サンクト・ペテルブルグを巡る映画紀行>歴史と文化の都…>大改革の時代

 その夜、シュトラウスは新しいワルツを深い感動に包まれて演奏しました。会場にはオリガもいました。指揮台に立ったシュトラウスは、彼女の輝くような眼差に気づくと会釈をしました。彼女も微笑みをもってこれに応えました。コンサートが終ると、2人は公園で会いました。パブロフスクの公園の水面に2人の影が映りました。
 オリガは、ときめく心と不安を抑えて、シュトラウスの後を追いました。伯爵家の娘ともあろうものが人気があるとはいえ、身分も低く、まだかけだしの音楽家の部屋を訪れるなどは、無鉄砲きわまりないことでした。
 オリガは、シュトラウスについてロマンチックな夢を描いていましたが、この夜、オリガはシュトラウスの口から、音楽家の道を歩むことを拒まれた不運な少年時代や、父親に見捨てられた家庭と、母親や残された兄弟のために早くから生計を立てていかねばならぬ境遇を知らされたのでした。それは強く、彼女の心を揺り動かしました。
 ロマンチックな幻想は消えましたが、オリガはシュトラウスの内に秘められた高い人間性に深い感銘を受けました。
 オリガはシュトラウスのためにピアノに向って、恋人との別離を詠んだ悲劇の詩人プーシキンの詩を即興で口ずさみました。その美しいロマンスに心うたれたシュトラウスは彼女のためにポルカを作曲する約束をしました。彼の胸は彼女への愛と作曲への情熱で湧きたっていました。
 そしてポルカ「オリガ」はコンサートで演奏されました。かねてシュトラウスと友情あつかった大公もシュトラウスの演奏に参加しましたが、肝心のポルカは大公夫人で同じ名のオリガに捧げられてしまいました。もちろん、演奏の後、シュトラウスがオリガにこの曲が恋人オリガのために作曲されたことを告げたのは言うまでありません。
 思慮深いレイプロックはオリガと結婚したいというシュトラウスの性急な決意をあきらめさせようとしました。シュトラウスは結婚の意志を固めると、オリガの母スミルニツカヤ夫人に許しを求める一方で、はるかウィーンにいる母のもとに喜びの手紙を書き送りました。
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