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無断転載を禁ず -P26- 「ふたりの駅」パンフレット(1985年10月12日発行)より転載

ば」
プラトン「僕が否定する。仕方ないだ
ろう」
ヴェーラ「(膝を抱えこんでうつ向いて
いるが、顔をあげると涙声で)そうね、
私なんか…… どうせ…… 二度と会
えないものね」
プラトン「壁ごしに話すなんて不自然
だよ。おいで」
ヴェーラ「行かないわ」
プラトン「(立ち上り)じゃ、僕が行く
よ」
ヴェーラのコンパートメント
 錠を下ろしたドアの把手が激しく揺
れる。
ヴェーラ「(姿見に映して髪形を直しな
がら)ダメよ。見かけによらず、ハレ
ンチね」
客車・廊下
 ヴェーラのコンパートの前でプラト
ンがドア越しに話している。
プラトン「中立地帯で会おう」
ヴェーラ「トイレじゃないでしょうね」
プラトン「せめて廊下で」
ヴェーラ「ダメ」
プラトン「僕は筋を通すってば」
 ヴェーラ、ドアを開けてプラトンの
胸に身を投げてくる。
操車場
 停車中の客車の窓に、強く抱擁するプ
トンとヴェーラの姿が映る。
 鉄道員が客車の車輪を点検しながら、
話をしている。
鉄道員T「野中の一軒家だよ」
鉄道員U「空気がいいだろう」
鉄道員T「当分バスも電車もないけど
ね」
プラトンのコンパートメント・朝
 外から窓ガラスをこする大きな刷毛
に気づいたプラトン、驚いて外の様子
を覗いている。
客車・廊下
 隣のコンパートには既にヴェーラの
姿はなく、動き始めた車師から慌てて
下りるプラトン。
レストラン
 線路を歩いてレストランに立ち戻っ
たプラトンの姿が、窓ごしに見える。
レストランではウェイトレスや守衛
が思い思いに一時の休憩をしている。
ヴェーラ、窓を背にひとり離れて椅
子に掛け、憂いを含んだ瞳で歌を口ず
さんでいる。
ヴェーラ「ここの暮しは平凡で/王国
みたいに単調だ/カードに賭けよう、
ためらわず/人生をやり直そう/あの
頃は若かった/躍る心も今はない/一
か八かに体当り/恐れず、も一度出直
そう/財産なんて何になる/あの世で
使えるわけじゃなし/人生、新たにや
り直そう/悲じむことはない」
 全神経を集中させておずおずとヴェ
ーラに近づくプラトン。
ヴェーラ「(唄いつづけて)ツキが回っ
て来なくても/ゼロになってももとも
とさ/勝ちもしないが負けもない。(ひ
とり言のように)シューリクの歌よ」
プラトン「(ヴェーラに軽く会釈して)
お早う」
 空ろな目差で会釈するヴェーラと
ウェートレスがプラトンに席をすす
める。
アーニャ「朝食をどうぞ」
ヴェーラ「(微動だにせず腰かけたま
ま)召しあがれ」
 プラトン、アーニャが運んできた朝
食を前にして、思わずヴェーラの方を
振り返る。なおも口ずさんでいるヴェ
ーラ。
矯正労働収容所・回想
 鉄条網ごしに煙草を吸う囚人服姿の
プラトンに列車の発着を知らせる駅の
アナウンスがかぶる。
プラットホーム
 行進曲の放送が始まる。ホームに入
ってくる列車の降車口にアンドレイが
いる。制帽に稿模様のシャツ姿のアン
ドレイ、列車が止まると、帽子を取っ
て別の車掌に預け、トランク2つを持
ってレストランに向かう。
レストラン
 プラトン、テーブルで食事を取って
いる。プラットホームに面した窓にア
ンドレイの姿が映る。
 アンドレイに気づいたアーニャがヴ
ェーラに耳うちする。乗客用のランチ
を配膳しようとしているヴェーラ、動
揺の色を隠せない。
アナウンス「ニュースをお伝えします。
わがサッカー・チーム"アヴァンギャ
ルド"はヴォロネジ市チームに勝ちま
した。繰り返します。今、入ったニュ
ース、わがサッカー・チーム"アバン
ギャルド"はヴォロネジ市チームに勝
ちました」
 プラトンもホームにいるアンドレイ
に気づく。
レストラン・サイドテープルの前
 レストランになだれこんでくる乗客
たちに混じって入ってきたアンドレイ、
配膳の支度をするヴェーラに後から近
づく。
アンドレイ「(ヴェーラの背に接吻しな
がら)来たよ。元気?」
 アンドレイ、立ち働いているリュー
ダにも愛想よく、みやげを渡しながら
「リューダ、こんにちわ。受けとれよ。
(何か言いたげなヴェーラに)髪の形が
変ったようだな」
ヴェーラ「(素気なく)変えたの」
アンドレイ「とてもよく似合うよ」
 ヴェーラ、周囲の眼をはばかるよう
に調理場に近い、寡会コーナーの仕切
りの方へ歩き出す。アンドレイ、追い
かけるようにヴェーラに向って――
「オーストラリア製のブーツを仕入れ
た。1足200ルーブル。(急き立てるよ
うに)ヴェーラ、20分停車だ」
レストラン・宴会コーナーの仕切り
の前

 仕切りの柱に凭れるようにして立つ
ヴェーラ。傍にアンドレイが立ってい
る。仕切り越しには、腰かけているプラ
トンが見える。
ヴェーラ「(正面を見すえて)もう、乗
らないわ」
アンドレイ「無理いうなよ。ほかの所
は……。」
ヴェーラ「そうじゃないの。(訴えるよ
うに、アンドレイを見つめながら)実
は…… 悪い話よ」
アンドレイ「(気楽に)マクワウリのこ
とか?」
ヴェーラ「(もどかしげに)そうじゃな
いわ」
アンドレイ「ほかに何がある?」
ヴェーラ「あんたに悪いことしたの」
アンドレイ「何でもいい、早くしよう」
ヴェーラ「とても悪いこと」
アンドレイ「(あらためて腕組みして嘲
笑うように)何だ。男でもできたのか
?誰だ?」
 こわばった表情のプラトン、アンド
レイにむかって直進してくる。
 ヴェーラは2人の男の間に立って、
泣顔になって途方に暮れている。
プラトン「(正面きって)旅券」
アンドレイ「(旅券を返し、横柄に)あ
あ悪かった。ちょっと向うで飲んでて
くれ。俺がおごるからさ」
ヴェーラ「(すかさず金を差し出し)
マクワウリのお金よ。トランクは向う。
(金を受取ったアンドレイに)清算し
たわ」
プラトン「(アンドレイを見据えて)話
がある」
アンドレイ「(鼻であしらうように)あ
とにしてくれよ」
プラトン「(食ってかかる)出て行け、
すぐに消えろ」
アンドレイ「この野郎が、そうか?
マクワウリの番を頼んだらひとの女に
手をつけやがったな」
プラトン「うすぎたない闇屋め。出て
行け。(手をあげて)張り倒すぞ」
アンドレイ「やってみなよ」
 アンドレイ、腕組みしたまま、向っ
てくるプラトンを力まかせに押し返す
と、そのはずみでプラトンは食器を並
べたテーブルにぶつかって倒れる。
 騒がしい物音にウェートレスが思わ
ず振り向く。
 アンドレイ、茫然とするヴェーラに
しつこく詰め寄る。
アンドレイ「恋は終りにして、ビジネ
スだけにするかい?」
ヴェーラ「ビジネスも」
アンドレイ「(プラトンに)痛い目、
みたいか?」
 騒ぎを聞きつけ飛んできた守衛、再
び取って返す。
守衛「警察、畔ぶか?」
 アンドレイ、ヴェーラと並んで柱に
凭れ、弁解しようとするヴェーラに耳
を貸さず、一気にしゃべる。
アンドレイ「どうやって暮すんだ?月
給だけで?バカな事をしたもんだな。
こんな役に立つ男を捨てて。お前みた

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