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グルィモフ監督の日誌から
第10日目  
 撮影に完全に没頭してしまっているので、かつては撮影以外にどんな楽しみがあったかについて思い出すことができなくなりつつある。今の私にとって唯一の楽しみはラッシュを見ることだ。何か気ちがいじみた撮影魔になった気がする。いや私は生来気ちがいじみていたのかもしれない。もっとも、あれこれ考え出すという私がずっと楽しんできた遊びを忘れたわけではない。ひとつのことを考えつくとそれとは全く関連の無いと思われる様なアイディアが次から次に浮かんでくる。例えば昨日はあれこれ考えた末新しい雑誌をつくろうというアイディアが浮かんだ。雑誌の名は「見よ!」としよう。こんな名にしたのは私がここのところずっとカメラをのぞいているからではない。元来私は自分の周囲を注意深く見廻し観察してきた男なのだ。私が私なりの映画手法をつくり出そうとしているのかなどと質問されると私はとまどう。何故なら私は「私の見るまゝ」に映画を撮っているからだ。これ迄多くの監督達が「自分の見るまゝに」という表現を用いてきておりこれは決まり文句の様になってしまっているが私のは違う。私は映画の世界ばかりでなく現実の世界も私の見るまゝに見ているのだ。私は映画の為に何かを特につくり出すということはしない。例えばある場面をある色合いで撮るとき、その色合いを私は特に考え出すのではなく私にはその場面がその色合いに見えるから私に見えるまゝにその様に撮るのだ。
 次の私の作品では全く別の様になるかもしれない。しかし今この瞬間においては私は現実の世界をこの様に認識しているということなのだ。
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