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無断転載を禁ず -P27- 「ふたりの駅」パンフレット(1985年10月12日発行)より転載

いな女はゴマンといるぞ。よく考えろ
よ」
 プラトンは起き上ってはアンドレイ
に挑戦しようとするがアンドレイの腕
力にはかなわない。
アンドレイ「(向ってくるプラトンに)
ひょっとして俺のこと捜してんじゃな
いか?」
 再び突き飛ばされるプラトン。騒然
とする。
 食事中の客の視線が宴会コーナーに
集まる。
アンドレイ「(ヴェーラに)あとで泣
いて頼んでもダメだぞ。いいな?」
 調理場の方からトランクを取返して
きたアンドレイ、プラトンが起き上ろ
うとするところへ現れ――
「静かに。かわいい坊や、来な。おと
なしくしな。(ヴェーラに)もういいか
? 」
ヴェーラ「分ったわ」
アンドレイ「(プラトンに)お前は何者
だ?」
プラトン「(やっと起き上って)ピアニ
ストだ」
宴会コーナー・テーブルの側
 テーブルの側にうずくまっているプ
ラトン。
 守衛につづき、警官が笛を吹きなが
らやってくる。
アンドレイ「(警官に向って)やあ」
ニコラーシャ「どうした?」
アンドレイ「何でもないよ。異常なし」
ニコラーシャ「(うつ向いているプラト
ンに)どうしました?」
アンドレイ「踊ってて机の角にぶつか
ったんだよ」
ニコラーシャ「目の回りのあざは?」
アンドレイ「サラダを踏んで滑ってね」
 アンドレイ、ヴェーラやプラトンに
金を手渡し、ヴェーラに捨てゼリフを
吐くと立ち去る。
アンドレイ「(ヴェーラのポケットに金
を忍ばせ)皿の破損代だ。取っとけ。
(さらに別にプラトンに)これは、お
前にだ。(プラトンのポケットにも金を
突っこみ)治療費だよ。(守衛に、置いて
あるトランクを指し示し)片づけてく
れ」
 洋服の塵を払いながら起き上るプラ
トン、ポケットの紙幣を丸めて投げ捨
て、警官や集ってきたウェートレスに
「大丈夫。大丈夫。ありがとう」
宴会ヨーナー・仕切りの前
 プラトン、立ち尽してむせび泣くヴ
ェーラに近づき、愛じむようにかき抱
く 。
プラトン「(項だれたまま)ぶざまだね」
ヴェーラ「(むせびながら)どこまで切
符、買えばいいの?」
プラトン「グリボエードフ。そしてモ
スクワ」
 思わず、我に返ったヴェーラ、プラ
トンの手を振りほどくようにして――
「天気予報の君の所へね。嘘っぱちの
予報でもいいんだわ。分ってるわ。さ
わらないで」
レストラン・入口の姿見の前
 顔の傷を拭っているプラトン。守衛
が後にまわってプラトンの洋服の塵を
払っている。
 壁に取りつけた拡声器から行進曲が
聞こえてくる。
矯正労働収容所・回想
 収容所内の楽団でプラトンが管楽器
を演奏している光景
レストラン・姿見の前
 プラトンのために切符を買って戻っ
てきたヴェーラ、まえかけをはずすと
プラトンを促してアーケードの方へ出
て行く。
ヴェーラ「切符よ。汽車は40分後。話
したいことがあるの」
アーケード
 歩きながら話し続ける2人。ヴェー
ラはだんだん興奮してくる。
ヴェーラ「奥さんと話したわ。電話で。
ご免なさい。我慢できなくて。意外な
こと言ったわ。あなたが轢いたって」
プラトン「そう言うの当然だろう。ど
この誰か分らないし」
ヴェーラ「自分は車の運転できないっ
て」
プラトン「(ちょっと驚いた表情で)運
転できないって?家内が?」
ヴェーラ「言ったわ、はっきり」
プラトン「(弁解するように)そうだ。
調書にも、そう書いてある。変更はで
きない」
ヴェーラ「(涙声で)こんな事があって
いいの? 罪もないのに…」
 立ち話をしている2人を引きさくよ
うに電動運搬車が通り過ぎる。荷台に
隔てられてもどかしげな2人、運搬車
が通過するや駆け寄って抱き合う。
プラットホーム・階段
 プラットホームヘ列車が入ってくる。
 プラトンとヴェーラ、階段の下り口
に立ち止まり、別れを惜しむ。
ヴェーラ「あの汽車よ」
プラトン「(周囲を見回して街にも別れ
を告げるように)来たか…」
ヴェーラ「私のこと許してね」
プラトン「僕のほうこそ。楽しかった
よ。とっても。すばらしかった」
 ヴェーラ、満面に微笑をたたえ、握
手しながら――
「楽しかったわ。気をつけてね。お元
気で」
プラトン「君もね」
ヴェーラ「がんばるわ。(プラトンを促
すように)また乗り遅れるわよ」
プラトン「(再び握手し)ありがとう。
もう一度」
 皆段を駆け下りるプラトン。
ヴェーラ「(階段の上から)7号車よ。
2等で悪いけど」
プラトン「(振り返って)じき2等以下
の生活になるよ」
プラツトホーム
 列車に乗り込むプラトン。
 プラトン、発車した列車の降車口に
身を乗り出してヴェーラを眼で追って
いる。
陸橋
 ヴェーラ、上から列車を一瞥するが、
プラトンの面影を振り払うように、
走り去る列車には目もくれず、陸橋を
ひたすら足早に渡って行く。
雪原・一軒家の戸口
 プラトン、修繕が終ったアコーディ
オンを持って家を出る。
プラトン「じゃ、持って帰るよ」
男の声「食事して行け」
プラトン「家内が面会に来てるんだ」
 プラトン、通りがかりの女に道を訊
ねる。一面、闇の雪原が拡がっている。
明りが点る一軒家
 プラトン、戸を開けて中に入る。人
影はないが奥の部屋のテーブルには夕
食の料理が整っている。
 プラトン、手近な所にある果物をポ
ケットにしまいこみ、それから食卓に
つく。
 牛乳の器を手にしたヴェーラ、家に
入ってきて食卓に向っているプラトン
の後姿を見つけ、部屋のしきいに立ち
止まる。人の気配に振り向くプラトン、
ヴェーラをまのあたりにするや、驚い
て食物を喉につまらせる。走り寄って
プラトンの背中を叩くヴェーラ。
 2人は黙したまま、ヴェーラは外套
を脱いでかいがいしくプラトンに世話
をやき、プラトンは夢中で食べている。
プラトン「(肉料理を見てもったいぶっ
て)焦げてるぞ。じろじろ見るなよ」
ヴェーラ「(料理をすすめ)もっと食べ
て」
テーブル
 ひとわたり食べ終ったプラトンの傍
にヴェーラが身をすり寄せて腰かけ、
2人は話し始める。
プラトン「もう充分だ。来る必要なか
ったのに」
ヴェーラ「なぜ?」
プラトン「身分が違う。君は?」
ヴェーラ「ウェートレス」
プラトン「僕はとるにたりない掃除夫
だ」
ヴェーラ「掃除夫?本当?ピアニスト
かと思ったら掃除夫になっていたのね」
プラトン「うん、釣り合わないよ。ま
た食べたくなった」
ヴェーラ「(再び食べ始めたプラトン
に)おいしい?」
プラトン「とっても」
ヴェーラ「よかったわ」
 抱擁し合う2人。
寝室のベット
 番いの白鳥の絵の壁掛けのある部屋。
べットにヴェーラとプラトンが身を寄
せ合って寝ていると朝陽を受けて明る
くなったテーブルの上には目覚まし時
計がある。時計はすでに7時半をまわ
っている。
ヴェーラ「(べットから跳ね起きて)起
きて!7時20分前よ。寝すごしたんだ
わ。さあ、急いで!」

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