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無断転載を禁ず -P28- 「ふたりの駅」パンフレット(1985年10月12日発行)より転載
雪原の道・朝
 白銀に輝く凍てついた道。プラトン
はアコーディオンを手に持ち、ヴェー
ラはプラトンの後を追って走り続ける。
プラトン「点呼に遅れる」
ヴェーラ「一緒に行くわ」
 黒い2つの人影が走り続ける白い海
原にヴェーラの歌声がかぶる。
歌声「ここの暮しは平凡で/天国みた
いに単調だ/カードに賭けよう、ため
らわず/人生をやり直そう/あの頃は
若かった/躍る心は今はない/一か八
かに体当り/恐れず、もう一度出直そ
う」
 あえぎあえぎ走るプラトンとヴェー
ラ。ヴェーラは通りかかったトラック
をいったん止めたが、運転手は連れの
プラトンの姿を目にするや、手の裏返し
て乗せてくれない。仕方なく気を取り
直して歩く2人。
ヴェーラ「早く行って。私に構わずに
行って。その調子よ、偉いわ。がんば
って。もっと急いで」
プラトン「何時だ?」
ヴェーラ「あと7分。早く行って。私
は、もうダメ。(足を引きずって)歩け
ない」
 収容所の高い塀が曙光の淡い色に
僕が持つ。持って行くよ」
 プラトンが倒れるように転ぶ。
ヴェーラ「がんばって、起きて! 起
きてよ。がんばって」
矯正労働収容所
 囚人が整列して朝の点呼が始まって
いる。
将校「(名前を呼びあげて)リャビーニ
ン」
雪原の道
 へたりこむように坐りこんでいる二
人。ま近に見える監視塔に向ってヴェ
ーラが声をあげる。
ヴェーラ「ここよ! ここよ! 見張
りの人! リャビーニンはここよ!」
矯正労働収容所
 将校が隊長に報告している。
将校「第4班点呼終り。欠員が1名出
ました。リャビーニンです」
隊長「(不安そうに)戻って来なかった
か?」
将校「はい、逃亡です」
雪原の道
 点呼の声をかすかに聞きながら、ヴ
ェーラが咄嗟にプラトンにアコーディ
オンを演奏させることを思いつく。
ヴェーラ「(アコーディオンをプラトン
の肩にかけながら)弾いて!」 座りこんだまま必死になってアコー
ディオンを弾くプラトンの背を自分の
背で支えながら、ヴェーラは叫ぶ。
ヴェーラ「早く、力いっぱい弾いて、
もっと大きな音で」
矯正労働収容所
 プラトンが奏でるメロディーが朝の
しじまを流れる。監視塔から兵士が雪
原を見渡している。
隊長の顔に安堵が浮かぶ
隊長「逃亡じゃない、帰ってきた」
雪原の道
 朝日に染まる白い一条の道に背中合
せに坐っているプラトンとヴェーラ。
流れるメロディは一層高まって、カメ
ラは引く。
(終)
シナリオ採録 野原まち子
かすんでいる。
ヴェーラ「何てきれいなの!きれいだ
わ。もう塀のそばよ。もう少しで着く
のよ。さあ、がんばって」
 2人とも息が切れ、凍てつく道に足
を取られて転びながら――
プラトン「ダメだ」
ヴェーラ「もう少しじゃないの」
プラトン「間に合わない。(ヴェーラが
アコーディオンを運ぼうとするのを)
編集後記
「ふたりの駅」のリャザーノフ監督は1927年生れ。いま、現
代ソビエト映画の重鎮です。さりげないユーモアと諷刺のセ
ンスは、その暖かでヒューマンな目差と相まってわれわれを
涙と笑いの世界に引きこまずにおかないでしょう。
原稿のご執筆にご協力いただきました方々に感謝致します。
〔N〕

1985年10月12日発行 定価500円
発行所・発行人/(株)日本海・東京都千代田区一番町9の23/Tel(262)4131野口陽一
編集/野原まち子・松村都
構成・デザイン/松川博憲
印刷/三映印刷株式会社
-P28-   無断転載を禁ず
「ふたりの駅」パンフレット(1985年10月12日発行)より転載  <- 前へ  次へ ->
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