19世紀末のロシア。木の葉がくれに館のバルコニーが映える美しい田園風景……。ある暑い夏の日の昼下り、その木立ごしに戯れ興ずる人々の声が聞こえてくる。ヴォィニーツェフ将軍の未亡人アンナの館には、将軍の先妻の息子セルゲイの業績を一目見ようと、退役大佐トリレツキー、その息子で医者のニコライ・トリレツキー、アンナに恋焦がれる老地主グラゴーリェフ、一代で功をなした労働者出身の地主ペトリン、常に貴族の優位を主張する地主シチェルブークとその娘たち、ニコライの妹サーシャを妻にした小学校教師プラトーノフらが、まるで長い冬眠から覚めたかのように久方ぶりに寄り集ってきている。 アンナは早速、高価な自動ピアノを披露して一同の度肝を抜いたが、プラトーノフの表情は冴えない。
実は、セルゲイの新妻ソフィヤこそ、プラトーノフの初恋の女性だった。思いがけない再会に、静かで平穏な日々を送っていたプラトーノフの心が揺れ動く。その胸の動揺を見られまいと、自ら道化役を演じて見せるプラトーノフ。
プラトーノフは、過去の糸をたぐるように、誠実な生活を夢みていた少女を、いまのソフィヤに偲ぼうとするが、その面影はない。それはソフィアとて同じこと、人生の華々しい成功を志していた大学生プラトーノフのありし姿は、一介の田舎教師プラトーノフからはうかがいしれない。
カード遊び、そして空しい馬鹿騒ぎ…。彼らのアンニュイな一日も暮れ、やがて夕食の席をはさんで交わされるシニカルな議論。会話が途だえた瞬間、プラトーノフは「最近、私が読んだ小説ですが……」と前置きして、ギターを爪弾びきながら、7年前の自分とソフィアとの関係をもの語り始める。プラトーノフの話に思いをかき乱され、部屋を出ていくソフィア。
やがて宵闇をついて上る花火が水面に映え、水辺で抱きあうプラトーノフとソフィヤ。だが二人にとって、もはや時の流れは呼びもどしようがない。二人の語らいは、ついに、かみ合うこともなく、スキャンダラスな騒ぎとなる……… |