ。(マクワウリを触
ってみて)いい香り」
プラトン「チュジュイ名産です」
女性客U「15ルーブルよ」
ヴェーラ「(プラトンに)計って。(女性
客に向って)自分の顔、鏡で見るとい
女性客U「まあ、下品な所だこと。店
よリサービスがいいかと思ったら」
ヴェーラ「(傍のウズベク人の台を振り
向いて)
「こっちのウリは甘くないわ」
ウズベク人「どうして?」
ヴェーラ「品種を見れば分るのよJ
客たちがウズベク人のマクワウリを
試食している。
ウズベク人「学者かい?」
ヴェーラ「専間家よ」
ウズベク人「食べてみな」
ヴェーラ「見れば分るわよ」
ウズベク人「食べてみなよ」
 ウズベク人の誘いに乗らないヴェー
ラの耳もとにプラトンが声をかける。
プラトン「よく来てくれた」
 二人の様子をうかがっていたウズベ
ク人が野次を飛ばし、他の物売りも寄
り集って売り台の奥はひと騒ぎとなる。
ウズベク人「こいつの女だ!サクラだ
な」
ヴェーラ「バカなこと言わないで。初
めて会った人よ」
ウズベク人「俺は本物だよ。うちの畑
でとれたから安い」
プラトン「本物の間屋だろう。トマト
を知ってるか?」   ’
頭の禿げた男「何だと?バカヤロウ」
ヴェーラ「(周囲をなだめるように笑い
声で)冗談が分らないの」
帽手を被った物売り「得体の知れない
連中だよ」
女性客T「バカ高いわ」
帽子を被った物売り「警察を」
 考えあぐねていたプラトンが思い直
したように売場の男たちに――
「警察を呼ぶまでもない」
頭の禿げた男「(威勢よく)そうさ、一
発くらわしてやろう」
プラトン「(愛想よく)皆さん、私は初
めてでうまく売れません。厄介ばらい
させて下さい」
ヴェーラ「(つりこまれるように)まと
めて安くします。まとめて買わない?
うんと儲かるわよ」

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