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無断転載を禁ず -P23- 「ふたりの駅」パンフレット(1985年10月12日発行)より転載

 プラトンとヴェーラの誘いに、取り巻
いている物売りたちも乗ってくる。
ウズベク人「キロ、1ルーブルなら」
ヴェーラ「それなら食べてしまうわね」
帽子を被った物売り「1ルーブル20」
プラトン「あんまり安すぎる」
ウズベク人「1ルーブル30」
頭の禿げた男「1ルーブル40」
プラトン「原価が1ルーブル50なんだ」
ウズベク人「どうする?」
ヴェーラ「こんないい話ないわよ。儲
けるいいチャンスでしょう」
 ついに商談は成り立たず、プラトン
は急に活気のある物売りの声をあげ始
める。初め半信半疑のヴェーラも両手
をたたいてはやしたて、わっと寄って
きた客に驚いて今度は飛びのく。
プラトン「ヤケの安売りだ! 誰が買
う?このマクワウリ。蜜のように甘く
て柔かだ。さあ、早い者勝ち! 特上
品がキロ、1ルーブル半だ。さあ、早
い者勝ちよ」
効外・バス通り
 緑がうっ蒼とある郊外。バスを下り
たヴェーラ、見送ってきたプラトンとす
っかり打ち溶けた態度で話す。
プラトン「しかし、いい所だな」
ヴェーラ「駅や食堂のガヤガヤした所
から帰ると、生き返るような思いがす
るわ」
プラトン「夜、怖くないか?」
ヴェーラ「もう慣れっこよ、時々ヴィ
オレッタと一緒になるし。でも二人と
も疲れ果ててるから、重い荷物もって
黙々と歩くだけ。男が話しかけると彼
女は相手になるわ。オールドミスで結
婚したがってるの。もうガタが来たっ
て言ってるけどね。電話番号を教えて
も反応ないらしいわ。かわいそうな人。
もう大丈夫よ。ありがとう」
木の橋
 二人は小さな木の橋にさしかかると、
立話をする。列車の音が聞こえる。
プラトン「これで眠れる?」
ヴェーラ「慣れよ。静かな所だとかえ
って眠れないわ。この音がないとね。
家は全く線路ぎわなんだから、家賃も
安いってわけ」
プラトン「(ヴェーラを引き止めなが
ら)まだ大事な質問があるよ。今夜、
予定がある?」
ヴェーラ「(笑いながら)また待合室に
誘うの?」
プラトン「(ヴェーラのワンピースを
誉めて) ドレスが惜しいよ」
ヴェーラ「もっといい服を持ってるわ」
プラトン「レストランに、ご招待しよ
う」
ヴェーラ「(思わずプラトンの方に歩み
寄り)まあ、嬉しい。レストランなん
て久し振りよ」
プラトン「招待するよ」
 ヴェーラ、線路を渡って線路沿いの木
戸に姿を消す。橋の上で待つプラトン。
ヴェーラの家の木戸の前
 ドレスアップして現われたヴェーラ、
通過列車に遮られて線路を渡れない。
木の橋
 ハミングしながらそっとプラトンに
近づくヴェーラ。シックな装いのヴェ
ーラに感嘆の声をあげるプラトン。
バス通リ
 ヴェーラ、バス停に向って歩き出し
ながら、無一文のプラトンにあらかじ
め金を渡そうとする。
ヴェーラ「今夜は遅くなるって言って
きたわ」
プラトン「金を渡す気?」
ヴェーラ「男が払うのよ」
プラトン「どこがいい?」
ヴェーラ「よかったら私の働いてる所」
プラトン「見せびらかすのかい?」
ヴェーラ「そうよ」
プラトン「金はいい」
ヴェーラ「食い逃げするつもり?」
プラトン「常習犯と思ってるね。大丈
夫、ちゃんと払うから」
ヴェーラ「どうやって?」
プラトン「秘密だよ」
バスの停留所
 バスに乗りこむ二人。
プラトン「見てのお楽しみ」
ヴェーラ「スリルだわ」
プラトン「切符だけ買って」
ヴェーラ「いいわ、私はパスよ」

タイトル ふたりの駅・第二部
 夜のプラットホームにタイトルがか
ぶる。
ザストゥピンスク駅の
レストラン・夜

 シューリクの楽団が演奏する軽快な
音楽に併せて客が踊っている。向き合
って腰かけているプラトンとヴェーラ。
片隅から二人の様子をじっと横目で見
ているヴェーラの同僚たち。
ヴェーラ「あきれた。誰も来ないのね」
プラトン「嫉妬してるんだろう」
ヴェーラ「(笑顔で)そんな仲に見える
かしら。あなたのせいよ」
プラトン「光栄だね」
 ウェートレスのリューダ、ヴィオレ
ッタ、ジャンナ、時々ヴェーラと視線
が合うがなかなか注文を取りに来ない。
やっとヴィオレッタがみこしをあげ、
メニューを持って近寄ってくる。
ヴィオレッタ「いらっしゃいませ」
ヴェーラ「(ヴィオレッタの注意を引く
ように)私が分らないの?」
ヴィオレッタ「(小声で)遠慮してたの
よ」
ヴェーラ「(得意気に)紹介するわ。プ
ラトン。ピアニストよ」
ヴィオレッタ「ヴィオレッタです。ご
注文は?」
プラトン「(メニューをヴェーラに手渡
しながら)ご婦人に決めて頂く」
ヴェーラ「暗記してるわ。夢にまで見
るのよ。さてと…… 何を飲む?」
プラトン「コニャックでも」
ヴェーラ「アルメニアの二つ星。300cc
くらい?」
 領くプラトン、今度はヴェーラが洩
らす料理場の裏話に思わず気を引きこ
まれる。
ヴェーラ「じゃ、300cc。私のだから割
ってないのを出してね」
プラトン「何で割るの?」
 ヴィオレッタ、うろたえて言葉を濁
す。
ヴェーラ「(注文を続けて)オードブル」
ヴィオレッタ「チーズしかないわ」
ヴェーラ「シェフに言ってよ。ソーセ
ージとサラダ。(プラトンに)キェフ風
カツは?(ヴィオレッタに)二人分ね。
いい方の油です場げさせて」
プラトン「(驚いた表情で)いつもは何
の油?」
ヴェーラ「そんなこと知らなくていい
の。アイスクリームも」
プラトン「(納得した表情に変ってヴィ
オレッタに)ヴェーラが食べるんだっ
て言ってね。混ぜ物しないように」
 呆気に取られて急に笑い出すヴィオ
レッタ。
プラトン「例のヴィオレッタだね」
ヴェーラ「そうよ。とってもいい人。
美人だけど、ついてないの」
 プラトン、空ろな表情を浮かべてい
る。
矯正労働収容所・回想
 囚人服のプラトン、棟内の床を洗っ
ている。
 レストランの音楽は止み、ヴェーラ
の声が響く。
ヴェーラの声「あなたの心は遠くに行
っている。帰ってきて」
レストラン
 我に返ったプラトンがヴェーラに深
刻な表情で打明ける。
プラトン「家内と空港から帰る時だっ
た。友人を見送ったあとだ。家内の運
転で。僕はあまり車は好きじゃないが
――。彼女は車好きで運転もうまい。
だけど突然、人が飛び出したんでね。
急ブレーキをかけたが」
ヴェーラ「酔っ払い?」
プラトン「検死の結果、しらふ、だった」
ヴィオレッタ「(コニャックのフラスコ
を持ってきて)お待ちどおさま。今、
オードブル、持ってくるわ」
プラトン「(腕時計を見ながら)テレビ
はないのかい?」
ヴェーラ「奥にあるわ」
 プラトン、いぶかしげなヴェーラを
促しながら奥のテレビのある部屋へ向
う 。
プラトン「見れば分る」
駅長室・テレビジョンの前
 プラトン、テレビのスイッチを入れ
るが画面はなかなか映らない。二人は
テレビの側に腰かける。
プラトン「そのあと家内は大変だった。
泣き叫んで。もう破減だと言ってヒス
テリーを起した。テレビに出られない、
と」
ヴェーラ「局の人?」
プラトン「今、分るよ。このテレビ、

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