二日酔いのカピトンが管理人と話をしている時に誤って彼の新しい長靴をナイフで傷つける、というシーンを私は考えついたのだがうまくゆかなかった。二日酔いの男がそんなに素早くナイフを動かせるというのは不自然に感じられたのだ。シーンを変えてみた。これを見たら「グルィモフという監督はツバキだらだらのシーンが好きだ」と言われるかも知れない。確かにそうだ。私の考えでは生々しいシーンが撮れた。カピトンがフラフラしながら糸を噛み切ろうとするのだがこれができず彼の口から唾が流れ出る、という光景にしてみた。うまくいったと思う。
三日目は二日目より苦しいし、四日目は三日目よりつらい。撮影が終わるや否やメシを食べて横になりたくなる。打ち合わせは飽き果てた。ピントの甘さに問題があり得るのでラッシュがあがってくる迄二日間もイライラしなくてはならぬ。甘ければ撮り直しをしなくてはならないからだ。
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