「罪と罰」はこんな物語です。
…ペテルブルクの裏町のアパートに住む貧しい大学生ラスコーリニコフは、このところ、
一種の超人思想ともいえるひとつの理論に異常なほど取り憑かれている。
それは、人間はすべて凡人と非凡人とに大別でき、非凡人は、その目的が全人類的救済のためならば、地上のあらゆる法律、道徳を乗り越えられる、というものである。ラスコーリニコフは、この考えに従って、みんなから嫌われている金貸しの老婆を殺すことを思いつく。そして、7月はじめのむし暑い晩のこと、それを実行した。
が、あろうことか、ラスコーリニコフはこの時、老婆の妹まであやめてしまう。彼は内心己れの行為を正当化しながらも不安と悔恨に苛まれ始める。そして妹ドゥーニャの気にそまぬ結婚にも心を痛めて、いよいよ混迷を深くしていく。
彼はその頃、貧窮のどん底にある家庭を救うためにわが身を売り、それでもなお、けなげに生きている心やさしい少女ソーニャに出会う。犯罪についての予審判事ポルフィーリーとの話し合いも、ラスコーリニコフの苦悩を晴らしはしなかったが、そのさ迷える心は、悲しみと苦しみのみの不幸な生活にもめげずに生きるソーニャの大きく、純粋な愛によって初めて安らぎを覚える。ソーニャの前に膝まずいて、ラスコーリニコフは罪を告白する… |